記憶 パート Ⅴ

*このリレー小説は記憶 パートⅢからの14話目から分岐しています。

パートⅢを読まれた方は15話目からお読みください。

第1話   記憶                            作 あいきさん

「ちょっと出掛けてくるね!!」

いつもの脱走。おきまりのこと・・・。

でも、今回はいつもと少し違っていた。

予定の時刻を過ぎても、ユーリが帰ってこなかったのだ。

「・・・ハディ、ユーリはまだ帰ってこないのか?探しに行く!」

心配になったカイルは、ハットゥサ中を探し回った。

そして・・・。

「ユーリ!」

ある民家の前で、水くみをしているユーリを発見した。

ユーリはきょとんとして、こちらを見ている。

「・・・あなたたち、誰?」

最愛の娘、ユーリから発せられたそんな言葉。

誰・・・・?だと・・・・・。

「あなたたち、わたしをしってるの!?」

バシャン。

水が、ユーリの手から、滑り落ちた。

「わたしのことをしっているのね!?誰?あなた達は誰?」

何も、答えられない・・・。

ユーリ、記憶をなくしたのか・・・・・・・!

第2話            家              作 ひろきさん

「・・・あの、失礼なんですけど・・・。あなた方誰ですか?」

ユーリの記憶がないと分かって、みんなが呆然としているときだった。

ユーリは、なぜ黙り込んでしまったのかが分かっていない。

「あの、とりあえず中に入りませんか?・・・で、お話聞かせてください!」

「あぁ、そうさせてもらうよ。」

何とか正気を取り戻したカイルは、ユーリの言葉に従った。

今のユーリに何を聞いてもワカラナイ。

それならば。

「おばさん、あのね、この人達私のこと知っているみたいなの」

「え?だれだい・・・?お嬢ちゃん、お茶でももってきな」

ユーリはおばさんの言ったとおりに奥に引っ込んだ。

この様子からして、おばさんはカイルに気がついたらしい。

「やっぱりあのお嬢ちゃんは、イシュタル様かい?陛下」

「・・・そうだ。世話になったらしいな、礼を言おう。

 ユーリを連れて帰りたい」

「あぁ、それが一番いいんでしょう」

ふぅ・・・。

大きなため息一つ。この女性は、何か知っている・・・?

「どうしてユーリは記憶をなくしたんだ?」

「・・・事故だよ。私がもっていた水をね、彼女がここまで運んでくれて・・。

 それで、帰りがけに目の前に飛び出してきた馬車に驚いて頭を打ったんだ」

頭を打った。

他には特に外傷はなかった。ユーリのことだ。

うまく身を翻したのはいいが、足を滑らしたのだろう。

「では、ユーリは連れて行く」

カイルはそういうと、かたんと席を立った。

第3話       帰れない                      作 ひー

「ユーリ帰るぞ」

ちょうど奥の部屋から御茶を戻ってきたユーリにカイルが声をかける。

「ちょっと待ってよ、なぜ私があなたとかえらなくっちゃならないの?

