第10話 Must be you will love me 6
*-From 1-
気がつけば朝。
横には道明寺・・・
・・・って
わーーーッ!
なんだ?
道明寺の腕の中からあわてて身体を引き離し飛びのいて慄く。
どうしようもなく焦っている。
別に道明寺なんだから・・・
焦る必要はないはずなんて心の余裕はどこにもない。
熱が出て・・・
家に誰もいなくて・・・
道明寺の屋敷に無理やり連れてこられた。
寝かせられてるのが道明寺の部屋で、道明寺のベットの上には私と道明寺。
いくら私と道明寺の関係とは言え一応の動揺はするだろう。
熱が下がって気がついたら胸がはだけてた。
原因は道明寺。
彼氏じゃなかったら大問題だ。
彼氏でも問題がない訳じゃない。
その後キスされた。
後は・・・
最後まではしないとかなんとか言われた様な言われなかった様なあやふやな記憶。
どこまでやった?
やられた?なんて聞きだす勇気は海の底に沈んでしまっている。
寝汗もかいてる様でじっとり湿った肌の感触は不快な感じを作り出す。
この汗って・・・
熱のせい?それとも道明寺?
そんなことを考え出している頭をブルッと振るった。
まあ・・・
服は着ているし・・・
裸じゃないだけ大丈夫なのかな?
都合のいい事だけ拾ってつなぎ合わせてみる。
「う~ん」と、寝返りうった道明寺の長い睫毛が微かに動く。
「熱下がったか?」
伸びた片腕が私の頭を包んで引き寄せる。
「ヒーッ」っと一瞬怯む私って・・・
道明寺に警戒しすぎていないか?
コツンと重なるおでこで熱がないのを確かめられた。
「大丈夫そうだな」
俺のおかげだなって満足そうにほほ笑んでみせる道明寺。
なにもしてもらった記憶はないのだが・・・
どちらかと言うと病気が悪くなりそうな事されてなかったか?
看病していた人が病人と一緒に寝てること自体が問題だと思うのだけど。
「人にうつすとよくなるって本当だな、俺、ダメみたいだわ」
私の膝の上に顔をうずめるように倒れ込んできた道明寺の身体は湯たんぽ状態になっていた。
「ちょ・・ちょ・・と、大丈夫」
「あんなことするからうつるんだよ」
心配になって道明寺の顔を覗き込む。
「今度はお前が看病なっ」
帰るなと言ってきついはずの表情で口元だけがかすかに緩む。
「私がいないとさびいしいとか?」
「そうだ・・・悪い・・か・・・」
やけに素直に応えられて私の方が照れくさくなってきた。
「バカなんだから・・・」
口では強がってみてもそれがどうしようもなくうれしくてしょうがない。
「仕方ないから、看病してあげる」
普段は誰も寄せ付けない雰囲気を作ってる道明寺。
それが強がりだって知っている。
そして・・・
人一倍甘えん坊なとこ私だけには見せるんだ。
だから・・・
たまらなく愛しさが増す。
「寝込みを襲うなよ」
誰が襲うかーーーッ。
思わず道明寺の頭を膝から投げ落としてた。
-From 2-
「・・・あのう・・・道明寺に風邪をうつしたみたいで・・・」
朝、様子を見に来たタマ先輩に状況を説明。
なんだかとても恥ずかしい。
「いったい、なにをしてたんだか」
「私は、なにもしてませんから」
動揺したまま大きく手を振りジェスチャーだけが大げさになる。
「そんなことは分かってるよ」
「ぼっちゃんには悪戯するなと言っといたんだがね」
ため息交じりの割にはニンマリとほほ笑んでいるタマ先輩。
それって・・・
道明寺に知恵付けて、そそのかしているようなものじゃないのか?
「タマ先輩ひどいですよ」
「おや、私はしっかり看病するように言っただけだけどね」
私の意図を見きったようなしたり顔で返されるのはやっぱり年の功?
「つくしは元気になったんだからいいだろう。ぼっちゃんの世話は頼んだよ」
「2,3日泊まり込む覚悟でね」
覚悟って・・・
必要なのか?
