最上階の恋人 18
おはようございます。
いつの間にか梅雨に突入してしまいました。
ちょっとしたショートストーリーもUpしたいなと思いつつ時間が過ぎています。
いや~ほんと去年から年々ペースが落ちてる。
このままフェードアウトする日も近いかも・・・(;^ω^)。
え?
おっ!?
予測しなかった状態に戸惑いよりも驚き。
エレベーターに乗りこんでいた身体半分が外に引きだされるように腕を引っ張られた。
今エレベーターのドアが閉まったら私は確実にドアに身体を挟まれてしまうだろう。
「それじゃ、無理やり牧野さん連れていく必要はないですよね。
約束の時間にもまだなってないみたいですし」
微笑みを浮かべる勅使河原さん。
私の左手首をつかむその腕に視線を落としたあと私は恐る恐る顔を上げる。
あれほど会いたかった道明寺の顔を見るためにグッと身体に力を入れなきゃならない。
道明寺の顔を見なくても怒り具合が私の右手首を握る道明寺の手のひらから伝わってくる。
怒鳴るとかならまだましなほう。
どつくとかダメだからねッ。
それこそ道明寺・・・イヤ道明寺HD全体にかかわる重大事件になっちゃうよ。
昔は西田さんが手を回して事件にならないようにしていたみたいだけどこの状態じゃ無理だからッ。
事件は直ぐに世界に拡散される。
パッと顔を上げて見れないままに声を出さない道明寺の唇が引き攣るように微妙に震えてるのがわずかに見える。
今はまだ怒りを抑えてる段階かな。
えらい道明寺!
歌舞伎の屋号を叫ぶ様な心境。
ちょっとした安心感から一気に顔を上げる。
怒りに満ちた瞳は勅使河原さんじゃなく私に注がれてる。
「俺と一緒に来ないつもりはねぇよな」
疑問符じゃなく脅しの声が道明寺のギラつく瞳の奥から威圧的に私を襲う。
道明寺の心の声が間違いなくそう聞き取れた。
それでも勅使河原さんの手を振り切るには無理そう。
このまま勅使河原さんに勘違いされたままでは道明寺の印象は最悪のままだ。
道明寺はいたくもかゆくもないだろうけど、私はいやだ。
私の好きな人を悪く思ってほしくない。
道明寺の本来持つやさしさはなかなかわかりづらいものだから。
癖のある扱いにくさ。
その中で少しづつ垣間見せる道明寺なりのやさしさがどうしようもなく愛しくさせてくれる。
人を人と思わない図太さはしょうがないと思ってるけど私に向ける道明寺の笑顔は一瞬にして私を幸せな気分にさせる。
インターシップに参加してるのだから将来は道明寺HDで働くかもしない人。
道明寺を怒らせちゃったら勅使河原さん採用されないかも・・・。
道明寺HDどころか日本に働き口なくなっちゃう可能性もあり。
ここはなんとか取り繕って双方とも幸せな幕引きで終わりたい。
「道明寺、ちょっと待ってて、誤解を解くから」
「必要あるか?」
ブスッとした声色は私に対する不満。
「あのね、無駄に敵を作る必要はないでしょう」
「敵にもなんねぇよ」
そういった道明寺は私の腕をゆっくりと話してくれた。
「言いだしたら聞かねぇし、
ここでお前に拗ねられたらこれからの時間が台無しだしな。
数秒で済ませろ」
わずかに腰を曲げた道明寺の視線が私の視線まで落ちる。
右頬に触れた道明寺の手のひら。
指先がゆっくりと私の頬を撫でて離れる。
薬指がかすかに唇をなぞったままクスッとした笑みを道明寺の唇の先に宿す。
してもいないはずのキスの感触。
一気に体中の熱が顔に集まった気がした。
もう数秒経ってるし・・・
スラックスの左右のポケットに手のひらを入れこんだ道明寺はそのまま開いたエレベーターのドアを抑えるように背を預けて、私と距離を置くように立つ。
少しうつむいて閉じたj瞳。
睫毛の長さが映える横顔。
会社の中のエレベーターの中でも絵になる道明寺。
映画のワンシーンを撮影するようににわかカメラマンが増えていくのがわかる。
聞こえるため息の中から離れるように私は勅使河原さんを一目を避けるように隅っこに引っ張った。
「あの、本当に大丈夫ですから」
「牧野さん、本当に彼女なの?」
「まぁ・・・一応・・・」
きらりと輝いた瞳。
そしてグッと両手を包み込むように手を握られた。
「すごい!どうやって!」
え・・・と・・・?
「どんな美女でも選べるような人だよ。
牧野さんタイプが珍しかったとか?」
道明寺と私とじゃ釣り合わないって遠回しする気もないようにずけずけと発言する勅使河原さん。
ストーカーにDVの勘違いはどうなった?
「1年くらい前には私にも結婚の話があったんだけど・・・
いつの間にかなくなってたのよね・・・」
冗談みたいに聞こえた勅使河原さんの声。
道明寺の婚約者って・・・・
滋だけじゃなくて・・・
栗巻あや乃さんもだったよね。
TOJで優勝して私は負けちゃったのは高校2年生の時の出来事。
道明寺ッ!
いったいどんだけ婚約してんのよッ!