私はここにいるわよ、今はここが気に入っているんですもの」

「お前は私の妃だ、本当に何も覚えてないのか」

そういってユーリを抱きしめるカイル。

「ちょっと止めて下さい、本当に何も覚えてないんです」

「急に妃ていわれて、ハイハイてついていける訳ないでしょう」

カイルの腕から逃れて、おばさんの後ろに隠れるユーリ。

「大丈夫だからこの方たちについていってください、イシュタル様。少しの間でしたけど一緒に過ごせてうれしかったです」

「もうイシュタルとかユーリとかみんなで勝手に話を進めないで、私おばさんの息子が帰ってくるまでここから離れないんだから」

そう言っておばさんを抱きしめカイルをにらみつけるユーリ。

「帰らないって・・・ユーリ様・・・」

ユーリにつめよるハディを制してカイルが口を開いた。

「息子が帰らないとは・・・なにか問題がありそうだな?」

やれやれ、記憶が無くなっても何かのトラブルに巻き込まれているらしい・・・

平静を装いながらもカイルは心の中でため息をついていた。

第4話   問題&帰宅              作 あかねさん

「息子は、数ヶ月前に猟に出たまま帰ってこないんです。ただ、それだけのこと。 ですが、その、ユーリ様は・・・・。」

ユーリは、ぎゅっとおばさんにくっついてはなれない。

王宮には帰らないと言うし・・・。

「・・・ユーリ、女性の息子が帰ってくれば、私と一緒に王宮へ来るか?」

「・・・・・・・・そこに、記憶のヒントがあるならね」

ぷいっと、顔を背けるユーリ。

さっきいきなり抱きしめたのがいけなかったらしい。

「ふぅ、では、そのむすことやらをさがすか。なーに、すぐに見つかるさ」

ユーリは、きょとんとしていた。

今のユーリには、カイルが何者なのかさえ分かっていない。

「そんなにすぐに、見つかるわけないでしょ」

「まぁ、みてろ」

ー 数日後 ー

カイルの言葉通り、おばさんの一人息子は見つかった。

猟をしている途中道に迷い、帰れなくなっていたのだ。

「陛下、ありがとうございます、陛下!!」

「いや・・・。さて、ではユーリ。一緒に王宮へ行こうか」

おばさんと息子の隣でむすっとなっているユーリの手を、カイルは強引に引いていく。

そして、ひらりと抱き上げると馬に乗せる。

パカパカパカ。

急ぐわけでもなく、馬を進めるカイルご一行。

「ねぇ、貴男は何者?」

記憶のないユーリには、自分の愛した男でさえもわからない。

「・・・今から行くところへ行けば分かるけど・・・。私は、カイル・ムルシリ。

 このヒッタイトの皇帝であり、お前の夫だよ。ユーリ・イシュタル」

ユーリは馬から転げ落ちそうになった。

自分に、旦那がいる!?しかも、皇帝ですって!?

そんな突拍子もない話を聞きながら、ユーリ達は王宮へ帰ってきた。

第5話     戸惑い                 作 マユさん

記憶を無くしたままのユーリを連れてカイルは王宮に戻って来た。

ユーリはカイルが自分の夫と知り戸惑いを感じていた…

カイルはヒッタイトの皇帝だという…つまり自分は妃なのだ…

自分が一国の皇帝の妃?

何か違和感がある…

「さあついたよユーリ…疲れただろう湯殿に入ってゆっくりしておいで」

ユーリは3姉妹に連れられて湯殿に放り込まれた。

もともと埃っぽかったのでユーリは湯殿でくつろいでいた。

「う~~ん!気持ちいい~」

カイルが自分の夫だと言う以上、ユーリは信じていた。

カイルが人を騙すような人とは思わなかったから…

すっかりくつろいてせいたところに3姉妹がやって来て、服を着させられる。

「ねぇ…この服、嫌なんだけど…」

「あらどうしてですか?よくお似合いですわよ」

ユーリが着させられたのは脱がしやすそうなスケスケのドレス。

いくら記憶がないといえ、服の好みは変わってないのだ。

「まあよろしいではありませんの。これくらい着飾って陛下をお喜ばせになった方が良いでしょう」

「よ!喜ばせるって何であたしが!!」

「何で?って陛下とユーリ様はご夫婦ではありませんか」

(そ‥そっか…あたしとカイルは結婚してるんだっけ…あたしカイルの奥さんなんだよね…つまり…その…いや~恥かしい!!)

ユーリの顔は赤くなっていく。

「ユーリ様?お顔が赤いですけどお湯加減熱かったですか?」

「何でもないよ」

ユーリは笑ってごまかすしかなかった。

「ではどうぞこちらへ」

ハディに言われユーリはカイルの部屋に入る。

「ではお休みなさいませ」

ハディは扉を閉めて遠ざかっていく。

(どうしよう…カイルが来たら完璧に2人きりじゃない!あたし心の準備がまだ出来てないよ!!)

 キィーーーーーーーーー

「あ…カイル…」

振り向けばカイルが立っていた。

とても楽な夜着に身を包んでいる。

(いや~~どうしよう!!)

ユーリの鼓動はますます早くなっていく。

そしてカイルは・・・・

第6話   少しだけ                    作 金こすもさん

「どうした、ユーリ? 」

真っ赤になり硬くなったユーリに、カイルは笑顔で接した。

「あっ、あの~。あたしたち夫婦だから、その~。愛しあわなければ、いけないの? 」

「そうだな。おまえしだいだな。私のことは、すべて覚えてないんだろう? それならば、仕方ないさ。ゆっくりとお休み、ユーリ」

カイルは自分の望みを抑えて、ユーリを安心させ眠らせてやるつもりだった。

時がたち王宮での暮らしに慣れれば、ユーリは落ちつき、きっと記憶を取り戻せるだろうと考えていた。

ユーリの顔が、哀しげに微笑んだ。

カイルから受ける優しさがわかり、ユーリはそ~と身体を投げかけた。

「ごめんなさい、陛下。あたし、早く思い出す。もう、いいよ~。陛下を、信じます」

「ユーリ、陛下とは呼ぶな。私の妃は、カイルと名を呼んでくれたぞ」

暖かいユーリの素肌に触れると、カイルは今までの決心を鈍らせていった。

「カイル、ごめんなさい」

華奢な身体に、大きな両腕がのび抱きしめた。

甘い香りと象牙色の肌のなかで、いつしかカイルは望みのままに愛しんでいった。

ユーリは、思いもつかない身体の反応のなかで、少しだけカイルへの記憶を取り戻していった。

この人は、こんなに自分を大切にしてくれていたのだと・・・・。

そして自分も、こんなに愛していたのだと・・・・。

第7話  カイルの願い?                        作 匿名さん

夜明け前、カイルは腕の中のユーリの寝顔を見つめていた。

いつもと何一つ変わらない寝顔。

なのにユーリの記憶の中に私はいない?

