思い出は夢の中で 23

西田さんからのメッセージはとうとう年を越してしまいました。

そろそろ現代に帰る準備をはじめなきゃなぁ。

*

「なんだこりゃ?」

腰を曲げて指先でつまんで拾い上げた丸まったままの白い紙。

「それ、私の!」

牧野の怒った顔をからかう様に天井に向けて延ばす腕。

ぴょんぴょん飛んでも取れねぇよ。

そのまま両手の指先で丸まった紙を広げて眺める。

定規で計ったように几帳面な文字が細かく並ぶ。

見覚えのある西田の筆跡。

あいつよくこんなちいせー文字が書けたものだ。

時々書類を見るのに腕を伸ばすして視点を調整してることを俺は知っている。

『いらぬ心配は御無用に』

書き出しから気に入らない。

『これを見てるということは過去にタイムスリップしてることだと思います』

そうだよ。

公園のベンチから飛ばされた。

過去の西田に助けを求めたのだから未来の西田は俺たちを居なくなったことをそれと結び付けて対処してることだろう。

『一週間程度の小旅行ですからご心配なく』

そこで途切れた文字。

裏返しても続きはない。

「なんて書いてあるの?」

待ちきれないように牧野が俺から紙を奪いとる。

「これだけ?」

紙を左右上下、裏表、ひっくり返して落胆気味に牧野が呟いた。

そしてペンの外ッ側の空洞を片目をつぶって覗き込む。

「道明寺の力を総動員してタイムマシンを準備ていますとかないの!」

そんな研究してねぇよ。

出来てれば全世界は道明寺の前にひれ伏すぞ。

「何月何日、何時何分に帰ってきたって情報とか」

「1週間程度の小旅行って書いてあるだろうがぁ」

「へっ?」

とぼけた顔はそのまま食い入るようにメモを見つめる。

「後3日程度でこの時代からの俺たちはいなくなるってことだろう」

「帰れるのかな?」

「帰れるんだろう」

「でもさ、私たちがいなくなったのは過去の西田さんは知っていても確実に帰って来るかどうかは未来の西田さんは知らないよね」

「別な時代に飛ばされたら最悪だよ」

牧野の言葉に思わず見合わせる視線。

一理ある。

「大丈夫じゃないのでしょか」

「きっと私には確信があったんだと思います」

相変わらずの無表情。

見たくねぇアップの顔は直くに目の前で瞬きもせず俺を見つめる。

「急に出てくるなビックリする」

「私の顔で驚かれるのは心外です」

その顔がぬっと出てくれば子供は泣くぞ。

「3日後には私たちは帰れるってことになるのかな?」

「でもどうやって?」

牧野の問いかけは俺を通り越して西田に向かう。

気に入らねッ。

「物語なら着いた場所から戻るってことが一般的でしょうが・・・」

たぶん西田は考え込んでいる。

そうは見えない変わらない表情。

「三日後って言ったらちょうど月食だぞ」

突如増えたもう一つの声。

「あきらか・・・」

「あきらかは、ねえだろう」

その後ろには総二郎に類も従えて現れたまだ高校生のガキ3人。

「きてくれたんだ~」

嬉しそうな声が横から上がる。

牧野!

わざとじゃねぇよな。

調子がいきなり浮上したような牧野。

目の前で落胆していたやつはどこだ!

俺を吹き飛ばす勢いで3人の前に牧野が駆け寄っていた。

頼るんなら俺だろうがァァァァ。

「司、機嫌悪いね」

うるせぇ!

類を思い切り睨みかえしてた。

拍手コメント返礼

b-moka

最後はF3との絡みをのせて~。

心残りは過去の司とつくしと出会わせなかったこと。

いまだに出会ったらどうなるのかなぁ~なんて思っています。

ゆげ様

西田さんの最後の確信は最後に用意しています♪

2人が帰った後と帰ってきた後でのF3と西田さんの座談会楽しそうですね。

のぞいてみたい気になりました。

挑戦してみようかな♪