西田さんの坊ちゃん観察日記(迷うオオカミ ~ 番外編)

『迷うオオカミ 仔羊を真似る』最後までお付き合いありがとうございました。

あま~い二人は?

高松さんの正体は?

西田さん日記が気になる。

などなど気になるところを残しては終われないということで番外編にいちゃいます♪

連載再開したいんだけどなあ・・・(;^ω^)

このお話は『迷うオオカミ 仔羊を真似る 13』の番外編となります。

 

「ばれましたよ」

「ばれましたか・・・」

ホテルの一室から見下ろせるプールサイド。

目立つ容姿の集まるその特別な空間はいやがおうでも注目を浴びてる。

「正体がばれないように視察するというのが今回の名目だったんですがね」

自分でも思った以上にそれは単なる名目にしかならないことを十分すぎるほど予測している。

仕事の名目でどんな坊ちゃんが見れるのだろうかという高揚にも似た期待感。

つくし様といる坊ちゃんは予測以上の坊ちゃんが見れるので私のひそかな楽しみになっている。

背中を高松に向けたまま見下ろす先で代表と戯れているように見える計4人。

代表を上から覗く・・・いや・・・見守るのは何年ぶりだろう。

ぎらついた真夏の太陽のような何物も溶かしかねない危ない熱。

笑顔の浮かぶその姿の奥に今でもマグマを秘めているのは承知してる。

「話には聞いてましたけど、自分で見るまで信じられませんでしたよ。

自分以外には興味もないってタイプでしたからね。

最後まで俺のことは思いださなかったみたいですが・・・」

私の横に並んで同じようにプールサイドを見下ろす高松。

「どう聞いてたんですか?」

「坊ちゃんが怒鳴る回数が少なくなった。

坊ちゃんから礼をいわれた。

あの坊ちゃんが穏やかに笑うんだよ。

牧野、牧野、牧野って、聞かされない日はない。

まだいりますか?」

私の表情を盗み見てくすっとした笑みを浮かべた高松純平。

小さいころから道明寺の屋敷に出入りしていた彼と再会したのは3年前。

ちょうど代表が『牧野つくし』の存在を唯一無二のものだと認識したころだろうか。

手の付けられない、猛獣。

躾は無理だとあきらめかけていたものを人間に生まれ変わらせたのはいたって普通な少女。

大らかさとやさしさと媚びないまっすぐな性根。

意思の強さと生命力を秘めた大きな瞳。

好意的な印象を与えることができるのは一種の才能。

よくぞ坊ちゃんを愛してくれた、変えてくれたと拍手喝采の評価は道明寺に使える者のほとんどが同じ。

「親父さんとは随分と性格が違うな」

「母親似ですから」

苗字は離婚して変わったが高松の父親は長年道明寺家のハンドルを握る運転手の里井。

小柄な父親とは対照的な大柄な息子。

「気が付いてほしかったですか?」

「昔から俺には興味なかったんで、今更ですよね」

「いいもの見れましたし、俺はこれで」

「またお願いしますよ」

「もう隠れては無理ですけどね」

今まで気が付かれないようにつくし様につかせていた護衛。

慣れたせいかSPから逃げるのがうまくなって見失ったと報告を受ける日々。

代表がつくし様の働く意欲を邪魔するのが原因。

媚びることの嫌いなタイプ。

人にものをもらって喜ぶタイプではない。

自由に好きにさせてストレスを与えないことが肝心。

代表が騒がないように先手を打って今年の夏は私が厳選したバイトで汗を書いてもらうことにした。

代表の視察とつくし様のバイトをブッキングさせたのはほんのいたずら。

私以上に遊び心を発揮したのは高松。

あれは絶対小さいころに横柄に扱われた恨みが少しはこもってると私は思う。

客に頭を下げて丁寧な言葉づかいで微笑みを絶やさない。

別人かと思いました。

代表にこんな真似ができるとは予想外の出来事。

道明寺司とどこまでばれずに視察できかの一般人として扱われることの必要性を代表には経験してもらうはずだったんですが、それ以上の収穫。

私はどうやら代表を見間違えていたようだ。

しかし、まさか、その接待がつくし様を思いだしながら真似ていたものだとはさすがに気が付きませんでした。

坊ちゃんのストーカーもどきもなかなか役に立つものです。