言い残して部屋を出るタマ先輩の背中が完全に笑っていた。
看病するには大きすぎるキングサイズのベット。
中央で息の荒い道明寺の様子を見るにはベットの上に上がりこまないと無理だ。
道明寺はさすがに熱でうなって苦しそうだ。
噴き出る顔の汗をそっとタオルで拭う。
「・・・水」
「えっ・・・待って」
ミネラルウォーターを準備して道明寺の側に戻る。
「飲める?」
頭を持ち上げた私の腕の中で道明寺がうつろな感じで目を開けた。
「飲めねェ・・・」
「えっ?」
「口移しがいい」
本気かぁーーーーッ
「飲めないわけないでしょう」
「ヤダ・・・」
「俺・・・病人」
「お前のが原因の風邪だし・・・」
お前からうつされたら本望ってキスしてきたのはそっちじゃなかったか?
私はダメだって拒否したはずだぞ。
そこがすっかりぬけ落ちてないか?
いつもの自己中心的考察だ。
「苦しい・・・死にそう・・・」って、大げさだーーーッ。
完全に甘えてる。
図体だけでかい一人前のガキがそこにいた。
甘えられて・・・
すねられて・・・
最後に脅しを忘れない。
相当きついはずなのにそんなとこだけしっかり要求を通そうとするのは本能か?
ボトルから一口、ミネラルウォーターを口に含んだ。
近づく道明寺の口元。
寸前で躊躇して距離が止まる。
道明寺の腕が動いて唇が塞がれた。
ゴクリと喉が上下してミネラルウォーターが道明寺に移動した。
「うまい」
道明寺が満足そうにほほ笑んだ。
もう二度とやんないからーーーッ。
-From 3-
やっと静かになった。
この人使いの荒いわがまま男。
口移しの水分補給を要求され躊躇したら自分から私の口に食いついてきた。
凶暴さ増長してないか?
熱の所為だとすべて押し通すつもりの道明寺は始末が悪い。
息切れしそうだ。
水飲ませた後は、膝枕がいいだの、もっとやさしく頭なでてくれって必要あるのか?
しょうがないからクルクル天パーの中へ指を突込んで髪の毛まきつけて遊んでみた。
「気持ちいい」って・・・
遊んでいるだけなんだけど・・・私。
満足そうにほほ笑んで安心しきって寝入ってしまった。
全くしょうがない。
指先から愛しさがこぼれ出す。
紡ぐように頭をそっとなでていた。
睫毛長いな・・・
スーッと伸びた鼻筋。
さっきまで甘え切った要求しかしてこなかった唇はキリッとしまっている。
見ていて飽きなかった。
寝てればかわいいのだけれども。
・・・・って・・・
母性本能を抱いていないか?
これじゃまた道明寺のわがままをすぐに受け入れてしまいそうだ。
ヤバイ気がした。
夕方近く熱も下がり目覚めた道明寺。
言われた通り膝枕していた私は完全に足腰がしびれてた。
どうしてこうも素直に対応しているのだろう。
ただ何となく離れたくなかった。
側にいたいと思う気持ちは愛情、純愛、溺愛ぎみ。
「別な事で足腰立たなくしてやりたい」って・・・
熱が下がった途端、なにを想像してるんだ道明寺ッ!
「体力温存しとかないとダメでしょう」
「体力温存できればいいのか?」
悪戯っぽい表情で道明寺が見つめてる。
な・・なに?
「なにする気?」
ドギマギしてしまってた。
「だから・・・体力温存」
「体力温存?」
体力温存と言う割には迫られているんですけど・・・
「ゆっくりと・・・」
「ね・・・寝たいの? わ・・私が邪魔なら一人にしようか?」
呂律がおかしくなって動揺丸出しになっている。
「寝るんだったら一人より二人がいい」
逃げたいのに逃げ出せないのは足がまだしびれているせい。
「大人しく寝るだけならいいけど・・・」
つかまれた腕を振りほどきながら表情が強張ってきた。
「それならいい方法がある」
ん?
そんな方法が本当にあるの?
そうならそうと早く言ってくれ。
余計な心配してしまっていたではないか。
「俺は大人しくしてるから、お前が俺が喜ぶ事してくれると言うのはどうだ?」
返事の代わりに思いっきり道明寺の横っ面に枕を叩きつけていた。
熱が下がったその後は♪
どうなる?どうしましょう?
つくしファイト!