そんなバカなことがあるわけがない。

きっと、これは悪い冗談だ。

ユーリが目を覚ませば、「ごめんなさい。脱走したのを怒られたくなかった嘘ついちゃった。

ほんとうは、記憶をなくしてなんかいない。」と言ってくれる。

カイルは、そう思いたかった。そう思いたかったけれど、現実は・・・・・

「ん・・・」ユーリがゆっくりと目を開ける。

その瞳に浮かぶのは困惑の色。ユーリやっぱり私がわからないのか?

「わたし、この何日かものすごく不安だったの。自分が誰なのかもわからなくて。

まだ、なにも思い出せない。思い出せないけどこの腕の中にいるだけで、落ちつく。

もう少しこうしてもらってていい?」

返事をする代わりにカイルはユーリを抱きしめた。

後宮の奥深く閉じこめておきたい何度もそう願った。

今ならその願いが叶えられるかもしれない。

第8話   ずるい                 作 あかねさん

「・・・・ん?もう朝・・・。あっ!」

記憶をなくしているユーリにとっては、カイルの側で寝ていると言うことがまだ、信じられなかった。

「おはよう、ユーリ。」

平然としているカイル。

でもこの人は、私のことを心配してくれている。

なんでこんなに平然としていられるの・・・?

「ユーリ、いいか?勝手に外に出てはいけないよ。今日は、私は政務があるから、

 あんまり会いにはこれないけど・・・。いいか、この部屋から、出てはいけない。」

「・・・わかりました。」

政務室に行く途中、カイルは思った。

自分はずるい奴だ・・・・と。

ユーリの記憶がないことをいいことに、ユーリを閉じこめている。

自分の願いを叶えている。

ユーリには、「お前は記憶のあるときから、こうしていたんだ」と、

ウソを突き続けている。

自分は、ずるい奴だ・・・。

第9話  いいのかな?                    作 しぎりあさん

「ねえハディさん・・あたし、このままで・・いいのかな?」

 ユーリがぽつんとたずねた。

後宮では、毎日、食べきれないほどの食べ物。

たくさんの綺麗な衣装と宝石と、なにかあればすぐに手を貸してくれる侍女に取り囲まれている。

皇帝・・カイルは、これは全部あたしのものなんだ、という。

 皇帝の正妃としては、当然の事なのかも知れない。

でも。

「あたし、自分が正妃だったなんて、信じられない。なにも思い出せないの」

 正妃らしいことができるはずもない。

義務を果たさず、権利だけを享受していていいのだろうか。

「まあ、ユーリさま。ユーリ様が皇帝陛下の御正妃であることは、みんなが認めていることですよ」

 ハディは、にっこり笑う。

記憶の中から、自分の姿が消えてしまったのは悲しいことだけれど、皇帝陛下のご心痛に較べれば、なんのことはない。

最愛の方に忘れられていまうのですもの。

「みんなの認めている御正妃って、いろんな事が出来るのでしょう?政務とか・・あたし、なんにもできないよ」

「ユーリさまは、皇帝陛下のことを、どうお思いですか?」

突然、きかれて、ユーリは口ごもる。

「どうって・・いい人だと思うよ・・親切だし・・やさしいし・・」

「お好きですか?」

ええっ!?ますます、ユーリは赤くなる。

「・・・う・・ん・・好き・・かもしれない・・」

ハディの表情が、ぱあっと明るくなった。

「それなら、十分です。皇帝陛下を愛されて、皇帝陛下に愛されて・・他の誰にも出来ない、御正妃様だからこその役目ですよ」

それが、役目なの?皇帝に愛されて、皇帝を愛して?

あたしは、確かに、皇帝であるカイルに惹かれている。

でも、あたしのどこに、愛されるにふさわしいところがあるというの? 

第10話   矛盾           作 ひねもすさん 

あの人に愛されるふさわしい女性になりたい。

そうすれば愛し、愛されることが不安じゃなくなる。

それには、何かしなくてはいけない。でも何をすればいいのか分からない。

『ただ、陛下を愛すればいい。』

ハディはそう言うけれど、愛すればその人の役に立ちたいって思うものじゃないかな?

ただ、この部屋の中で待ち続けることが、あの人の役に立つことだったのかな?

ユーリは腑に落ちないことがあった。

以前の自分は正妃としての仕事をこなしていたはずだ。

なのに、カイルは私がずっと部屋で過ごしていたという。

公式の式典以外は外へは出なかったと言っている。

正妃と言うのは式典に出るくらいしか仕事がなかったのかしら?

いいえ、今、陛下は正妃の分まで仕事をこなしてる。

だから忙しいんだ・・・・・。

では、なぜ、私に正妃の仕事のことを教えてくれないのかな?

