第1話 100万回のキスをしよう!20

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-From 1-

有頂天気味。

羽目外しぎみ。

顔をほころばしているのはどこから見ても年相応の若者であどけない。

こんな道明寺を見たのは初めてだった。

会社のトップとしての重圧。

人を寄せ付けないい毅然とした態度。

必死で虚勢張ってる緊張感。

道明寺司の殻をすべてを取り外したらすべての人を魅了するやさしい笑顔がそこにあった。

「今日は会社のトップじゃなくて、つくしちゃんの旦那様全開と言う感じだね」

岬所長は何もかも理解していると言った感じに目を細める。

「小さい頃から司君知っていたからね」

「わがままで傲慢でそれでいて時々さびしそうな孤独な目をする子だったの」

「こんなにかわるとは思わなかった」

「そんなに変わりましたか?」

遠慮がちに言葉を交わす。

今でも俺様気質は根本的だ。

「相変わらずわがままですけど・・・」

「以前ならこんなに他人と交わらないもの、愛は偉大ね」と岬所長はますます目を細める。

「なにしゃべってるんだ」

「俺をほっとく気か」

強気に攻める割にはやさしい目が注ぎ込まれていた。

「誉めていたのよ。司君いい子を見つけたなって」

「見る目あるじゃない」

うれしそうな表情をつくって「そうでしょう」って・・・

謙遜といいものはないのかーーーーッ。

ある訳ないよな道明寺。

私の方が恥ずかしくなってくる。

「確かに・・・根本は変わってなさそうね」

「ですよね」

岬所長とクスクスと口元が自然にほころびだす。

「笑うとこあったか?」

キョトンとして真顔になった道明寺がおかしくてますます笑い声が大きくなった。

「代表、飲みますよ~」

甲斐さんはすでに半分出来あがって道明寺に酒を進めている。

「大丈夫ですか?」

「二度とこんな機会ないかもしれないし、やる事やらなきゃもったいない」

やる事って・・・

なにがある?

私が考えている間に甲斐さんは道明寺と肩組んで携帯で写真を撮って喜んでいる。

今度は3人でって・・・

ドンドン人が増えていってみんなで撮影会状態だ。

みんなノリが良すぎだッ。

「今度は仲良く二人でチューなんてどうです」

携帯を片手に満面の笑みで催促された。

まんざらでもない様子の道明寺にギョッとなった。

こんなとこで本気か?

いやだ!

恥ずかしさ極まりない。

肩を抱こうとする道明寺から思わず顔をそむける。

悪乗りしすぎだぁーーーーッ。

-From 2-

半ベソ状態。

涙の溜まった大きな目で睨まれた。

泣くほどの事か?

いつもやってる事だろう。

人目を気にしないでキスすることの方が少ないはずだ。

いつもSPが側にいるし・・・

二人っきりになれるのってベットの中だけ。

無理やり抱きつくのも、嫌がるお前にキスするのも、お前は俺のものだと確かめるため。

恥ずかしがって顔をそむけるお前にそそられるって言ったらますます抵抗するだろうなと思いながらもニンマリしてしまう。

言っとくが間違っても俺はSMには興味はない。

「そんなに嫌がることか?」

「ヤダ、絶対ヤダ」

恨めしそうな瞳で見つめられてネコみたいに毛を逆立てている。

このまま進めたら顔まで掻きむしられかねない。

しょうがない。

ここでへそ曲げられたらあとあとまで引きづりそうだ。

帰りの車の中で無視されて・・・

部屋も別々・・・

ベットから追い出されたらかなわない。

本気で怒らせるよりここは大人しく引き下がった方が身のためか。

でも・・・

怒らせてぇーーーっ。

ふくれっ面も好きなんだ。

俺に不機嫌な顔を素直に見せるのはつくしだけだ。

バカとか・・・

わがままとか・・・

自己中とか・・・

傲慢なんて俺の悪口並べて身体をすりよせて甘えてくるやつはどこを探してもこいつ以外いやしない。

他の奴なら許す訳ないけどな。

腕の力は緩めたが軽めに触れ合う身体の感触だけを楽しむ。

今はこれくらいがちょうどいい。

あまり接触しすぎるとベットまで待てなくなりそうだ。

こいつが恥ずかしがるからこれくらいで勘弁と頬をすり寄せた。

それもヤダと両手でつくしに頬を押しやられる。

俺のメンツはどこに行く?

