最上階の恋人 13
司君はつくしに気が付きました.
つくしも気が付いてるんですが・・・
ただ行こうとしても行けないつくしと、つくしを見つけて追いかける司。
どこでどうなるのか!
まぁ見つけられるのは間違いないですけどね。
問題はそのあとよ~
背中に感じた視線。
熱風にも感じる熱さ。
一瞬だけ振りかえったその場所にいたはずのクルックルの特徴的な頭の主の姿はかき消えていた。
え?道明寺?
どこ?
間抜けな表情をしっかりと見られてた西門さんと視線がぶつかる。
右のこめかみに触れた二本の敬礼じみた指先の動き。
動いた唇の動きは頑張れと読み取れる。
あいつ、まさかそこから下に飛び降りてはいないよね?
視線をまっすぐに移したその先で砂煙を上げて怒涛のように押し寄せてくるバッファローの大群が見えた気がしたのは私の妄想。
一般的な会社の雰囲気が広がったままのエントランス。
でも絶対来るよ。
あいつがやってくる。
「牧野ッ!」
大声で叫びながらやってくる道明寺の姿が見えるのは想像じゃなく現実だと思う。
ここで一番目立つはずの道明寺が必死の形相で名前を叫びながら駆けつけてきたらそれはそれで騒動になる。
ここは冷静に対応しようよ。
心なしか私の足が速く鳴った気がした。
道明寺に見つけられるなら少しでも人目が少ないほうがいいに決まってるもの。
今私がすべきことは私に対する誤解を解いて道明寺HD本社見学ツアーから抜けだすこと。
介抱してもらえばそれだけでインターシップ参加の十数名の視線からもう少しは減らすことができると思う。
ここははっきり自分のことを言わなければッ!!
私はインターシップ参加者じゃありません!って!。
「牧野さん」
固く決心して頭の中で繰り返していた私に勅使河原さんどうしたのって表情で名前を呼ぶ。
開いたドアの先には私を残して席についてるインターシップ参加者。
勅使河原さんは自分が座った席の空いた隣の席を示しながら私を呼ぶ。
「すいません」
この部屋には入らないつもりで頭を下げかけた私の声と重なった女性の声。
「遅くなりました」
声が止まった私の後ろで続けて聞こえた声は若い女性の声。
その声に振り返って私を見つめるぎょっとなって大きく開いて見つめる瞳。
「え?、キャッ」
なななな・・・なに?
私を見て悲鳴を上げる人物を見たことはないんだけど。
私も思わずぎょっとなった。
「牧野先輩ですよね?」
私を先輩と呼ぶその子は私がほんの数か月前まで来ていた同じ制服を着てる。
英徳の生徒だってことは直ぐに分かった。
でも・・・
私を先輩と呼ぶってことは、後輩何だろうけど顔に覚えはない。
「少し待ってください」
そういった彼女は私の前を通って部屋の中に進んでいった。
遅刻してとか話しだした彼女に私を不愉快そうに見ていたインターシップの指導者の顔色が変わる。
どうやら私が説明する手間が省けたみたい。
「先輩もインターシップに参加ですか?
そなわけないですよね?
だって牧野先輩って、どうっ!」
道明寺の名前が出る前に思わず後輩の口を塞いだ。
私が英徳で有名なのは道明寺と付き合ってることは全校生徒に知れ渡ってる理由だもの。
ここで大声で言われちゃ困る。
私に口を塞がれて羽交い絞め状態の後輩。
私より少しばかり背が低い彼女だから何とか対応できてる格好。
「それじゃ、あなたは?」
「単なる見学者です」
ここは道明寺に会いに来たことは意地でも隠したい。
「あなたが私で知ってることは何もしゃべらないで」
後輩の耳元で小さくつぶやく声は私には珍しく殺気がこもる。
目撃のされ方によっては人質の首にナイフを突きつけて隙を見て逃げ出しそうな犯人の心境かも。
コクコクとうなずく彼女の口を押えた手のひらにこもる湿気。
緩んだ腕の中からスポッと彼女は抜け落ちた。
「こんなところで会えるなんてすごいです。
うれしいっ」
私と向きあった後輩は喜びを隠しきれない様子で私の首に両手を伸ばして抱き付いてきた。
その勢いによろけかけた身体を必死で立て直すのが精いっぱいで私は彼女の背中にしっかりと腕を回して抱き付くしかなくなっていた。