羞恥心て・・・あるのかな?

マネキンシリーズ 第7弾!

このお話は花男短編「こうしてドレスは作られた」の続編です。

出来ましたら第1~6弾を読まれた後お楽しみください。

大学のラウンジで美作さん、西門さんが花沢類を相手に大口開けて笑い合っている。

こんなに馬鹿笑いしているなんて初めて見る風景。

なにを話しているのか興味しんしんで近づいた私の体が思わず硬直する。

「俺達!昨日!司のうちで、す~げ面白いもん見た!」

「なんだと思う」

「「マネキン!」」

「プッハハハハハハ」

「司が牧野サイズに作らせたマネキンでな、俺達が触ると顔を真っ赤にしてマネキンとられねえように守ってやがんの」

「ブッ ハハハハハハ」

私の存在を全く気が付いてない美作さんから聞きたくもない話が次から次に私の耳に入ってきた。

恥ずかしい時もこんなに怒りが湧き上がってくるんだと初めて知った。

身体がぶるぶる震えだすのを両手のこぶしをギュッと握りしめて必死で我慢する。

F3の笑いが一息つく頃、私は怒りの爆発を抑えるように美作さんの背中に向けてお腹から声を絞り出した。

「そのマネキンの話もっと詳しくしてくれない」

私を振り返った美作さんからサッと顔色が代わり、周囲の雰囲気はお祭りムードから一瞬にしてブリザードが吹き荒れる感じだ。

すべてを美作さんから聞かされた私は、この前、道明寺の家を訪れた時のあいつの不自然な感じにすべて納得がいった。

「絶対許さないんだから」自然と私の口から思いが飛び出す。

私の態度にびくつく美作さん、西門さんに有無も言わさず引き連れて大学を後にした。

行き先はもちろん道明寺の屋敷。

道明寺の在宅だけ確認すると案内の顔なじみの使用人を押しのけるように道明寺の部屋を目指す。

部屋をノックするなんてマナーは頭の中からブッ飛んでいた。

後で考えれば・・・

ノックぐらいするべきだったと後悔する現場を目撃してしまう結果になったのだけど・・・・

部屋の中央目立つ位置。

マネキンに私の服着せて頷いてる道明寺

突然のドアが開かれる音に驚いた道明寺が振り返る。

私と目の会った瞬間に道明寺の表情が凍りつくのがわかった。

振り返った道明寺の右手には黒色のストレートのウィッグがしっかり握リしめられている。

このマネキンは私の寸法そっくりの着せ替え人形か!

気はつけば道明寺に馬乗り状態で考えつくだけの罵声を浴びせていた。

なんとかマネキンを道明寺から取り上げる。

マネキン抱きしめ道明寺を睨みつける私を残し、F3は帰って行った。

部屋を出る三人の肩が心なしか震えているのは笑いをこらえてるせいだと気がついた。

こんな恥ずかしい思いは二度とごめんだと、ますます道明寺を睨む両目に力が入る。

そんな私の気持ちにお構いなしに、「お前の家には置けないだろう」なんて言葉を私の気持ちを逆なでするように、道明寺は言ってきた。

「捨ててやる!」

売り言葉に買い言葉みたいに言葉を返す。

「捨てるなんてダメだ」と叫ぶ道明寺に私の怒りは沸点を超えた。

「ただ、マネキンにお前の服着せたら牧野がいつも俺のそばにいる様だなと思っただけで・・・・」

それが恥ずかしいて言うんでしょう!

道明寺て羞恥心欠如してるんじゃない?

気がつけば右手の拳が道明寺の頬をかすめていた。

その後平謝りで言い訳するを繰り返す道明寺を仁王立ちで見下ろす。

マネキン相手に結構笑える言い訳。

浮気を見つかった時のいい訳ってこんな感じなのかなと怒りのボルテージが少し下降した。

「大体お前がいるのにこんなマネキン俺が相手するはずないだろう」

マネキン相手に着せ替えしてたのは誰だと突っ込みたくなる。

「お前と毎日一緒にいられればマネキンをここに置いとくなんて思わなかったはずだ」

一緒にいないからってマネキンそばに置く彼氏がほかにいるとは思えない。

ここにマネキンを置いとくのは肉食獣の中に肉を投げ入れるようなものだと確信した。

「この際!牧野!一緒に暮さねえか!」

言うに事欠いて私と暮らす・・・て・・・

どこからその展開に繋がるのだろうか。

切羽詰まった最後のあがきがその言葉とは・・・

なんとも情けない。

やっぱり道明寺の頭の中に羞恥心なんてないんだと確信した。

「私が快く『ハイ』と返事するわけないでしょう!」

言葉と同時に右フックを道明寺に発射した。

このマネキン・・・

本当にどうしよう?

マネキンの行き先を求めて私の頭の中は急激に回転し始めた。