どれだけ観察してたらそれが身についていかせるものか。

経験がものを言うって認識は坊ちゃんにはどうやら当てはまらないと再認識させられました。

レセプション出席のための準備をしてるはずのつくし様。

磨かれて艶やかというよりは可憐な装いで現れる彼女に目を細めて見つめる坊ちゃんを想像すると私の心も穏やかになる気がします。

つくし様は病み上がりなのですから無理させないようにお願いします。

そこまで気にするのは野暮というものか・・・。

始まったレセプション。

主賓の代表つくし様を残してもその周りにはお仲間の3人がしっかりと守る。

昼間因縁をつけた女性の対応もいつもよりは大人しすぎる対応。

以前なら場を凍らせて雰囲気が台無しになったことでしょう。

会場を抜けだした二人も大目に見て今日の私の役目は終わりってところだろう。

ブルルゥ。

マナーモードの携帯からの振動が胸元に響く。

かかるはずのないと思っていた相手からのコール。

「どうかされました?」

「プールに落ちてずぶ濡れ」

「は?」

「さすがにこのままじゃ、部屋にも戻れねぇしな」

「わかりました」

ホテルの従業員に連絡を入れてプールサイドへと向かう。

すでにプールから上がったお二人は、足先だけをプールの中にぶらっとさせたままならんで座ってるのを見つけた。

暗闇の中をそこだけは月の光に照らされてるように浮かび上がる。

「何してるんですか?」

「何って、泳いだだけだ」

「服のままですか?」

「訓練だよ。服を脱いでおぼれるやついねぇだろう」

「タキシードとドレスで訓練する方はいないと思いますが・・・」

「違うんです、いきなり道明寺が抱き付いてくるから態勢を崩してプールに中に落ちそうになって、

私を助けようとして一緒に落ちちゃったんです」

どちらにしても悪いのは代表のような気がします。

「ずぶ濡れの割には楽しそうですね」

「お前も泳ぐか?」

「遠慮します」

一緒にプールに落ちたのがつくし様でなければどんな騒ぎになってたことか。

「ずぶ濡れじゃないか?」

「なに?司が牧野を襲って抵抗されてプールに落とされたとか?」

「あのな、それならなんで牧野まで濡れてんだよ」

代表とつくし様を割くように横にしゃがむ総二郎様とあきら様。

「牧野、これ」

上着を脱いだは類さま紳士的な行動でその上着をつくし様の肩にかけられた。

牧野が俺以外のやつに包みこまれるのは上着でもムカつく。

そんな嫉妬が浮かぶ代表。

「いらねぇよ」

その上着はつくし様の肩から取りあげられてプールの中に投げ込まれた。

「あっ、もう、濡れちゃうじゃない」

上着をとろうとプールの中に戻ろうとするつくし様を腕を前に出して代表が止める。

「こいつらに取りに行かせればいいんだよ」

そう言って坊ちゃんの腕はお二人の背中を思い切り押した。

「司!」

「覚えてろ!」

水面をバシャッと悔しそうに腕が打つ。

今この広いプールを誰も来ないように言いつけたのは正解だったようだ。

大人になればばかげた行いも今は大目に見よう。

そんな穏やかな気持ちのままには代表たちがはしゃぐ姿を見つめるのも悪くはない。

拍手コメント返礼

virgo 様

ウエーター坊ちゃん不機嫌でも接待されたいのにつくし並みの愛想よさで接待された日にはハートが飛び交ってつくしちゃんますます嫉妬の嵐となりそうです。

あたたかいコメントありがとうございます。

これからもどうぞお付き合いよろしくお願いします。

りり様

高松さんと里井さん、司ではないですがなかなか結び付くものないですよね。

司に気が付かせるためにはこの先も高松さんの登場はありでしょうか?

みや 様

一枚も二枚も上の西田さん。

この先はこの西田さんも舌を巻く成長した司をいつかは登場させたいと思っています。

アーティーチョーク 様

高松君が司を知っていて当たり前。

司が高松君に気が付かないのも当たり前というところでしょうか?

つくしへの感謝状並べたら地球一周するくらいになったりして・・・(;^ω^)

あーちゃん  様

プールサイドで二人のいちゃこらをもっと見たい気もしますが、F3きちゃったし西田さんいるしなぁ・・・

そんなの関係ねぇ! ← 古っ。