野獣は素肌で戯れる 5

ささっとこの話を終わらせたいのに・・・

我が家のPC君(なぜか男の子)子供に独占されてます。

最近は夜にちょこちょこと時間を見つけて書いて仕事がお休みの時の朝にUPのパターンなんですが、このスケジュールを狂わせる存在が邪魔でしょうがない。

さぁ!

今日は邪魔者は学校に行ったので今のうちに仕上げてUP♪

「道明寺君?」

怪訝な表情で、俺に声をかけたのはジュエリーのことにはまったく関係ない株の話や経済の話題で相槌を打っていた相手の某大手銀行の頭取。

「なんでもありません」

視線の先で常に追ってるのはちんちくりんなやつ。

初めてあいつ会った時はそんな印象。

今更ながらそんなあいつにいまだに夢中だと再認識してしまう。

俺がこっちで仕事つながりの面白くもねぇ話題を相手にしてるのに、あいつは知らない初老のおっさん相手に笑顔を浮かべて談笑中。

楽しそうに笑う横顔に、胸の奥にくすぶりだすもやっとした感情。

俺はちっとも楽しくねぇし面白くねぇ。

「失礼」

突然、話を中断された相手は再度怪訝な表情を浮かべて俺の背中を見つめる。

不愉快に思われても俺にとっちゃ自分の感情の方が大事だ。

「楽しそうだな」

不愉快さ丸出しの俺にワンランク上の花の開くような微笑みを浮かべて振り向かえられた。

「もういいの?」

俺の感情を読み摂ろうとするようにつくしが大きな瞳で俺の顔をのぞきこんでくる。

凝視されても怒れねぇ、ただ一人のやつ。

あいつの瞳の中には俺だけが映しこまれるその瞬間に何とも言えない満足な思いが広がって俺を喜ばせる。

結婚して何年もたつのにこれかよ。

駿も生まれて親にもなって、それなのに・・・

つくしを前にすると、いまだに恋に不慣れなガキの感情がよみがえるのか・・・。

ドキっと、ときめく自分にムカつく。

「なに、笑ってんだよ」

「俺以外のやつに機嫌よくわらいかける必要あるのか?」

「必要以上に愛想振りまくんじゃねぇよ」

俺の口から出てくるのはあいつを責める言葉。

ドキっとさせんじゃねぇよ。

自分のときめきを隠すように無慈悲ともいえる声色だけが低く響く。

「俺がいないところで楽しそうに笑ってんじゃねよ」

自分でも大人げないと思う気まずい感情がわずかに顔を出した瞬間、俺の言葉の棘も数本は抜け落ちた。

まっすぐに俺を見つめるくるっとした大きな瞳に見られてるのが気恥ずかしくなってくる。

「とにかく、わかったな」

調子くずれの 忙しすぎる自分の声。

「わからないなぁ」

艶っぽい瞳と、軽く口角を上げて開いた口元がいたずらっぽく笑う。

俺の感情を見透かされてるような気分にさせられてしまう。

「司といるときのほうが私は断然いい笑顔見せてるって思ってるんだけど」

右腕にまとわりつくようにつくしがしがみついてきた。

胸元の柔らかい感触が右腕に触れる。

ぎゅっと押し付けられた感触。

圧で押されて半分いなってるふくらみの感触は、手にすっぽりと包まれるこいつの白い乳房を鮮明に脳裏に思い起こさせる。

こんな目立つ場所で誘うんじゃねぇよ。

身体に感じる熱。

首を絞めてるタイの感触も息苦しさを感じる。

熱いと緩めたタイ。

それでも息苦しさは減少しそうもない。

俺は・・・

なんで・・・

毎日顔を合わせて・・・

幾度となく身体を重ねてる相手に・・・

何度もドキッとさせられんだよ・・・

「理由がわかんねぇ」

「んッ?なんか言った?」

相変わらず俺の腕にしがみつきながらあどけない表情で俺をつくしが見上げる。

「お前、わざとだろ?」

「なにが?」

無意識で身体を寄り添えて来てる裏表のないやつ。

姑息な手を使って俺を煽るやつじゃねぇからなおさら始末が悪い。

まっすぐに俺に向ってくるやつだから俺もストレートに攻めるしかねぇんだよな。

いまさらの感がすげーけど。

ため息とともに天井を仰ぎ見て心を落ち着かせる。

パチンッ。

人差し指と親指で音を鳴らす。

小豆色のスエードで覆われた箱が、今、俺達の前に運ばれきた。

ジュエリー展示場で運ばれてきた箱の中身は誰でも想像つくよな?

ピンクダイヤがちりばめられた白い胸元をあでやかに彩るはずのネックレス。

盗られそうで怖いとか、肩がこるとか言わせねぇからな。

「つけてやるよ」

箱の中から現れた豪華なネックレスに驚いて声を発することも忘れてるつくしの背中に回り素早くネックレスをつける。

ポケットに中にはもう一つの箱。

こいつとあきらの嫁が物欲しそうにガラスケースの中をのぞいていたブレスレットちゃんと買っておいた。

それはまたこの後で渡すつもりだ。

胸元を覆うちりばめられたピンクダイヤ。

そのダイヤに触れる指先が震えてるのがわかる。

緊張してこわばるつくしの表情。

「こんなのしてたら落ち着かないよ」

「はずすなら、俺がベッドの中で外してやる」

俺が耳打ちしたつくしの耳たぶから湯気が出そうなくらい真っ赤に変わった。

俺だけドキっとさせられるのは癪に障る。

ここからどうつくしを攻めるべきか・・・

俺はすでに頭の中で構想を練り始めていた。

つーか。

つくし相手じゃやいつも予定通りにはいかないんだよな。

俺は狂わされっぱなしで夢中にさせられっから。

早く帰りてぇッ!