陛下の私への態度は矛盾している。

記憶を取り戻して欲しいと言いながら、正妃としての仕事に関しては思い出して欲しくないみたいだ。

なぜなんだろう・・・・・?

疑問に思うユーリの後ろから皇帝の声が聞こえた。

「ユーリ、遅くなってすまない。」

第11話  誤解          作  美音さん

愛されるだけの女はイヤ!あたし記憶はないけど、分かるの・・・。

カイルのこと、言葉では言い表せないくらいあいしていたって・・・。               

だからあなたの役に立ちたい、愛する人の助けになりたい。

そう思うのは当然だよ。

「ユーリ、気分はどうだ?」

カイルが政務の間をぬって、あたしのご機嫌伺いに来るのは毎日の事。

「カイル、どうして?」

カイルの琥珀色の瞳を見つめる。

「あたしにお仕事教えてよ!政務を手伝いたい。少しでもあなたの助けになりたいの。」

あたしが強い口調で言うと、カイルはあきらかに困った顔をして無理に微笑む。

「おまえは何もしなくていいんだ。ここに・・、わたしの側にいてくれれば。」

 

どうして、どうして、どうして?

あたしのカイルに対する疑惑は、どんどん大きくなっていった。

第12話  悪あがき                 作 匿名さん

これ以上、ユーリを閉じこめておくのは無理だな。

カイルは考えていた。

記憶を失ってもやはりユーリはユーリだった。

自分の足で立って、自分自身で輝く。

自分で考え、行動する。そういうところは、変わらないようだ。

このままでは、私を信用してくれなくなるだけのようだ。ならば・・・

「文字が読めなくては、皇妃の仕事はできないよ。文字の勉強から

始めようか。」

文字の勉強ならこの部屋でできる

少しでも長く、後宮だけに閉じこめようとしている自分がいる。

お前の気持ちが私以外のモノに向いて欲しくない。

お前の瞳に映るのは私だけでいい・・・・・

第13話  焦り                     作 しぎりあさん

真剣な顔で、粘土板に文字を刻みつけているユーリを見ながら、カイルは言いようのない焦燥感の中にいた。

一度、学んだものだ。上達は、速い。

それは、傷ついて保護した鳥が再び空に帰るために羽ばたき始めるのに似ている。

「どう、かな?」

おずおずと、差し出された粘土板を受け取ると、さっと目を走らせる。

「ああ、上出来だ」

「ほんと!?」

喜びに紅潮した頬に、口づける。

「今日は、ここまでにしておこう」

「え、でも・・・」

「急に、無理をするのはよくないよ」

調子いいのにと、唇をとがらせるユーリを見て、ほほえむ。

そんなに急がなくていい。

一日でも飛び立つのを遅らせるつもりだ。

優しげな表情とは裏腹の、暗い考えに囚われながら、ユーリを見守る。

「ああ、いい天気!ねえ、外に出ていい?」

「だめだ!!」

窓に駆け寄ったユーリが、強い語気に驚いて、振り返る。

怯えさせてしまったかもしれない。後悔が、押し寄せてくる。

「あ・・つまり・・その・・これから執務室を見せてやろうかと思っていた・・」

「執務室、行っていいの?」

ユーリの声が、はずんだ。

「良かった、一度行ってみたかったの、カイルがお仕事する部屋!」

後宮から執務室の方へ移動する途中で、それは起こった。

「おお、イシュタル様、体調がすぐれないとお聞きしていたのですが、いかがですかな」

みれば、高位の文官だった。皇帝の前で、叩頭することなく立って礼をすることが許されている。

ユーリは不思議そうにその顔を見返す。

「ねえ、あなた・・・えっと、名前は・・」

「ユーリ、ゆくぞ」

カイルが、腕をひくとユーリがよろめいた。

「おお、危ない」

文官の腕が差し出され、ユーリのあいた方の手を取った。

「!!」

嫉妬で目が眩みそうだった。

今の今まで閉じこめて誰の目にも触れぬようにしていたのに、こうして人目にさらしてしまったばかりか、言葉を交わしあまつさえ他の男に手を取らせた。

以前のカイルなら、気にもとめないことだっただろう。

ユーリは自由に駆け回り、誰の間でも入り込んでいた。

閉じこめるのはユーリをたわめることだと知っていた。

けれども、数日の間にユーリを占有することを覚えてしまった。

閉じこめ、他の男には会わせず、外界との接触を断ち、ただカイルの帰りだけを待ちわびるように仕向けた。

離れている間も、ただひたすら自分のことだけを考えるようにするために。

間違ったことをしているとは思わない。

自由に飛び出したユーリは、傷つき、カイルを忘れた。

二度とそのようなことを起こさないために、ユーリを守らなくてはならない。

「陛下?」

いぶかしむ文官を無視すると、ユーリを抱え上げる。

