第1話 100万回のキスをしよう!12

 *

-From 1-

アメリカでホテルの買収を争っていたライバル会社。

それが今回の黒幕だった。

2カ月ほど前そいつの会社、槇崎インターナショナルと道明寺ホールディングの二社で争っているとアメリカ支社から連絡を受けていたことを思い出す。

「買収予定のホテルの女性オーナーが坊ちゃんのご結婚にいたく感動された様で、道明寺ホールディングの方に優位に動いてることに焦った相手側がスキャンダルを画策したと思われます」

「俺のところがそれだけで優位に立ったと思われたら心外だな」

馬鹿らしいと鼻で笑う。

婚約発表の後は純粋に愛を貫いたとか、世紀のシンデレラストーリーとか結構な脚色付けられて世界に発信されたニュース。

お祝いムードで道明寺の株価も上がって会社経営にも思わぬ利益をもたらしていたことも否定はしない。

予想外の反応に計略結婚以上の成果とばばぁも喜んでいた節がある。

そこに不倫騒動!結婚破局!なんてニュースが飛び出せば、少なからずの影響を及ぼすことは容易に予測できる。

噂はたいした広まりも見せず収まったからいい様なものだ。

が・・・

会社の損害なんてたかがしれている。

それよりつくしを傷つけられる方が俺にとっては痛手だ。

だからって・・・

普通やらねぇーだろう。

それも結婚してまだ1カ月。

世間じゃ蜜月とかなんとか言うんじゃなかったけ?

姑息な手を考えつきやがってーーーーーッ

どれだけ俺が焦ったと思ってんだ。

やってもいない浮気を突きつけられて、つくしに睨まれ頭を下げた。

まあ・・・

滅多に妬かないつくしからヤキモチつかれたのは悪い気はしなかったと思い出して頬が緩みそうになった。

俺の気持ちの変化を察したように西田が「コホン」と一つ咳払いをする。

CDの中身は社長の写真、交友関係、会社の経営状況、取引相手、柏木零との関係までバッチリ調べ上げられていた。

「槇崎の会社は芸能プロダクションまで経営してたのか?」

「表向きは別な会社になっていますが、槇崎が資本を出資しているようです」

「自分のとこのタレント使って不倫騒動でっちあげるつもりだったのか?」

「柏木零にとっては相手が道明寺司ならマイナスにはならないと考えたのでしょう」

知名度は上がりますからねと西田がつけ足した。

「まずはホテルの買収を急がせろ」

「このプロダクションと槇崎の関係がばれればヤバイことでもあるのか?」

「そこそこの打撃は与えられるかと・・・」

「ばらして、つぶせ」

容赦なしでやれと冷酷な気持ちで部屋を出ていく西田を見送る。

椅子に深く腰かけ深くため息をつく。

後は西田に任せればいい。

柏木零の名前も世間から忘れられていくに違いない。

「西田さん帰ったようだけど・・・仕事終わり?」

遠慮がちな表情でつくしが部屋にゆっくり足を踏み入れる。

「ああ、終わった」

俺の返事にホッとしたようにほほ笑んで机の側に足を進める。

「終わるの早くない?」

「野暮なことするつもりはないってさ」

「野暮って?西田さん?」

「ああ」

「西田さんがそう言ったの?」

「真面目な顔して言ったぞ」

「ウソッー」

ゲラゲラとつくしが笑い声を上げる。

「つくし、こっち」

つくしに俺の膝の上に座る様に身ぶりで示す。

「ヤダ」

「拒否なし」

照れくさそうに抵抗をみせるつくしの腕をとり強引に引き寄せる。

抵抗なんて言葉だけでいとも簡単に俺の膝の上に座りこむ。

「逃げんなよ」

やさしく囁いて抱きしめる。

クスッと照れるように笑ってつくしの腕がすべてを預けるように俺の首を絡め取る。

・・・オレのものだ・・・。

今更ながら強烈な独占欲が心を占めて鼓動の数を増やしていく。

待ちきれないようにつくしの愛らしい口元を塞いだ。

やさしく・・

甘く・・・

深く・・・

愛しむように・・・

そして・・・絡め取る。

 

