Happy life 1

 *

完全に焦っていた。

「道明寺が2番目になるかも・・・」

・・・てっ・・・なんだ?

それも笑顔を浮かべて言えるなんて・・・

なんの悪戯だ。

つくしを怒らせた覚えなど全くないし・・・

この島は1年前俺達が愛を確かめ合った思い出の場所だ。

俺が2番目って・・・

一番目は誰だと言うつもりだ!

思い切り動揺してしまってた。

「大きくなって俺様にはなりませんように!」

「でも・・・クルックルパーマでもいいからねッ」

海に叫んで、私の夢も叶ったってお腹を愛しそうに触れる仕草。

ようやく子供が出来たって気がついた。

もう少し分かりやすい告白ってできなかったものなのだろうか・・・

そんなことは別にして、うれしさが全身を突き動かす。

「ヨッシャー!」と海に向かってガァツポーズを作る俺を照れくさそうに見つめるつくし

感激!

うれしさ!

幸せ!

今までで一番最高の瞬間に酔いしれる。

つくしのお腹に手をおいて耳をあててみた。

「まだなんも分かんないよ」と、つくしがクスッと小さく笑う。

あふれ出す幸福感。

どうしようもできないくらいに舞い上がった。

はしゃいで両手でつくしを抱き上げた。

俺の緩んだ顔を見てつくしがうれしそうにほほ笑む。

砂浜に座りこんで・・・

抱きしめて・・・

愛しむように口づけを交わす。

忘れらない時間がまた一つ積み重なった。

俺達の報告をみんなが喜んでくれたのは言うまでもない。

生まれるのは来年の春。

待ち遠しい気持ちは隠しようがない。

信号で止まった車の窓から子供の服が飾られたウィンドウが目に止まる。

車を降りて一人で店の中に入った。

どれを買えばいいのかなんて分かるはずはない。

全部買ってしまうか・・・

つくしに文句言われるのが関の山と考え直す。

「どういったものをお探しですか?」

はちきれんばかりの笑顔を店員に振りまかれていた。

誰が俺の相手をするのか店内の従業員が集まってじゃんけんをしたのを視線の先で確認していた俺。

以前だったら怒鳴って追い帰しているところだろう。

「もうすぐ子供が生まれるんですよ」

対抗するように俺もはちきれんばかりの最高のほほ笑みを向けてみる。

うっとりと夢見る様な表情に店員が陥ってしまっていた。

苦笑しながら店内を歩き回る。

次から次に聞いてもいないのに商品の使い方から使用できる年齢まで事細かに説明された。

赤ん坊の喜びそうなおもちゃを選んで会計を済ませる。

「こんな素敵なパパを持つお子さんは幸せですね」

さっきより化粧が濃くなっているように見えるのは気のせいだろうか・・・

店員がにっこりほほ笑んだ。

「いえ、幸せなのは俺の方ですよ」

くすぐったい想いがあふれ出て、頬が緩む。

ポッとなって俺を見つめてる店員に「ありがとう」と言い残して店を後にした。

ありがとうなんて言葉が口から出るなんて何年振りだ?

覚えがない・・・。

穏やかな気分が持続してるのも、きっとまだ会ってもいない赤ん坊の影響。

これで生まれたらどうなるのだろうか。

すべてが愛しい。

つくしも・・・

その中ではぐくまれている小さな命も・・・

生まれるのを待ち焦がれる俺自身の思いも・・・

限りなくあふれ出す。

この後も・・・

目についたものを頻繁に買って帰る俺はつくしを呆れさせてしまっていた。

顔も知らない店員でも子供が生まれると告げられる幸せ。

「おめでとうございます」の会話。

今では、知り合いは誰も言ってくれねぇし・・・

それがうれしくてしょうがないんだから仕方ねぇーーーーーーッ。

 

花男Fの最後からの続きです。

長編の流れの中で書いて行こうかと思ったのですが、短編で少しずつUPした方がいろいろ書けるかなと考えて

『Happy life』 の題名を付けていくつか書いてみようと思っています。

こんな場面が見て見たいなどリクエストありましたらお待ちしています♪