秘書西田の坊ちゃん観察日記 18(木漏れ日の下で  side story)

この物語は『木漏れ日の下で18』の西田さん目線のside storyです。

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時間はAM8時。

お若い二人には酷な時間か。

気を引き締めるよう長めに息を吐き出して受話器をとる。

昨晩はつくし様と一緒に料理をされたのだろうか。

なるべく失敗しない料理を考えて『チャーハン』が男の料理だと言ってはみた。

材料を切るのも火にいためるのも坊ちゃんがつくし様の邪魔になることは少ないだろうと導き出した答え。

いや・・・

鍋の方が楽だったと思っても今さらだが、次回にとっておこう。

味をしめてまた作ると勘違いされる性格だから。

電話の呼び出し音が耳元に響く。

3回、5回、この速さで坊ちゃんの声が聞こえたら奇跡だ。

「でたくねぇ」

ぼやく坊ちゃんの背中を押すつくし様の姿がくっくりとまぶたに浮かぶ様だ。

20回の呼び出しコールが過ぎた頃「なんだ」と聞こえた不機嫌そのもの声。

私からの無粋な電話だと最初から分かってらっしゃる対応。

坊ちゃんの能力では『無粋』より『馬にけられて痛かった』と説明した方が理解しやすいかもしれない。

「おはようございます。お疲れではないですか?」

昨日はいつもより2時間ほど早い帰宅。

私の言葉を嫌味にとらえる坊ちゃんが疲れたなどと言うことはあり得ない。

それは「休む」と言いだす前の坊ちゃんの言葉をさえぎる為の布石。

「疲れてねぇよ」

ぶっきらぼうに返された。

ここからが攻防。

「安心しました」

「疲れてらっしゃるんなら出勤を遅らせら方がいいかと思っていたのですが・・・」

「さすが代表です」

坊ちゃんにはしゃべらせず一気に言葉を吐く。

「えっ?アッ?おっ?」

ボケた様に上がる声。

これで自ら「仕事しねぇー。休む」は言えないはずだ。

「今日も残業なしだよな?」

少しの沈黙の後、受話器から聞こえる妥協案。

つくし様をNYに呼び寄せる算段を付けたときから、そのくらいの時間の余裕は調整してあります。

内心そこまで私も野暮じゃありません。

だが素直にそれをお教えするほど私はバカではありません。

切り札は最後までとっておくのが無難な対応だと坊ちゃんとの一緒の時間から学習しています。

「もう少しでNYでの仕事も片付く予定ですが?」

つくし様が日本にいたときはこれが一番のエネルギー源。

今も『つくし様』というニンジンを目の前で揺らせばいいだけですから私は楽なものです。

「あまりこちらでの滞在を長引かせると帰ってからが大変なことになると思います」

帰ってからのつくし様との折角の時間が削られると脅しをかける。

「それを調整するのが秘書の役目だろうが」

「私にも限界はあります」

私ではなく頑張るのは代表!貴方ですの最終勧告。

「気の変わらないうちに早く迎えに来い!」

荒げる声のまま「ガチャン」と響く受話器の音。

今日の重大項目が一つ終了した。

拍手コメント返礼

しずか様

日に日に・・・

年々したたかになって行くんでしょうね西田さん。

F3との絡み(^_^;)

いや~そろそろこのお話終わりにして別物をと考えております。

りらりら様

派なりすぎておバカなことばかり考えてしまってます。

付き合っていただけるだけで涙が~ 

b-moka

チャーハンの次は鍋♪

私も得意です!材料切ってブッ込むだけんの料理。

西田さんの切り札はつくしニンジンなのでしょうか?