「照れちゃってかわいい」

女性陣のつくしに対する好印象はUp気味。

「続きは二人っきりでやってください」

煽った奴に呆れられてしまっていた。

甲斐!

言いだしたのはお前じゃねぇか。

調子に乗った俺が悪いのか・・・

悪乗りさせた甲斐が悪いのか・・・

みんなゲラゲラ笑っていやがる。

嫌みなく・・・

心が触れ合って・・・

程よく、やさしい空間。

こんな仲間の中でならつくしを安心して預けられる。

つくしの無邪気な笑顔を見つめてそう思った。

-From 3-

2時間程度の歓迎会は無難に終焉を迎える。

いったい誰の歓迎会だったのか・・・

主役はどう考えても道明寺だった。

店の前で機嫌よく握手を交わして別れを告げる道明寺はくったくなく笑っていた。

そこにはいつも毅然として壁を作っている道明寺司のイメージは全く崩壊してた。

それをやけにうれしそうな表情で岬所長が眺めているのは印象的だ。

「明日から仕事頑張ろう」

「おーッ!」

所長の声に拳を空に付きあげてそれぞれに叫んでいる。

私もワンテンポ遅れて拳を作った。

釣られる様に道明寺も「おーッ」って遠慮がちに叫ぶ姿におかしさがこみ上げた。

「なに笑っている?」

「最初から最後までのせられていない?」

「バカ、お前の為に我慢してやってるんだ」

不機嫌そうに言いながら口元は緩んでいる。

「所長!明日は週末!休みですよ」

甲斐さんの慌てた口調に皆が笑い声を上げながらそれぞれに別れたのだった。

帰りの車の中二人並んで後部席に身体を預ける。

心地よい酔いが身体を包む。

たいして私はお酒を飲んでいない。

道明寺の側に座って気が気じゃない不安でずっと見なれた精悍な横顔を見つめていたから。

時々くにゅっと頬を緩めるあいつの表情に体中が熱くなって心音が駆け巡っていた。

そんな気を緩めて大丈夫なのかの心配が半分。

それなりの気遣いを見せうる道明寺にうれしさが半分。

割合のバロメーターをぐらぐらさせながら酔える訳がない。

車に乗り込んでホッと気が緩んだ瞬間にアルコールが全身を包む感覚に襲われた。

「今日はありがとう」

コツンと道明寺の肩に頭を乗せた。

気軽に食事して、バカげた軽いノリでお酒を飲んで話を合わせて相槌を打つ。

普段気軽に出来ることも道明寺にとっては初めての体験だったろう。

いつもは接待受けてちやほやされるのが当たり前の立場の人だから。

私の為に・・・

私だから・・・

大切な時間を割いて付き会ってくれている。

それがどれだけ慣れないことなのか分かっているからなおさらだ。

照れたように・・・

表情を崩して・・・

くったくなく笑って・・・

そしてやさしく愛しそうに見つめ身体がそっと触れ合う。

それがどんなに贅沢で幸せな時間なのか・・・

距離が近すぎてすっかり忘れてしまっていた。

会えない時間・・・

少しの隙間にふとあふれ出す愛しい想い。

会える時間・・・

触れ合う体温に・・・

紡ぎあう言葉に・・・

心をいやされる。

二人で時間を積み重ねていく幸せ。

他にはなにもいらない。

「うれしかった」

素直に心の底からそう思う。

「道明寺と結婚できて幸せかも・・・」

「今頃気づくな」

「それに・・・かもは余計だ」

肩に置いた私の頭を道明寺の手のひらがやさしく包み込んでいた。

続きは 100万回のキスをしよう!21 で

このお話どこまでいくのでしょう。

予定ではつくしの弁護士の資格をとるまでと思っていましたが・・・

もう就職状態に近い感じで書いてしまっているし・・・

ものがたり最初と比べると場面展開しているし・・・

終わりが見えません。

楽しんでますと応援してもらえるとありがたいのですが(^_^;)

拍手コメントありがとうございます。

まるりん様

このお話を大好きと言ってもらってうれしい限り。

ずっと続いて欲しいと言ってもらえて感激です。

あやの様

はじめまして。

ランキングからのご訪問ありがとうございます。

このお話気にいっていただけてとてもうれしく思います。

更新が楽しみと言っていただけるよう頑張って続けていきたいと思います。

のだめ 様

結婚して落ち着くと司もレアな対応ができるように!

大人の対応を司にさせたくなるんですよね。

以前の司じゃ無理ですけど(^_^;)

たくさんの応援拍手ありがとうございます。