最上階の恋人 14

おはようございます。

暑い夏日を記録してるニュースもちらほら。

そして今日は私の居住区は雨の降りだしそうなお天気となってます。

こちらは血の雨が降らなきゃいいけど・・・(;^ω^)

「それでは、私は失礼します」

なぜかそうはいかなかった。

せっかくだからとか・・・

こんな機会は滅多にないからとか・・・

間違えたお詫びに丁寧に社内を案内するって!

そんなお詫びは遠慮したい気持ちは120%。

何の因果か、私はまだこのインターシップの集団の中の一員となっている。

スキを見て逃げる用意はできている。

「牧野先輩は後輩たちのあこがれの的でしたから。

あのあこがれのF4の皆様たちに守られてるお姫様的存在でしたから」

勅使河原さんは私の後輩だという槙枝さんの話を興味深そうに聞きいってる。

二人の視線は私から外れることのないままに時々キャーとかわーとかの感嘆府が混じる。

マキノのにマキエダ、苗字は似てるけど・・・

それで勘違いされたわけじゃないとは思う。

私の数歩先では道明寺HDの会社の概要の説明が延々と続き、私の後ろではガールズトークがさえわたる。

確かに道明寺と私の関係は直に言ってはいないようだけどF4と私との特別な関係を匂わせるには十分な内容。

「牧野さんって、御曹司たちの親戚か何か?お嬢様なの?」

会話の途中で聞こえた勅使河原さんの声。

そう来たか!

何か関係があるって思われるよね。

この会話の流れから私と道明寺との関係まで行きつくまであと一息って感じで気が気じゃない。

「全く関係ないです。うちは普通のサラリーマンですから」

一気に振り返って一気に気を吐く。

これ以上何もしゃべるなの感情を込めて。

「親戚じゃないですもんね」

にっこりと悪気なくほほ笑んだその顔はきらきらと輝いて私を見つめる。

子犬が羨望のまなざしでおやつを見つめてるような表情。

親戚より密な関係と暗示してることに幸運にも今ここで気が付いてるのは私だけみたいだ。

私がインターシップには関係ないとわかって暮れてるはずなのその時よりも逃げられない感じになってるのはなぜなのだろう。

エスカレーター上ったところでちらりと捉えた道明寺の姿。

地上に降りた道明寺がきょろきょろと首を左右に動かして身体を回転させてるのを見た。

いかにも誰かを探してるって感じ。

誰を探してるかは一目瞭然。

私の視線を感じたように顔を上に上げるその動きに私は思わず体を隠すようにしゃがみ込んでしまった。

「先輩、道明寺様があそこにいますよ。えっ?先輩?」

「牧野さん?どこ?」

勅使河原さんと槙枝さんから少し離れた壁の後ろに膝を折ったまま移動する素早はゴキブリ並み。

もしも、道明寺に見つかったら、「そこ動くな」の命令系が大声で飛んでくること間違いなしの状況。

このまま何とかゆっくりインターシップの集団からフェードアウトして最上階に向かうから、うろうろしないでと心の中で祈る。

道明寺への視線が集まってる中で、私を探す勅使河原さんと槙枝さんの二人の動きが目立つように思えた。

今、周りとちょっとでも違う違和感を道明寺に与えて感じさせることは避けたいのにっ。

追われる犯人の心境が今の私には近い。

今、道明寺に見つかったら不機嫌に怒鳴られるに決まってるもの。

久々に会えるのに喧嘩なんてしたくない。

私は座り込んだ身体を壁に押し当てたまま這わせるように立ちあがった。

一秒も無駄にせずここから逃げることが必要だと私の危機感は最上級まで達してる。

「もうっ、こんなとこに隠れちゃだめですよ」

「べつに隠れてるわけじゃ・・・」

言葉をすべて言い終わる前にごくりと自分の喉が大きく動く。

槙枝さんの背後から大きく伸びた黒い影。

威圧感とともに不機嫌なオーラーがあたりを包みこんだ。

周囲に広がる暗雲。

一瞬にして作り上げられたクレーターの大きなくぼみ。

私と道明寺を残した孤高のリングが盛り上がって出来上がる感覚。

不安げに見つめる観客とは程遠い歓声が喚声が上がるのが聞こえた。

360度の観覧席が出来上がっている。

「なにしてんだ」

低く、威圧的に床を這って広がる道明寺の声に歓声は押しだされ一瞬にして静まり返った。