第13話 愛してると言わせたい 3

 *

-From 1 -

目の前には優紀が椅子に座って私をじーっと食い入るように見つめてた。

見ようによっては間抜けな顔で・・・。

「本当に高校生だと思っているわけ?」

信じられないような表情に変わった。

目の前にいる優紀は確かに少し線が細くなって化粧もうまくなっている。

私の記憶の中の優紀より少し大人びた感じがした。

「本当に高校も卒業して大学にも入学して成人式も済んでしまったの?」

これで何回目の確認内容か・・・。

優紀が見舞いに来てくれた途端にあふれだす質問事項。

年齢は?

今西暦何年?

本当に大学4年生?

優紀の言葉は私の5年の歳月を飛び越えて一気に未来へと連れ去った。

「信じられるわけない」

「確かに・・・」

私の言葉に同調するように優紀がうなづく。

「まさかあの派手な英徳の卒業プロムの記憶も一切なし?」

「プロムって・・・私は誰と踊ったの?」

「F4」

「F4・・・あの4人と!」

「それは目立つよね」

「目立ったのはそれだけじゃないけど・・・」

「なに?」

「道明寺さんがつくしにプロポーズして、つくしはプロポーズを受け入れたんだけど」

道明寺が言っていたことは嘘じゃないということ?

泡を吹いて倒れそうな気分。

「私たち本当に付き合ってたんだ」

消え入るような声でささやいた。

「つくしが思い出せば問題は解決するから」

優紀!それは慰めになってない!

どこをどう間違えて道明寺とそうなったのか考えてもわからない。

赤札貼られて学校のみんなにいじわるされた。

その発起人が道明寺のわけで・・・

傲慢!

わがまま!

横暴!

冷酷!

冷淡!

残酷!

もうほかにないか?

この状況でいったいどこに魅かれたのかわかるわけがない。

「道明寺にどこかいいとこあったのかな?」

「道明寺さん、つくしには優しくて一生懸命ですごく愛されていたと思うけど」

切実に語る優紀の言葉には嘘はなくて信用できる。

「そうなんだ」

答えた私の声は他人の事を聞いているようで明るい感情には程遠い。

私の思っている道明寺と優紀の語る道明寺にはすごいギャップがあってまるで別人のよう。

その隔たりを埋めるのはそう簡単でないと思えてしまう。

この状況を打破するのは並大抵では行かなそうだ。

考えてもどうにもならなくて・・・

どうしようもなくなって・・・

この事実を受け入れるには一人高校生のまま立ち止まってる私は幼くて・・・

無理だよーーーーッ。

「結婚のことは白紙に戻してもらう!」

優紀の前で力強く宣言してた。

 

-From 2 -

トントン

病室に響くノックの音。

その音で目覚める。

寝入ったのは明け方近く。

それでも眠れたのが不思議なくらいだった。

ドアが開いて病室に姿を現したのは道明寺。

「眠れたか?」

のんきな顔で聞いてきた。

誰が眠れるか!

どう見ても寝不足の顔を貼り付けてると思うのだけど。

道明寺がノックするの初めて見た気がした。

なんでそんな事を思うのか不思議な感覚。

「道明寺さん、つくしには優しくて一生懸命ですごく愛されていたと思うけど」

浮かんだのは昨日の優紀の言葉。

やっぱり信じられないよ~ッ。

「お前に頼みがある」

真剣な熱を帯びた瞳。

見た目は抜群だからキュッとくる。

こいつの本性を知らなければだけど。

なに・・・

まさか・・・

このまま付き合えとか、結婚しろとか言われたらヤダーーーーーッ

対抗するように「私も話がある」と言って布団を体に巻きつけて身構えた。

俺の頼みのほうが先だって相変わらずのわがままぶりだ。

道明寺が頼むという言葉を知っていること自体が意外な横柄な対応。

私の知ってる道明寺には頼むなんて言葉には一生縁がないだろうのわがままぶりだったから。

「私たちの関係以外だったら話を聞く」

声を上ずりながら防衛線を張る。

「心配すんな、そんな無茶振りはしないから」

クスッと笑った顔は優しくてこんな表情も出来るんだと意外性に驚く。

大学も卒業するとこんなに落ちついて見えるものなのだろうか。

確かに身体の線も一回り大きくなってるし少年さは微塵もなくて私の知っている道明寺とは微妙な違和感。

でもまだ好きにはなんないぞ。

「昨日事故にあったのはお前が俺の家に来る途中だ」

「俺が迎えにやった車で事故にあった」

「なんで私があんたの家に向かわないといけないの!」

「恋人同士だって言ったろう」

道明寺の言葉でまた墓穴を掘った気分で落ち込んだ。

「俺たちの話は今はいい」

苛立った強い音程に響きが代わり思わず背中がピンと伸びる。

この反応はいったい何なんだ?

まるで条件反射みたい。

これが忘れてる記憶の残像か。

「里井・・・まさか俺のことは忘れて里井のことを覚えてるってないよな?」

「里井なんて知るわけないでしょう!」

ほっとした表情を見せる道明寺がなぜか笑える。

「昨日お前を乗せてた車の運転手」

「事故のせいでお前より大怪我してるのに自分の不注意で事故に合わせてしまったと相当な落ち込みなんだ」

「原因は相手のトラックの居眠りなんだし、牧野も大した怪我じゃないっていてるんだけどお前に会って謝りたいって言ってきかない」

「お前が直接会って大丈夫だの声でもかければ里井も落ち着くかと思って頼みに来た」

「大丈夫だって言うだけでいいの?」

「ああ」

「それだけなら簡単だけど・・・」

「ただし条件がある」

「条件なんて出せる立場なの?」

まったく人に頼み事して条件出すなんてやっぱり俺様気質は健在だ。

「牧野が記憶をなくして俺とのこと忘れてるなんて知ったら里井がどれだけ自分を責めるか・・・」

ばれたら元気づけるどころは落ち込ませてしまうとやたら切実に訴える。

「条件って記憶がないことがその里井さんにばれないようにすること?」

「ああ」

それだけなら余計なこと言わなければばれる心配なんてないじゃない。

「わかった」

軽い気持ちのまんま返事する。

道明寺に案内されてその後ろを1歩下がって病院の廊下を歩く。

どこからか黄色い声が聞こえてきて騒がしい。

数メートル先のナースステーションのドアが開いて看護師さんも道明寺を見物中。

相変わらずの人気ぶり。

私にはどうでもいいけど・・・。

「道明寺が他人のこと気にかけるなんて珍しいね」

「里井は小さいころから俺をかわいがってくれたからな」

「タマと一緒で頭が上がらない」

タマって猫?

このすりすりしたい気分はなんなんだろう?

考え込んでしまってた。

「里井に見られたら変に思うだろう」

「えっ!なに!」

「俺たち恋人同士だから」

伸びてきた道明寺の腕に肩を抱かれる。

「これのくらいで我慢する」ってなんだぁぁぁぁぁ。

その時・・・

ようやく・・・

そのことに気がついた。

里井さんにばれないようにするって恋人同士のふりをしないといけないことだ。

早く腕をどけてくれーーーーー。

目の前は里井さんの病室で道明寺の腕を払いどけることもできず、しばらくの我慢と自分に言い聞かせ、

病室のドアを開けた。

続きは愛してると言わせたい4

これは・・司君にしたら上出来か?

いやいやますますつくしチャン警戒させる結果になったりしてね。

結局今日も書いています。

なんだか楽しくて♪

妄想がつぎつぎ浮かんできた書かないと忘れそうな状態で(^_^;)

どうしましょう~