ハロウィンの夜に 5

 *

「ふ~熱っ」

牧野の手のひらがパタパタと顔を仰ぐ。

「何か飲み物を持ってきてやるよ」とその場を離れた。

軽いアルコール入りのカクテル

このくらいが牧野にはちょうどいい。

あんまし飲ませるとそのままダウンてこともあるからな。

それで我慢させられた遠い日の記憶。

手にグラスを持って牧野のピンクのふわふわを目指す。

牧野の後ろに類。

類の手が牧野の背中に伸びる。

何やってんだ?

スーッと下に動いてピンクのふわふわが左右に割れる。

その下にはブラックの生地・・・

ワーーーーーッその役目!俺だろうがぁ

「なんで類なんかにやらせるんだ」

息切らして牧野の目の前に駆け寄る。

「やらせるって、卑猥だね司クン」

総二郎のニヤつく顔も気にくわねぇ。

「バカなこと言わないでよ。着ぐるみの中って蒸し風呂状態なんだもの暑くてしょうがないんだから」

「だからってこいつらの前で脱ぐな!」

俺の目の前で着ぐるみから右腕を抜き取って今度は左って・・・

全然聞いてねぇーーーーーッ。

思わず視線は胸元にくぎ付けで・・・

俺の手のひらにすっぽり収まるちょうどいい形が二つ。

牧野の為に持ってきたグラスの中の液体を一息でのどに流し込む。

全部・・・脱ぐのか?

ごくりと喉がなった。

牧野の動きが止まる。

下半身はピンクのまんま。

「牧野、全部脱ぐか着るかどうにかしないと中途半端で笑えるぞ」

ケンタウロスみてぇ」

あきらがククと笑いを洩らす。

それってギリシャ神話に出てくる化け物だよな。

馬の姿で首から上が人間の姿してるやつ。

それくらい知ってんぞ。

メビウスよりはましか。

「全部脱げないわよ!やらしい顔してんのが一人いるもん」

そういって俺を睨むように視線を投げる。

やらしいって・・・

俺か!?

「しょうがねぇよな牧野の欲情するのって司しかいねぇし」

「まぁ・・・いつもより色気も少しはあんじゃねぇ」

総二郎!あきら!そんなに牧野を見んじゃねぇーーーーー。

「総二郎借りるぞ」

ドラキュラのマントを取り上げて牧野に巻いて抱きしめる。

「てめえら!見んな!俺ンだぞッ」

「類、お前もファスナー下ろしたの忘れろ」

「忘れろって・・・・・」

「なかなか忘れられないよなぁ」

「あんな体験ニ度とないだろうしね。牧野」

「そうかなぁ・・・」

「あは」って、お前も頬赤くすんな。

「道明寺・・・動けないんだけど・・・」

「お前は動くな」

「着ぐるみよりマント巻き付けてる方がましだろうがぁ」

「手もまきつけたら何もできないよ」

マントに巻かれた牧野は見てみれば包帯じゃなくて黒い布に覆われてる違いはあるがミイラ状態。

「これなら、着ぐるみ全部脱げるぞ」

高揚する気分にドクッと脈打つ心音。

「あっ、いい」

今牧野が自由になるのは首から上だけで・・・

逃げようと歩いてもすすむ距離は10センチ程度。

逃げられねぇよなぁ~。

「脱がせてやる」

嫌がっても抵抗できない牧野

右膝を床につき、マントの裾から手を入れてゆっくり脱がせにかかる。

指先に触れるのはもこもこの肌触り。

マントの裾をめくれば簡単だが、他のやつらに見られるようなことはできない。

手探りで指先をゆっくりと上へ移動させる。

俺の肩まで床につきそう。

「いいって・・・」

もそもそと必死で手足を動かすが抑制されたまんまの状態は微動だにしない。

困惑気味に曇った牧野の声。

「あんまり動くとすっ転んで丸見えになるぞ」

牧野の動きが止まった。

牧野の腰のあたりにたどりついた俺の指が着ぐるみを下におろす。

二人っきりの時ならもっと卑猥な想像しそうだが素直には脱がせないだろうな。

腕が下がるたびに指先に触れるのは網タイツの段々の手触り。

一緒に脱がせてぇ~~~~。

初めての感触、体験に気もそぞろ。

周りにはあいつらもいるんだぞ!

って・・・言い聞かせ冷静さを装う。

「ほら片足上げろ」

「もう片方」

全部脱がした。

ちらっと見えた足元は網タイツ。

後が楽しみだ。

ニンマリする俺。

「スケベ」

頭の上から牧野の声が甘く聞こえた。