秘書西田の坊ちゃん観察日記 15(木漏れ日の下で  side story)

この物語は『木漏れ日の下で 6』の西田さん目線のside storyです。

 *

「メールが来たよ」

突然しゃべりだす携帯。

仕事のメールならピロリ~ンのみの音。

珍しいつくし様からのメールだと教えてくれている。

機嫌のいい代表を側で見れば、つくし様からメールが届くなんてあるはずないのだが・・・と開く携帯。

『変わりないですか?

私の方は特に問題ないんですが・・・

道明寺、変じゃないです?

まったく返事くれなくて、何か西田さんが気がついてないかとメールしました。

別に何もななければそれでいいです』

遠慮がちなメール内容。

結局言いたいことは・・・

『あの馬鹿が全く無視してるから、まがったへそを真っすぐしてください』とでも言うところか。

私の見る範囲では携帯を眺めて機嫌よく、時にはニンマリと眺めてる代表しか見ていない。

仕事も滞りなく順調にこなしてる。

機嫌がいいとしか思えない状況。

何を考えてらっしゃるのか坊ちゃんはと思考を働かせながら顎をなでる。

新婚旅行から帰国後、1か月ほどでの別居生活。

「つくしの夢の為だからな」と余裕のある態度でほほ笑まれて見送られたと思っていた。

私の目を盗んで修習所に忍び込まれた時はさすがの私も焦ってしまったが、こんな心配させられるならと急きょ

NYでの仕事を手配させてもらった。

「今NYに行くのと、つくし様が帰ってきてからの長期出張、どちらを選ばれますか?」

最初から答えは決まってる二者択一。

坊ちゃんがめずらしくおとなしいと思ったが・・・

この行動のパターンはお二人が知り合ってからは初めてだ。

つくし様を無視して慌てさせる魂胆か?

そろそろどうにかしないと今度はつくし様がへそ曲げてしまいますよといえば要らぬ節介と無視されそうだ。

仕事に励む代表を見つめて「代表、私の方につくし様からメールが送られてきたのですが・・・」と告げる。

「なんて言ってきた?」ちらっと視線を私に移した坊ちゃんは苦笑気味だ。

「私に送られてきたメールの内容はたとえ代表にでも教えられません」

聞かねぇよとふてくされた態度で私から視線を書類の上に移動させた。

愛してるとでも返信すれば済む簡単な動作。

たった数秒の手間。

そんな時間も惜しむ様な仕事ぶりではないはずです。

全く私を無視の態度。

好きなようにやらせるしかない様な素振り。

悪がきにしか見えません。

面と向かって言いたいものだ。

ピピと代表の携帯から洩れる音。

携帯のボタンを押して画面を食い入るように見つめてた代表の頬がピクピクと引きつる。

つくし様から愛想尽かされるメールでも届いたのだろうか?

「新婚旅行から帰ってらっしゃった時は無事に2カ月の別居生活も乗り切れると思ったのですが・・・」

自業自得です。

私は知りませんと突き放せればいいのだが・・・。

帰国後の対処を考えてもれるため息。

トントンと響くノックの音に入室を促す。

女性社員がこれからの仕事のアポの連絡を告げにした。

代表の視線が女性の姿を捉えて止まった。

坊ちゃんにしては珍しい。

なかなかの美人ではあるが、坊ちゃんの好みがつくし様なら規定意外なはずだ。

「西田」

代表に呼ばれて近づいた私の耳元でぼそっと告げる要望。

「一緒に写真を取りたい」

今まで代表に一緒に写真をという方々は多かったが代表自らとはなんの悪戯か。

私には珍しく驚きの表情を洩らしてしまってた。

「いいんですか?」

私の心配をよそに不敵な笑いの代表。

女子社員はもちろんとでも言う様な満面の笑みで了承する。

肩を組んで二人並んでにこやかに立つ。

「西田何やってる?」

「はぁ?」

「お前が写真撮るんだろうが?」

「カメラありませんが?」

「携帯で撮るんだよ」

「私の携帯でですか?」

しぶしぶしょうがなく写真を撮る。

「それ、添付してつくしに返信しろ」

「あっ!余計な文章はつけるなよ。

写真だけで送れ、命令だからな」

じっと凝視する代表の視線は逃れようがない重圧。

どう考えてもこの写真でつくし様が坊ちゃんみたいに「あいつのもとにに行く!」と無茶を言うとは思えません。

逆効果ではないかと・・・

満足そうな笑みを浮かべる代表。

あとの尻ぬぐいは私かと、がっくと肩が落ちた。

拍手コメント返礼

さくら様

初コメありがとうございます。

温かいお言葉をいただけてうれしいです。

こちらこそよろしくお願いします。

b-moka

拙宅では西田さん不可欠な存在になってます。

この観察日記も終わりそうにないです。