「きゃあ、ちょっとカイル!」

そのまま、後宮に続く廊下を歩き出す。

抗議するのにかまわず、元の部屋へ戻った。

「ハディ!ハディ、いるか!?」

「は、はい陛下。こちらに・・」

平伏するハディの前にユーリを下ろした。

「ユーリを、着替えさせろ」

「は?」

「すぐにだ!」

他の男の目に触れた衣装など、いつまでも着せていたくはなかった。

「すぐに、お召し替えの準備を」

「どういうことなの、カイル!?」

ハディが退出すると、ユーリが詰め寄る。

理不尽な扱いへの怒りのためか、象牙色の肌が上気している。

「お前は・・・私以外の男と、口をきいた」

「えっ?」

「私以外の男に、この肌を見せた・・・」

ゆっくり頬をなぞる。

尋常でない光に射すくめられ、ユーリの身体がこわばる。

「他の男の視線になど、さらしてよいものではない。お前は私のものだから・・」

手の甲で首筋から肩口へたどる。

丸い肩を包み込むと、次の瞬間、一気に衣を引き裂いた。

「!いやあぁぁぁ!!」  

第14話  理性と望み                作 マユさん

引き裂かれたユーリの衣装が床へとゆっくり落ちる。

一糸纏わぬ姿になったユーリをカイルは腕の中に引き寄せる。

「いやっ!カイル何をするのよ!」

ユーリは必死にカイルの腕から逃れようとする。

「何をする?決まっているだろう…おまえは私以外の男と言葉を交わし そしてその肌を私以外の男に触れさせた…だから今から罰を与えるのだよ…」

カイルの理性はすでに切れていた。

カイルはユーリの両腕を片手で掴むと寝台に倒れこむ。

手を象牙色の肌のすべてに這わせ唇で自分がユーリの所有者である証を刻みつける。

ユーリは泣きながら身をよじる。

「カイルやめてよ!!」

「おとなしくしろユーリ!!!!」

カイルの怒声にユーリの身体はビクッと震える。

カイルはその隙にユーリの脚の間に身体を滑り込ませる。

「カイル!いやっ!!」

「…………………………」

「…!!!!…やめてよ!ああっ!」

「……………………」

「……………」

コンコン…

「誰だ!!!」

「陛下…ハディでございますが…着替えを持って参りました」

「ああ…ちょっと待て」

助けが来た!と即座に感じたユーリだがカイルの方が一枚上手であった。

彼は昔一度魔が指した時にハディに邪魔されていたので、今回もどうせ止められるのが分かっていたのだ。

何時の間にかカイルの手には布が握られている。

今までの事から疲れて大きな声がでないユーリ。

「お願い…ハディ…助け…んんっ!!」

何と!カイルは愛するユーリの口に猿ぐつわをしたのである。

これではユーリは声も出ない。

ユーリが驚いている隙にカイルはユーリの両手も布で縛るとベットの淵に縛り付けてしまった。

これではユーリはハディに助けを求めることも出来ない。

「待たせたなハディ」

「あら?陛下 ユーリ様はどちらに?」

「ああ…ユーリは疲れて横になっている。着替えは私が受け取っておく。もういいから下がれ」

「…分かりました。では、お休みなさいませ。」

ハディはユーリのことに気が付かず自分の部屋に下がっていってしまった。

これではもう助けを呼ぶことも逃げることもできない。

そして…ユーリは一晩中カイルに罰を与えられ続けた。

まどろんでいく意識の中でユーリは思った。

(どうしてこの人は…私が他の男の人と会うのが嫌なの?)かと。

第15話     鎖                 作  しきりあさん

翌朝、目覚めたカイルを襲ったのはひどい後悔だった。

腕の中に泣き疲れて眠るユーリは、涙で頬をこわばらせ唇の端に血をにじませ、全身にいくつもの傷を残していた。

抵抗するときにぶつけたのか、肩や足に痣がある。

手首には戒めの痕が生々しい。

自分はどのような顔で、この小さな細い身体に襲いかかったのだろう。

残酷な喜びに支配されて、欲望のままに愛しい女を蹂躙した。

「ユーリ・・」

そっと頬に触れる。

ぴくりと身体が揺れ、やがてまぶたがゆるゆると開いた。

「ユーリ、大丈夫か?」

揺れる黒い瞳は、カイルの姿をとらえると、恐怖に見開かれた。

「いやぁぁぁ」

飛び起き、シーツを掴むと後ずさる。

胸元をかろうじて隠すシーツの間に覗く白い内股に、いくつもの血をにじませた歯形が散っていた。

「ユーリ怯えないでくれ、悪かった」

言葉でなど、なだめられないのは知っている。

一時の激情が、永遠に愛しい者を失わせたかもしれない。

それでも、言葉にするしかない。

「許してくれ、ユーリ。私は・・嫉妬に目がくらんでいた」

第16話  二人だけの部屋             作 マユさん

「ユーリ…」

「いやぁぁぁ!こないでよ!!」

