第2話 抱きしめあえる夜だから 8
*-From 1-
1時間待った。
牧野の実家のテーブルに男3人。
俺の前には義父と義弟。
数分で話も尽きる。
変なにらみ合いに作り笑い。
笑いたくもないのにハハッと笑ってため息ついた。
2時間後・・・
我慢できずに携帯を手に取る。
最初から連絡取ればよかったんだ。
それを思いつかないお間抜けぶり。
「もしもし」の声に怒鳴るように返してた。
会えるはずのあいつに会えない不満をぶつけてる。
俺が帰ってくるとは思ってないつくしに何の責任がある訳でない。
それなのに不機嫌をまんまぶつけるの止めようがなくなってる。
「どうしたの?そっち夜中でしょう?」
俺の怒りの意味が解からず戸惑っている様子が解かる。
「俺も今は日本時間だ」
「えっ?」
「帰ってきた」
「?」
「だからッ、今お前の実家に居るんだ」
「えーーーーーッ」
悲鳴じみた声が聞こえて携帯が切れた。
それから30分後・・・
携帯が切れてから玄関先でうろついていた。
「バン」と開く玄関のドア。
息を切らせてつくしが帰ってきた。
後ろには荷物持ちに徹してるSP。
「遅かったな」
「これでも急いで帰って来たんだからッ」
とぎれとぎれの苦しそうな息。
「そんなに慌てなくてもよかったのに」
待ちわびた気持ちを押し隠したのは俺の見栄。
後ろでゲラゲラ笑う進を睨みつける。
「道明寺がすごい剣幕だったらでしょう!」
「会いたかったからって言えねぇーのかよッ」
すねたように言っていた。
自分で会いたかったと暴露してる様なもの。
じっと無言で見つめ合って心の中でささやいている。
抱きしめたいと・・・。
「玄関先でラブシーン見せつけないでよ」
「早くどいてくれない」
母親にドンと押されたつくしがこけそうになって俺の腕をガシッとつかんだ。
「ママ危ないじゃない」
「抱きつきたそうに見えたから」
言ってることと反対の行動をとってつくしの母親が俺に笑みを向ける。
さすがに照れてつくしから手を離した。
「つくし、今日は帰るのか?」
居間の方から父親の声。
「どうする?」
思案気につくしが俺を見上げてた。
-From 2-
どうするって?聞かれても実際困った。
俺の本音は今すぐでも帰りたい。
つくしと二人っきりになれる場所。
だが・・・
この状況じゃ言えねぇーよな。
俺の魂胆ミエミエだもんなぁ。
べ・・・べつに夫婦なんだから問題ない!
それに新婚だし・・・
しばらく離れていたんだし・・・
会いたかったのは愛してる証拠だッ!
誰に向かっていい訳考えているんだか。
つくしがキョトンとなって俺を眺めてた。
「お前はどうしたい?」
大人の態度でやさししく言って本音を隠す。
・・・西田これはポイント高いだろうがッ。
側にいない西田に自慢する。
「もう一晩くらい泊まりたいんだけど・・・」
「はぁッ!」
やせ我慢はボロッと簡単に崩れ落ちた。
「お前!一人で俺を帰す気かぁ!」
「誰もそんなこと言ってないでしょう!」
つくしの言葉に50ポイントのボディダメージ。
俺の反撃でつくしの怒りに10ポイントの火がついた。
頭の中でロールプレイングの攻防が繰り広げられる。
帰らなくても構わない・・・
構わない・・・
構わない・・・
頭の中で繰り返す呪文。
言えるわけねぇーーーーーーッ。
回復できずに撃沈まじか。
体力メータが赤に変わって点滅してる。
「道明寺がよければ一緒に泊まらないかな・・・なんて思って・・・」
反撃が来ると思ったら思わぬ回復魔法をつくしにかけられた。
それならそうと早く言え。
遠まわしな言い方するから焦るじゃないか。
そんくらいの妥協なら俺も楽勝で出来るぞ。
「たまにはいいかもなぁ」
余裕を取り戻してつくしの肩を抱く。
「本当にいいの?」
「ああ」
つくしがうれしそうに俺に飛びついた。
俺とつくしは仲間になった。
そんなフレーズで結びつく。
ボスを倒すまであとどのくらい?
・・・・・じゃなかった。
仲良くなるまで1日の辛抱。
はれてハッピーエンドでゲームが終わるじゃねーか。
つくしの家族の笑いの輪の中へ二人仲好く迎え入れられていった。
続きは 抱きしめあえる夜だから 9 で
今回ち**様のコメントをとりいれてRPゲーム感覚で文章を書いてみました。
ドラクエを昔はよくやってたな・・・。