戯れの恋は愛に揺れる 36
アクションシーン、殴り合いは以前にも書いたことがあるんですが・・・
この場合は時代ものですから戦う武器は銃じゃなくて剣。
殺陣なのよね・・・・(;^ω^)
刀と刀のぶつかり合いの表現法を誰か教えてーーーーと叫びながら悪戦苦闘で試みてみました。
「抜け」
鞘から抜き出した白刃が冷たくシャラりと冷たく音を立てる。
研ぎ澄まされた氷刀に映し出され亜門の表情はそれ以上に冷たく映し出される。
下段の構えのままに今にも振りあげて打ち下ろされそうな殺気を秘めた司に対してその殺気に怯む様子を見せない亜門。
少しの物音でも崩れそうな間合いにつくしの心もまた緊張に張り詰める。
息をのむことさえできない。
「ここで、俺を切ったら立場的に困るのは皇子ですよ」
「べつに、お前が自分の別邸を使ってくれたおかげで助かった」
身分は東宮には程遠いとはいえ、外祖父とはいえども、亜門も司と同じ血筋の流れを持つ親王である。
突然屋敷に踏み込みにはそれなりの理由を申しだてねば時期東宮の司とはいえ踏み込めない相手には違いない。
それをわかっていて、強気な態度を亜門も見せる。
「俺を襲った相手の黒幕がお前ならだれも納得しそうだからな」
「間違って困りますよ、私は皇子を襲ったわけではない」
「俺の許嫁をさらっうってことは俺に刃向ってることと一緒だ」
それ以上に悪い。
自分が襲われるよりつらく恐ろしく激しい感情が支配して生きた心地がしなかった司である。
つくしの姿を見るまでの苦しさに身体を切り刻まれるほどの痛みを感じて探し回った。
今目の前にいるつくしの震える姿に喜びより危ない目に合わせてそれを不作ことのできなかった自分のふがいなさも許せない。
「皇子、あなたがここで命を落として私が入れ替わったとしても誰も気が付かないかもしれませんよ。
現に許嫁の姫も最初は気が付かなかったみたいですから」
「今は気づいてます」
震えていたはずの声は気丈な強さで高く響く。
「俺と入れ替わるつもりか?」
今の状況では亜門のほうが劣勢で追い込まれている状況で司には夢物語にしか聞こえない。
「そのためにここまでご足労願ったとしたら」
いま飛び込んでいる屋敷は敵陣の中。
馬を飛ばして乗り込んできた司に連れ立ったものはまだ一人も追いついては来ていない。
どたどたと響く無数の足音が3人だけの部屋に近づいてくる。
暗がりの庭先に動く人影は確実に少しずつ人数を増す。
つくしをかばいながらどれだけ対応できるかは司にも予測できない。
「入れ替われるものか、誰も信じないぞ」
つくしを背中に隠すように司は身体を入れ込み暗闇に視線を走らせた。
「許嫁が証言してくれたら完璧ですよ」
「そんな証言しません」
背中から聞こえた声はしっかりとした拒否の意思を亜門に投げる。
「ここで私が生き残れば・・・
自分の命が欲しくない人間はいませんから、権力者のいうことは聞き入れるものです」
あざとい笑みを浮かべた亜門がじっとつくしに視線を向ける。
「死ぬときは皇子と一緒に死にます」
司を信頼するように直衣の裾をグッとつくしの細い指先がつかむ。
「俺が、お前を死なせるものか」
つくしの言葉に熱い思いがそのまま熱く司の心をたぎらせた。
バサッと切り裂き斜めに落ちた障子に飛び散る血しぶき。
前のめりに倒れこんだ男のうめき声が短く響く。
「キャッ」
小さく響くつくしの悲鳴。
そのまま司の背中に顔を隠すようにつくしはしがみついた。
「俺から離れるな」
わずかない背中にそらすようにまわした司の瞳をつくしの瞳がとらえてコクリとうなずいて、見せた。
ズシリとしした手ごたえを感じながら司は剣を振り下ろす。
その剣先はなかなか亜門をとらえることができない。
付かず離れない距離で間を取る亜門を司も目で追う。
「グホッ」
二人の横に切られて倒れこむ男。
予測してなかった司に緊張が走る。
「すまん、遅くなった」
どさっと投げ込まれた男がしりもちをつくように投げ出したのはあきらの君。
「司に早や掛けされたら、追いつける馬はいないんだから、少しは手綱を緩めろ」
不服そうに言いながら刃向う男を袈裟懸けに総二郎の君が打ち取る。
「こっちはほとんど片付いたから」
庭先で一人の男を足で転がしながら類の君がつぶやく。
それはまるで子供の遊びの石けりのような軽さの態度。
「これじゃ、大した訓練にもならん」
ぐいと間合いを詰めた司の剣先が亜門の剣を打ち落としその喉元を狙う。
柄を握る指さきに力を込めて司がグッと握り返した。
「ダメ」
その瞬間つくしが身体ごと司の腕にしがみつく。
「離せ。あぶねぇだろう」
そのすきを突くように司の切っ先をそらして司の身体に体当たりするように亜門が飛びこむ。
その腕に握られた脇差の短刀が怪しい光を放ちながら司に向って打ち下ろすのが見えた。
「司ッ」
総二郎、あきら、類が助けに入る間などすでになく、亜門の捨て身の一撃につくしの上に覆いかぶさるように司がゆっくりと倒れこむのがに見えた。