ユーリは手元の枕をカイルに投げつける。

もともと反射神経のよいカイルは投げつけられた枕をいとも簡単によける。

「ユーリ…すまなかった…許してくれ…」

「………許せない…私…もう貴方に会えない…」

ユーリはシーツを身体に巻きつけるとカイルの部屋を飛び出ていった。

カイルは自分自身の疲れからもユーリを追うことが出来ずに ゆっくりとベットに身体を投げ出した。

それはユーリが飛び出ていって2時間位あとのことだった。

コンコン

「皇帝陛下!!おられますか?ユーリ様が大変でございます!」

声の主はキックリだ。

カイルは急いでローブを纏うと部屋の外に飛び出た。

「一体どうした!?ユーリがどうしたのだ!?」

「ユーリ様が…ユーリ様がお部屋で倒れられました!」

カイルは慌てて後宮に向かう

「ハディ!一体何があったのだ!」

カイルは後宮の正妃の間につくとすぐにハディに事情を聞く。

「それが…私たちにもよくわからないのです 2時間ほど前にユーリ様がお部屋に戻られて閉じこもられて…お部屋から妙な音がした物ですから私がお部屋に入ると…

ユーリ様が陛下から送られたお衣装やシーツをナイフで引き裂かれておりました…

何故かこう言われていました…『あの人が触れた物はみんないらない!』と」

ハディは涙ながらに語る 。

そう思うのはあたりまえだろう…

彼女は皇帝夫婦の間に何があったか知らないのだ。

「………でユーリは……」

「鎮静剤で今は別室でお休みになられています…どうぞ陛下…」

「キィィィィ」

カイルはユーリの部屋に入る。

カイルは愕然とした自分がユーリに送った衣装が見事に引き裂かれ散らかっていたのだ。

シーツも天幕も…ほとんどが切り裂かれている。

だがカイルはある物に目をつけた。

「これは‥」

「…それも最初はユーリ様は手に取られましたわ…ですが悲しそうな顔になられて、それだけは元の通りにされました」

ユーリが唯一切り裂かなかった物…

それ花嫁衣裳だ…

白が好きなユーリの為に白や淡い赤で統一された特注品である。

「……すまないがハディ…ユーリの部屋に案内してくれ…」

「どうぞ…こちらがお部屋です」

部屋に通されると寝台で眠るユーリの元に近寄る。

涙で濡れた頬…すべて私のせいで。

カイルはユーリの小さな手を両手で握り締めるとユーリが目覚めることを祈る。

ハディはそんな2人の姿を見て扉を閉めた。

「キィィィィ…カチリ…」

「よくやってくれたなハディ…」

扉に外から鍵をかけたハディにイル・バーニが声をかける。

「ですがイル・バーニ様…また陛下がユーリ様にご無体なことをなされたら…」

そう…

彼女もイルも本当の事を知っているのだ。

「言ったはずだ。今お2人に必要なのは一緒に過ごされる時間と話し合いのできる時間だ」

「数日間は急ぎの政務は両陛下ともにない。」

だからこそ…

同じ部屋でゆっくり話ができる時間がとれたのだ。

陛下もユーリ様も本当は互いを大切に思われている。

後はご自分たちで話されるだろう…

陛下がユーリ様にご自分の愛情の深さを分かって貰う為には逃げ出せない空間も必要なのだ。

おまえもここはお2人の今後のためと思って見過ごすのだな」

「そうですわね、お2人の空間さえお出来になればきっと仲直りされますわ」

こうしてイルとハディは宮殿に戻って行った。

「うん…」

「ユーリ…目が覚めたのか?」

「ん…きゃぁぁぁぁぁ!近寄らないで!」

ユーリは寝台を飛び出して扉へ向かうが、ハディが外から鍵をかけたので外に出られない。

「鍵がかかってる」

絶望しヘタリと座り込んだユーリにカイルは言う。

「ユーリ…少しだけでいい…話さないか?」

第17話  崩壊             作 しぎりあさん

ユーリは壁際に追いつめられたように震える。

ハディが巻いたのだろう、身体中が白い包帯で覆われていた。

今更ながら、与えた暴力の酷さに身震いする。

なんという残酷な仕打ちをこの小さな身体に与えたのか。

「ユーリ、話を聞いてくれ」

昨夜の自分は、話し合いの余地もなく襲いかかり、泣き叫びながらの哀願にも耳を貸さなかった。

それが、いまさら話など、ユーリが信用するはずもない。

一歩踏み出すと、黒い瞳が大きく見開かれた。

恐怖に染められたそれは、涙までにじませている。

カイルの腕が伸ばされるのを見たとき、ユーリの口から声にならない悲鳴が漏れた。

それが、カイルの動きを一瞬止めた。

足をもつれさせながら、ユーリが逃れようとする。

ひどく傷を負い、思うように動けぬ身体がバランスを崩した。

僅かの躊躇の後、カイルの腕が抱きとめる。

絶叫がほとばしった。

「いやああぁぁぁあ!!」

