HAPPY LIFE 19

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「ぎゃーぁ!ダメッ!」

突然上がるつくしの叫び声。

静かな食卓風景は遠い昔。

つーか、動物園並みだよな。

駿が皿の中に手のひらをズブッと差し込んだ。

小さな指の間からはみ出るペースト状のオレンジの物体。

今度はべたべたとそれを叩きだしている。

今さら駿の側に行っても間にあわねぇよ。

「すいません、お母様」

深々と頭をさげっぱなしのつくし。

「いいのよ」と目を細めるお袋。

久しぶりに4人で並ぶテーブル。

「駿ちゃんの世話は私が」なんてお袋がかって出る。

自分の席の隣に駿のベビーチェアを並べて置いて座らせている。

「やっぱり男の子はやんちゃね」なんて笑う優しい温和な顔。

最近駿の前では目じりが下がりっぱなしだ。

俺のやんちゃには随分泣かされたとぼやいてたのはお袋だよな。

同一人物か!

俺の時はドンだけ厳しかったんだッ。

箸の持ち方、上げ方、ナイフ、フォークの使い方と物心ついたときから厳しかったよな。

楽しい食卓、笑い合う声なんてつくしと一緒になるまで知らなかった。

それが・・・

「手で食べたほうが早いわよね。駿ちゃんには」と笑いかけるお袋。

褒められてると勘違いしたのか?面白いのか?キャッキャと御機嫌な声を上げる。

紅葉の小さな手はオレンジ一色だ。

そのオレンジの手のひらをガバッと口いっぱいに頬張った。

「ギャーッ」

落ち着かなく上がる声。

お前の方がうるせぇーぞ。

駿よりつくしの方がはしたないとお袋に思われそうだと心配する俺。

「お袋に任せとけ」

上着の裾を握ってつくしを椅子に座らせた。

「でも・・・」

「楽しんでるからいいんだ」

あんなうれしそうなお袋は久しぶりだぞ。

「チビはあっちに任せてゆっくり食え」

「食えっていっても・・・」

つくしは半べそ状態だ。

「あの二人見てるとおもしろいぞ」

駿の手を拭き上げて、スプーンでお袋が小さな口に食べ物を運ぶ。

「あ~ん」と駿の前にスプーン運んで口を開くお袋。

それを真似するように駿も口を開く。

パクッとスプーンに食いつくチビ。

それを上手と褒める緩んだ顔。

お袋もそんな顔ができたんだ。

西田にも見せてやりてぇーーーッ。

西田が笑うより貴重かも知れない。

ククっと喉の奥から笑いがこぼれる。

「高校の時は思いもしなかった光景だよね」

ようやくつくしの頬に笑みが浮かぶ。

大した反抗もできなくてお袋を恨んだこともある。

お袋は覚えているのだろうか。

俺とつくしの仲を割こうとした記憶。

覚えちゃいないような孫のネコかわいがり。

半分は牧野の遺伝子入ってんだけど。

今さら関係ねぇか。

俺よりつくしの方に絶大な信頼を置いてるもんなお袋。

0歳児に溺愛!盲愛!

駿をダメにすんなよ。

お袋と二人の時は端に離れて向かい合って座ったテーブル。

皿と金属が触れ合う無機質な音だけが響いてた。

会話もなく味気ない雰囲気しかなかったダイニング。

今は触れ合う距離で柔らかな光に包まれる。

温もりを分け合う様な雰囲気は身体も心も暖かい。

俺達・・・

家族になったよな。

そんな気がした。

RICO様からリクエストいただいてたつかつく&楓さんの食事風景。

書かせてもらいました。

リクエストありがとうございました。

子供の食事の世話に結構悪戦苦闘した記憶も遠い昔。

離乳食は大変だったなぁ・・・。

そんな昔を懐かしみつつ書いてみました。

「だったよねぇ~」と共感いただけたら幸いです。

拍手コメント返礼

b-moka

鉄の女いませんねぇ♪

ところで楓さんは第一線を退いているのでしょうか?

ふと疑問を感じてしまった。

日本で老後生活!駿君の相手・・・

なんだか想像が出来ないです(^_^;)。

けいさ☆様

ありがとうございます♪

食物アレルギーがあると大変でしょうね。

うちのこの問題は好き嫌いだけ(^_^;)

まずいと食べてくれないし・・・

どこでどう間違ったのか

復活されるのを気長にまっております。

ゆっくりと養生してくださいね。

RICO様

案とか書きあげることができました♪

4人の食卓風景。椿おねぇ様も居ればもっとにぎやかになったことでしょう。

また何かリクエストいありましたらお待ちしております。