第13話 愛してると言わせたい 1

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-From1 -

突然の道明寺からの呼び出し。

それはいつもの事で、私の予定なんてこの頃お構いなしだ。

今日も大学の下校間際を図ったように見なれた道明寺から差し向けられた高級車。

最近は携帯への連絡なしに強引に待ち伏せされてる感じでほとんど諦めている。

「バイトもせずに俺の都合に合わせろ」

そう言われたのが1か月前。

それに素直に従ったのも滅多に会えなくなった淋しさから。

F4が大学を卒業して私も大学最終の年を迎えた。

花沢類だけはまだすることないからと大学院に籍を置いている。

「あいつはまだ牧野の側にいたいんだ」

必要以上に側によるな!と不機嫌そうに道明寺は花沢類に食ってかかった。

「俺も総二郎も家業を継いでるようなもんだから」

「牧野の世話はしっかり頼む」

西門さんと美作さんは道明寺をからかう様に花沢類に声援を送ってた。

「俺も大学に残る!」

言いだした道明寺は大体の予定通りの反応と西門さんと美作さんはうれしそう。

「仕事に打ちこめるようにならなければつくし様との結婚も遠のくかと・・・」

そう言って道明寺を断念させたのは西田さんだ。

来年私が卒業したらすぐに結婚するとやたら仕事を張り切ってると西田さんは満足そうな表情を見せる。

その辺がまだ私には微妙なんだけど。

道明寺との結婚・・・

未だに実感がわいてこない。

やたら花嫁修業はさせられて、一生懸命私なりに頑張ってはいる。

それでも現在の一番の私の目標は在学中に司法試験に合格すること!

その試験もなんとか終わって後は結果を待つだけ。

卒業前に試験に受かるなんて数パーセントの狭き門なのだよ。

その辺は道明寺は分かってくれていたようで試験に打ちこむ私の為に会えなくても愚痴の一つもこぼさずに

付き合ってくれていた。

勉強が道明寺の部屋というのが微妙だったけど。

司法試験が終わってようやく私も落ち着いてきた。

勉強に時間を割いた分、道明寺には我慢させたはず。

「司が我慢するなんて、牧野の為以外にはありえないだろうね」

花沢類はそう言ってクスッと笑っていたっけ。

それって聞いて結構照れくさかったんだよね。

今度は私が道明寺のわがままに付き合ってあげようと強引な呼び出しも苦にならないのが本音だ。

「坊ちゃんは屋敷でお待ちです」

告げられて会いたい気持ちがあふれ出す。

3日ぶりだね、会えるの。

話すことはいっぱいあるのに会うとすべてを忘れてしまう。

一緒にいて会える時間がただうれしくて幸せで心地いい。

高まる鼓動を押さえるようにシートに身体を預けて目をつぶった。

「ワァーアーーーッ」

聞いたこともない様な運転手の里井さんの叫び声にハッと目を見開きシートに沈んでいた身体を起こす。

ドーンという大音響とともに身体に強く感じる衝撃。

身体を揺さぶられて前にのめり込む感覚。

そこから・・・

       ・・・・・記憶がなくなった。

 

-From2 -

こんなに焦ったのは久しぶりだ。

牧野を乗せた車がトラックと衝突して病院に運ばれたと西田から聞かされた。

どこをどうやって病院まで行ったのか覚えていないほど動転してた。

「命には別条ないようです」

西田が言った言葉も牧野を見るまでは安心できず信用できない感覚。

情けないと思いつつも手の震えが止まらなかった。

「牧野!」

案内されて飛び込んだ病室。

ベットに座って夕食のご飯の食べている牧野。

気が抜けた。

「お前、丈夫じゃねぇか。心配させやがって」

「左手の骨折と少しの打撲程度で済みました」

心配掛けてすみませんと牧野のおふくろさんが頭を下げる。

「ちょっと出てきます」

気を利かせたおふくろさんは俺たち二人を病室に残して出て行った。

さっきからじっと俺を見つめたまま一言も発しない牧野。

「俺があんまりいい男だから見とれて言葉忘れたか?それとも頭打ったか?」

「冗談」

「へっ?」

「なんであんたがここにいるのよ」

迷惑そうな表情で口をとがらせる。

俺たち喧嘩してたか?

無理やり屋敷につれてくるように里井を迎えに行かせたのを怒ってる?

心配して駆け付けた彼氏にそんな態度ありかよッ!

「トントン」

病室に響くノックの音。

ドアを開けて入ってきたのは類。

「事故のこと聞いてびっくりしたよ。大丈夫なの?」

「元気そうで安心した」

牧野にほほ笑む類。

「貧乏牧野の体はトラックより丈夫ならしい」

「司・・・なんか機嫌悪くない?」

「なんでもね・・・ぇ」

類を見て頬を赤らめて恥ずかしそうにうつむく態度。

それって俺に見せる態度じゃねぇのかよ。

言葉を失った。

「・・・お前、類と何かあったのか?」

「な・・・な・・なんもあるわけないじゃない」

どもって顔を赤らめて焦って挙動不審気味に落ち着かない牧野。

「類!てめぇ!牧野に何かしたか!」

類の襟元をつかんで締め上げる。

「やめて!」

病室に響く牧野の大音響。

「あんたのその乱暴なとこ大っ嫌い!」

俺・・・

こいつの怒りのこもった瞳、見おぼえがある。

こいつの弁当足蹴にして殴られて宣戦布告された・・・

・・・遠い記憶。

いい思い出だ・・・って。

浸ってる場合じゃない!

事故の後遺症か?

じゃなきゃ大嫌いなんて言うわけねえよな?

何か変じゃないか?

不思議な違和感は類も感じた様で、二人で顔を見会わせる。

「牧野、大丈夫?」

類に声かけられて牧野がまた頬をポッと高揚させる。

いい加減にしろーーーッ!

続きは愛してると言わせたい2

 

花男セカンドその後のお話、第13段序章部分UPしてみました。

お話の更新は12話終了の後で(^_^;)

・・・と思っていたのですが・・・

拍手の数が昨日1番多くて気を良くしてUPしてみました。

本当に大変なんですよ。いくつもお話を同時に書くのは(^_^;)

頭の中はただいま5分割ぐらいになってます。