暴力で支配しようとする暴君とただ二人閉じこめられた恐怖が、ユーリの精神にゆがみをもたらす。ひたすら頭を振り、叫ぶ。

「ユーリ!!」

離さなくてはいけない、とは分かっていた。

けれど叫び続ける身体を放り出す事ができなかった。

両腕をまわし、抱きしめる。

「あああぁぁ・・」

不意に、ユーリの声がやんだ。

がくりと首が垂れる。気を失ったのだ。

身を浸す苦い後悔の中に、ただ一点毒のように沈む濁った感情に、カイルは気づいた。

このままユーリを支配し続けその精神を壊してしまえば、永遠に自分のモノにしてしまえる。

自分の為だけに存在する、愛しい人形。

違う。

それは、愛情ではない。

その濁った感情でユーリを抱き、傷つけ、追いつめた。

カイルは、腕に力をこめる。

欲しいのは、身体ではない。

曇りなく自分に向けられる笑顔だ。 

第18話 断章                作 しぎりあさん

視線を感じた。

意識が引き戻されると、天井が映った。

自分の部屋の寝台に横たわっている。

ユーリはしばらく天井を見つめ、それから視線のやってくる方に頭を向けた。

寝台から離れた部屋の中央、椅子の上に男が座っている。

真っ直ぐな強い視線を向けながら。

とたんに、背筋を恐怖がかけ上った。

あの日、懇願する自分を見下ろしていた瞳だった。

わずかの逡巡さえも浮かべずに、冷酷に身体を引き裂き続けたあの男が、自分を見ている。

のどの奥に何かが詰まるようで、あえぎながらユーリは寝台の中を後ずさった。

カイルは、動かなかった。

ただ、視線を逸らすことだけはない。

「お前には、触れない」

身を守るものがシーツだけだというように、たぐりよせた布を握りしめたユーリは、涙ににじんで目でカイルを見た。

カイルは、苦い後悔を噛みしめたまま、ふたたび繰り返した。

「お前には、触れない。安心するがいい」

ユーリは、肩をなんども上下した。

「ほ・ほんとう・・に?」

かすれた声がしぼりだされた。

カイルがうなずくのを見ると、ようやく息をついた。

けれど、シーツは握りしめられたままだ。

「・・・少し話したいと思ってな」

話を介在させる余地もなく、暴力を振るったのは自分だ。

それも、一晩中。あの夜の間、なんどユーリは哀願し、許しを乞い続けたのだろう。

そのかすかな言葉さえ、冷たい喜びにしかならなかったというのに。

「はな・・し?」

怯えきった小動物の目がカイルを見ている。

この黒い瞳が、笑いかけてくる日は来るのだろうか。

「あの夜」

ユーリの肩がびくりと震えた。

「私は、自分を見失っていた。すまなかった。・・・怖かったか?」

当たり前すぎることを訊いている。

ユーリはおずおずとうなずいた。

「私を、恐ろしいと思ったか?」

また、ユーリがうなずく。

唇が血の気を失っている。

「私も、自分が怖かった。言い訳にしかならないのは、分かっている。ただ、お前が他の男と親しくするのを見るだけで、狂ってしまう自分が怖かった。嫌がるお前を抱いているときに喜びを感じた自分が怖かった」

ユーリは凍り付いたように動かない。

カイルは、その身体の上に視線をすべらせた。

幾重にも巻かれた包帯が、残酷な行為を思い出させる。

「信じられないかもしれないが、私はお前を愛している。そして、出来るなら、またお前を抱きたい」

ユーリの顔にあきらかに恐怖が浮かんだ。

「つぐないは、するつもりだ。お前が私を許してくれるまで。だから、お前には触れない」

立ち上がる。

ユーリが息をのんだが、そのまま背を向けた。

「話は、これだけだ。私などに、口も効きたくないだろう。すまなかった」

言って、扉まで歩み寄った。短く開けろと命ずる。

鍵の外される音がした。

迎えたイル・バーニと三姉妹の礼をうけながら、部屋を後にした。

第19話   私の決意                     作   匿名さん

「ぜひ、皇妃陛下のご出席を!」

元老院の要請に皇帝は渋い顔をしている。

「陛下、皇妃陛下が公式行事に出席なさらなくなって、どれだけたつと思っておいでですか。今度の神事にお出ましいただけないようでは、

民衆は納得いたしません。ぜひ、皇妃陛下のご出席を!」

「陛下、皇妃陛下になにごとかあったのではと民衆の間に動揺が広まっております。お元気な姿を見せていただくだけでよいのです」

「困ったわね。元老院の要請ももっともなことだし・・・・」

「でも ねえさん今のユーリ様にそれは酷なことよ。身体の傷は直っても、心の傷はまだまだ治っていないし。」

「だから陛下は、渋っておいでなんだけど・・・・・このままでは、陛下のお立場が悪くなるわ。」

3姉妹の話を柱の陰で聞いている者がいた。

「ねえさん、陛下のお立場より、民衆の心痛のほうが問題よ。そうでしょ?

