wedding band 6(完)

結婚した記憶がないことを自分から告白しましたね。

司君の反応はどうなのだろう?

「うれしくないのかよ」

不機嫌そうに響く声は何をどうとらえたのかわからない言葉で返された。

うれしくないってなにが?

結婚したのは覚えてないこと?

結婚は冗談だ。

してねぇよ。なんて道明寺の口から聞けたら、それはそれでほっとできると思うけど。

いやいや、それはない。

うろ覚えだけど紙に自分の名前を書いた記憶はかすかに思いだしてる。

「記憶がなくても、この俺様と結婚できたんだぞ」

あ・・・

そこ・・・ね。

「記憶がないってどういうことだ!」

そんな怒鳴り声を想定してた私にしたらフェイントをかけられた感じ。

でも、そう来るかって納得して道明寺を眺めてる私がいる。

「俺と結婚できたのうれしくねぇのかよ」

不満げで拗ねた表情を見せながらソファーにドスッと腰を下ろして私の目の前に座った。

一段高いところから背の高い道明寺が座るとそれなりの身長差が生まれてる。

絨毯の上に正座気味の私との差はそれなりの威圧感を生じさるはずなのに・・・

今・・・

目の前のいる道明寺からは威圧感というよりも、なんとなく慰めたくなるような、母性本能的疼きを感じてる。

「うれしいよ。

婚約はしてるんだし・・・

大学卒業して、司法試験に受かって弁護士になったら結婚するつもりだったんだし・・・

私の相手は道明寺しかいないって思ってるし・・・」

今回の覚えてない結婚を必死で正当化してる自分がいる。

考えてみたら説得をしないといけないのは私じゃなくて道明寺のほうじゃないのか?

ただ・・・

やっぱり・・・

人生最大のイベントは喜びをかみしめて道明寺の隣にいる自分を覚えていたいわけで・・・

婚姻届けに酔っぱらったまま名前を書いて、役所に一緒に提出したことも覚えてなくて・・・

朝、目覚めたら知らないベッドに寝ていて・・・

左手の薬指に結婚指輪を見つけた。

そのあと道明寺に抱きしめられても、うれしいとか感動の文字がと出てくるわけない。

「やり直すか?」

「なにを?」

「結婚」

「やり直せるの?」

もう婚姻届けだしたのに?

親にも報告してるのに?

新居に引っ越して一緒に暮らし始めてるのに?

疑問符をはりつけた私の目の前で道明寺がクシャと笑みを浮かべた。

たとえようがないほど清々しい微笑み。

目を細めて私を見つめるその奥はいつもよりきらきらと輝いている。

「結婚式はまだ挙げてねぇから」

いや・・・

結婚式のほうが準備が大変で、紙にさらっと名前と捺印してその日に提出できるほど簡単じゃないっと思う。

最低半年はかかるんじゃない?

道明寺の財力を使えば明日にでもやろうと思えばできるのかな?

いきなり明日も困る。

「結婚式は挙げたいけど・・・

それは今じゃなくていい」

「遠慮するな」

遠慮なんて今更しないよ。

本当にそれは大学卒業してからにしない?

今の私は本気で言いたい。

「なに焦ってんだ」

半身を乗り出すように私との間合いを道明寺が詰める。

「そりゃ焦るわよ。

一晩開けたら私の生活がくるっと変わってるんだもの。

ふつうの結婚だけでも大変なのに道明寺との結婚だよ」

「俺は普通じゃねぇのかよ」

「普通と思ってるの?」

「俺は、ただお前を愛しすぎてる男ってだけだ」

真顔で言ったその顔は私の目の前を塞いで唇にチュッと音を立てて離れた。

いきなりのキス。

いきなりすぎて目を閉じるのも忘れてしまってる。

今の私はきっと間抜けな顔で道明寺を眺めてる気がする。

一瞬で時間が止まったように道明寺から目が離せなくなった。

「ピンポン~」

聞こえてきた玄関の呼びだし音。

私の頬に触れていた道明寺の手のひらの動きが止まる。

「あいつら引き返してきたんじゃねぇだろうな」

チッと鳴らす唇に道明寺の不満がくっきりと読みとれる。

それでも道明寺は私から離れようとせずに私を押し倒し気味に身体を重ねてくる。

「出なくていいの?」

「無視しとけば、そのうち帰る」

私を見下ろす道明寺の腕がそのまま私の顔の横に左右に手のひらを付いた。

そして聞こえたのは催促するよな二度目のベルの音。

「出たほうがいいよ」

「たくっ、ぶん殴ってでも速攻追い返す」

勢いよく私から離れて立ちあがった道明寺は本当に乱暴に訪問者を追い返しそうな雰囲気。

心配になった私も直ぐにあとを追った。

「西田・・・?」

意外な来訪者に道明寺の凶暴な牙は抜かれてしまった様。

「なんのようだ?」

「役所から連絡がありまして・・・」

スーツの内ポケットから取り出した薄手の用紙・・・

それって・・・

折られた紙を西田さんが広げて私たちの目の前に見せる婚姻届け。

黒色のペンで書かれた名前は道明寺司に牧野つくし。

「捺印漏れです。

提出した後に記載漏れを指摘されたのですが、代表は酔っぱらって意識をなくしたつくし様の世話で、それどころではなかったので

私が代わりに預かっていました」

西田さんの手から用紙を取り上げた穴の開くほど道明寺が婚姻届けを見つめる。

「お前が、代わりに押して提出し直せばよかっただろう」

「道明寺も、牧野の印鑑も持ち合わせておりません」

当たり前のことを当たり前以上の真顔で西田さんはつぶやく。

「と・・・

いうことは・・・

私たちはまだ結婚してないってこと?」

「そうなります」

「やったッ!」

思わず上げた声。

道明寺がジロリと一瞬で心臓を射貫くような鋭さで私を睨んだ。

西田さんが絡むこの落ち。

多くの方の推察通りの結末でお開きとなりました。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

おはようございます。

拍手一番のりおめでとうございます。

10番手までの確率高くないですか?

更新を待って訪問していただいているというのがわかるのですごくうれしんです。

最近は(完)のつくのを待って、その間は過去の作品で楽しんでらっしゃる方と更新を待って素早く読む方に分かれてるんですよね。

過去作への拍手の数も沢山いただいています。

スリーシスターズ 様も更新がないときはいろいろと読まれてるからそんなコメントをいただくと私も読み返してちょこっとお話を付け加えたりしています。

これが意外と楽しいのです。

見つけたらご一報を(^^♪

婚姻届け提出したけど突き返されたそれを気が付かず酔っぱらったつくしちゃんの世話に追われていた司君。

そこに西田さんがいた設定。

すべて見ていた西田さん。

前準備もしっかり司君に代わってしきっていた気がします。

すかさずスーツの内ポケットにしまいこんだ婚姻届け。

司君に渡すタイミングをしっかり図っていたと思うのは私だけじゃないと思っています。

この後どうなったのか!

➀再度婚姻届けを出した。

➁無効だとつくしちゃんが破り捨てる。

どちらが面白いだろう・・・

選ぶの面倒だから二つとも書いちゃおうかな~。

アルバム発売ですね。

その前に今日のMスタが楽しみです。

ゆみん 様

きゃー

ゆみん様お久しぶりです。

いつぶりかしら?

コメントいただけでうれしいです。

お元気でしたか?

完を待っての一気読みありがとうございます。

まだまだ完が付けないのが多くて~

おいしいところは西田さんが持っていった気がするお話になってしまった~。