-From 2-

「仕事が残ってるの道明寺だけじゃないんだよね・・・」

夕食を済ませた後せかされる様に道明寺の部屋に連れていかれる。

「私の場合レポートみたいなもんだけど・・・」

「来週までに提出だから・・・ね・・・」

恨めしそうな目で睨まれた。

「徹夜するつもりじゃねぇだろうな?」

「俺を近づけないなんて言い出すなよ」

レポートやってもやらなくても眠らせてくれない原因はほかにもあるとため息が出る。

「ここでやれ」と強引に椅子に座らせられる。

必要なもの取ってくるからと慌てて立ち上がり部屋を出た。

「邪魔したら研修所に帰るからね」と念を押す。

「ガキじゃねぇ」と返された。

前期修習が終われば実務修習が待っている。

することがいっぱいで全部の時間を学習にあてたいのが本音なんだけど。

気がつくとまたため息をついていた。

ため息の原因は大人しくベットに一人寝転んで雑誌をパラパラとめくっている。

ときときチラチラと視線を投げかけられるが神妙にしている感じにおかしさがこみ上げた。

「なにをやってるんだ?」

珍しく道明寺が興味を示す。

数十分の経過でもう暇を持て余したらしい。

「仕事は残ってないの?」

「必要以上の仕事はしている」お前といる時までやらされてたまるかと顔をしかめられた。

「今ね・・・民事裁判の修習なんだ」

「来月から裁判所での実務修習になるからね」

「夫の浮気が原因で離婚した妻の慰謝料問題」

「浮気をしたら3000万払ってやると契約書を書いている夫からその慰謝料はとれるのか?という議案」

「払ってやればいいじゃん」

「そんな簡単に行かないから裁判になるんじゃない」

「道明寺からだったら3億でも300億でも取れそうだもんね」

クスッと笑ってほほ笑んでみる。

「俺が慰謝料払うわけねぇだろう」

慌てた様子でベットの上に道明寺が飛び起きる。

「お前と別れるつもりはない」

「えっ?」

「俺がいつお前と別れるって言った?」

「・・・言ってないけど・・・」

思わずキョトンと首をかしげていた。

「縁起の悪い話をするな」

縁起が悪って・・・

どこから二人の別れ話に発展してるんだ?

こんな発想でよく仕事が務まるもんだ。

それも一応はこの国のトップクラスの経営者のはずなのに、大丈夫か道明寺財閥。

ゲラゲラ笑いがこみ上げる。

「笑うな!」

不機嫌そうに道明寺がふくれてる。

「だって・・・どこから私たちの離婚の話しになるのか訳が解かんないんだもん」

笑いが止まらなくなってどうしようもなくなった。

「だから・・・笑うなって」

しびれを切らした様に道明寺に抱きすくめられた。

「邪魔しないって約束だよ」

腕を離してと絡められた両手に手を添える。

「笑った罰」

甘えた様に・・・ねだられた。

もう少し・・・こうしていたい・・・て・・・

それだけで済むのかが最大の難点のはずなのに・・・

その腕をふりほどけない。

強引に迫られれば殴って部屋を飛びだして怒ったふりなんて簡単にできる。

うまく甘えて、からめ手で迫られて逃れるすべを忘れてしまう。

無下になんてできなくて・・・

受け入れて・・・

ほほ笑んで・・・

抱きしめる・・・

「明日は邪魔しないでよ」

私の言葉にこれ以上の幸せはないと道明寺に抱きしめられた。

つづきは 100万回のキスをしよう!13 

仕返しは西田さんに任せてと言う事にしてさらっと流し過ぎたかな?

あまり深く書くと違う話になりそうなので止めました(^_^;)

やはりつかつくは甘アマが信条なので♪

書いていてもこっちの方が楽しくて・・・

このまま行くと歯止めが効かなくなりそうで~

見てる方も甘アマが楽しみと思われる方はプッチと拍手お願いします♪