ユーリ様がずっとお姿を見せないことで、みんなイシュタル様になにかあったのではないかと心配しているわ。」

「そうね。ユーリ様の人気は、絶大ですものね。今回の神事にお姿がなかったらどんな騒ぎになるかしら」

3姉妹はため息をつく。

「このことは、ユーリ様のお耳には入れてはいけないのよ。わかっているわね。」

「ええ、ねえさん」

「わかっているわ、ねえさん」

見つからないようにそっと部屋に戻る。

あの人はわたしに知らせないようにしている?

わたしになにも知らせず、すべてを自分で背負う気でいる?

元老院の非難も、民衆の失望も・・・・・・

あれからわたしは、ずっと部屋に閉じこもっていた。

身体の傷はもうほとんど直っている。

毎日眺めていたのは、ただ一枚だけ切り裂かなかった、いや切り裂けなかった花嫁衣装。

食事を運んで来たハディに声をかける。

「イル・バーニに来てもらいたいんだけど」

「ユーリ様お呼びでしょうか」

「陛下には内緒にしておいて欲しいのだけど、今度の神事に出席しようと思うの。準備をお願いできるかしら?」

イル・バーニは驚いた。いきなりこんなことを言われるとは。

何を考えておられる?

自分を見つめるユーリの瞳は皇妃の瞳だ。なにかを決心なさったのだろう。

「かしこまりました。では、そのように手配いたしましょう」

「イシュタル様、どうか皇妃陛下のご登場を!!」

(民衆を無視は出来ない。私も皆もユーリを知っている。だが、ユーリは知らぬ。そんなユーリに出席しろとは余りに残酷だ。)

「へ、陛下。これでは収拾かつきませぬ。どうかイシュタル様を・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「陛下!!」

『イシュタル様だ!!!』

「ユーリ・・・」

そこには記憶を失っているとは思えない、以前と変わらぬ輝きに満ちた漆黒の瞳があった。

第20話   めぐりめぐって            作 玉響さん   

ユーリは静かに前に進みカイルの横に並んだ。

言葉を発する訳でもなく、花の様な笑顔をして、国民に手をふった。

「わぁぁぁぁ!イシュタル様だ~~!!」

国民は沸き立った。

「ユーリ、お前大丈夫なのか?」

カイルは心配げにユーリを見る。

そしてカイルは理解した。

ここにいるのはユーリなのだと。

記憶を失っていてもユーリは自分のすべきことを理解し、皇妃として政治を行ってきた時の様にユーリの心情は、常に国民を思い、国を思っていたのだ、と・・・

それがたとえ、意識下の事であっても・・・・・

「カイル・・・私は皇妃だったのね・・・?」

それは疑問ではなく、確認だった。

「私は記憶を失っていて、色々迷惑をかけるわ・・・

それでもいいなら私は今できることを精一杯やる!」

「ユーリ・・・」

カイルは小さな子供はだくように、優しくユーリをだきしめた

・・・次の瞬間!ぐら・・・ユーリが気をうしなってカイルの胸に倒れた・・・

第21話  なんとーーーーーーーーーーーー          作 ナイルの姫さん

目覚めた時  ・・・・

ユーリは記憶を取り戻していた。

「カイル・・・」

「ユーリ・・・・よかった。気づいたか・・・」

「愛してる。」

「ユーリ・・・?もしや・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・記憶が・・・もどったのか・・・?」

第22話  私をゆるして         作 吹夜さん

「ごめんなさい、カイル・・・・。」

ユーリは、起き上がりながら一筋の涙を流した。

その涙を見たそこにいた。

誰もが驚いた。

カイルは、言葉を出すの忘れるぐらいに見つめてしまったのだ。

ユーリの涙を流すその姿は、女神そのものだったのだ。

「ごめんね・・・・みんな。私、皆のことカイルに対してもひどいことしていたよね・・・・。」

ユーリは、何度も何度も謝った。

そんな、ユーリの姿をみてカイルは「私こそすまない・・・・。

おまえに対して、どんなに謝っても許されない事をした。

自分の感情を抑えられず、お前の心に深い傷をつけてしまった。」

それを聞いたユーリは『私は・・・どれだけこの人を傷つつけてしまったのだろう。

いいえ、カイルだけでわない。

ハディ、リュイ、シャラ、キックリ、イルパーニ、ルサファー、カッシュ、ミッタナワンナ、そして・・・私が産んだあの愛しい子』

「いいえ、私がいけないの。皆をカイルを、たくさん傷つけ悲しませた・・・・。

これじゃあ、カイルの奥さんとしてこの国の王妃として最低だよね。」

ユーリは、ベットから起き上がり窓から月を見つめていた。

その姿は、誰もが見てもはかなくみえそして、もっとも女神らしく見え今にも消えてしまうのではないかと想えた。