第2話 抱きしめあえる夜だから 19

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-From 1-

「何キョロキョロしてんだ。落ち着きのねぇやつ」

個室で仕切られてレストランの一室。

どっかのお偉方さんがいないのにホッと胸をなでおろす。

時々気軽に道明寺とランチと思ったら知らないおっさんが数人ってことがあるんだもの。

「つくし様を見せびらかしたいようで」

なんて西田さんは軽く言うが会食に勝手に参加させられるのは本当に焦るんだからッ!

言ってみても「別に言ったからってお前はそのまんまでいいんだからそんなに変んねえだろ」と相変わらずの女ごころに疎い奴。

こんなときはいつもより食が進まない。

「奥さんに会えてよかった」との社交辞令ににんまりしてる道明寺は上機嫌だけど。

「いや~ランチならふたりがいいかなぁなんて思って・・・」

会食のいやな思いはごまかして苦し紛れに笑顔を作る。

「気が合うな」

子供みたいに笑う道明寺に「うん」と素直に相槌を打つ。

久しぶりに向かい合って食事をとる。

他愛ない会話にけらけら笑っいあって久しぶりにゆっくりと道明寺の声を楽しんでる。

こんな時間がいいんだよね。

プルッ

邪魔するように道明寺のスーツの内ポケットから携帯音が響く。

私から離れるようにテーブルの席を立って窓際に道明寺が移動した。

しばらくして聞こえる道明寺の「ありがとうございます」の声。

礼を言ってるということは仕事関係?

二人の時間もこれで終了。

大体目安の1時間は目の前で早いよなと残念な心うちを仕事が残ってると打ち消した。

「そろそろ帰らなきゃね」

携帯を切ってテーブルに歩み寄る道明寺にニコッと笑みを向ける。

「帰らない」

「えっ?」

「だって仕事の電話じゃないの?」

「おれのじゃない」

「はぁ?」

「さっきの相手は岬さん」

岬さんって・・・私の上司の岬所長?

「何した!」

立ち上がって思わず上げた大声。

「鼓膜が破れるぞ」

場合によったら鼓膜ぐらいじゃ済まないぞ!

わざとらしく耳を押さえる道明寺に詰め寄る。

「俺もお前も昼から休み」

「さっきの携帯でお前の休みも確保した」

確保したって私に相談もなしで!?

何考えてるんだぁ。

サプライズってにんまりする道明寺。

落ち着け私。

まあ昼くらいからの休みなら私の場合は支障が出るような仕事はしてないけどね。

「道明寺大丈夫なの?西田さんに許可もらったの?」

「なんで俺が西田に許可もらわなきゃいけねぇんだ」

やばぁーーー聞きかたを間違えた。

会社で一番偉いのはあなたでした司君。

スーっと浮かぶ青筋一つ。

「いや、そうじゃなくって仕事は大丈夫なのかなと思って」

焦る色合いを瞳に張り付けたまんま聞いてしまってた。

「出張で頑張ったから西田がスケジュールを調整してくれた」

怒った割にはやっぱり西田さんが動いてるじゃないか。

「これからの時間は俺にくれ、イヤはなしだぞ」

「駄目はいいの?」

いたずらっぽく見つめて顔がほころぶ。

「あほかッ」

道明寺の顔がクシャッとなった。

 *

-From 2-

どうすんのよーーーーーッ!

何の準備もしてないのにっ。

連れてこられたのは空港で、結婚祝いにF3からプレゼントされてぶっ飛んだ『F4 ジェット』

道明寺はジュースでももらったみたいに「サンキュー」って軽いノリで受け取っていた。

飛行機っていったい一機いくらするんだ。

私には予測もつかない金額。1億2億で右翼1枚分かな?

理解不能な状況に私は困惑気味だったんだよね。

この価値の違いは今後も続くんだろうけど慣れないよーーーーーッ。

「心配すんなぁ、2週間休みもらっておいてやったから」

「に・・・二週間!」

素っ頓狂に声をあげていた。

「午後からの休みじゃなくて?」

「半日だけじゃどこにも行けないだろう」

行けなくてもいいんだけど。

「どこ行くつもり?」

「ハワイ」

にんまりとする道明寺。

冗談じゃ・・・なさそうだ。

今このジェットに乗ってること自体で道明寺が本気なのはわかる。

「新婚旅行まだだろう」

確かにそれはまだだけど、なぜ今なんだ?

「お前新婚旅行ならハワイって言ってたろ」

確かに相当昔に言った記憶はある。

結構忙しいから新婚旅行のことなんてあきらめていたんだけど・・・。

行くならいくで二人で計画立てて・・・。

指折り数えて出発を待つ。

それが旅行の楽しみなんじゃないの?

突然昼ごはん食べてたら飛行機に乗せられて、さぁ出発なんてありえないーーーッ。

目を飛び出すほど見開いたまんま道明寺の顔を眺めてた。

「2週間会社に行かせたくなかったし・・・」

何?

なんで行かせたくないだ?

いままで行かせくないなんて言ったことあったか?

一緒に出社できるのを喜んでいたくらいなのに。

変わったことといえば公平が私の事務所にいるくらい。

2週間といえば公平がいる期間だ。

もしかして・・・公平が原因?

その理由をつけて私の2週間の休みを確保したのだろうか。

そう思うとこの突発的な道明寺の行動は納得ができる。

道明寺の嫉妬深さもここまでくれば笑い話の仲間入りができそうだ。

は~あ。

喜びよりも出るのはため息。

帰ってきたらどれだけ玲子さんや甲斐さんにからかわれる事だろう。

ソファーに力が抜けるように座り込んだ。

私より道明寺がよく休みを確保できたものだ。

西田さんのため息が聞こえてきそうだ。

「嫌じゃないよな?」

私の隣に座りながら道明寺が私の顔を覗き込む。

「嫌じゃないけど、何の準備もしてないし」

「準備はさせてある。必要なものは向こうで買えばいい」

「お前のやりたいこと、行きたいとこ、好きなことなんでも付き合うぞ」

いまさら拒否できない状態を作り上げてから私の機嫌を取ってる道明寺がかわいくて吹き出しそうだ。

「えらくサービスいいじゃん」

「なんでも私の言うとおり?」

「ああ、付き合ってやる」

「仕方ないから新婚旅行つきやってあげてもいいよ」

こみ上げる笑いを呑み込んでそうつぶやいた。

muge様リクエストのハワイ新婚旅行。ち**様の後押しもあり考えてみました。

実はここまでにつなぎで公平君を登場させたのです。

長かった~の感じはありますがどうにかつなげられたかな。

あ~つかれた。

これから疲れるのはつくしのほうか(*^_^*)

拍手御礼

nanako様

運動会お疲れ様でした。

運動会まだなんです。10月17日予定。

8日からは秋休みだし2週間は忙しそうです(^_^;)

>家が近ければ家事のお手伝いしたいくらいw

涙が出るほどうれしいお言葉♪

家事は結構手抜きです(笑)

つかつくでのハロウィンの季節モノのお話考えてみます。

パーティーでドンチャン騒ぎ?