第14話 DOUBT!!  18

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失敗した。

なかなか会えない。

これなら一緒に住もうと説得してマンションに連れ込むべきだった。

拘束気味に会社にいる時間が長くなる。

椅子の真中にドンと座らされ縄でグルグル巻きにされてる束縛感。

「今回の事件で被害を被ったのは私です」

とは西田の弁。

お二人のマンションの手配!

護衛の準備!

代表の時間の調整!

どれだけ神経を減らしたかとクドクドと口説かれる。

色っぽい口説き文句なら飽きねえが西田を黙らせるには「分かった!」

この言葉しかなかった。

そして・・・

「年が明けたらご結婚の準備ですね」

この一言が俺を黙らせる。

「そろそろ正式なご結婚の公式発表の場も手配しないとなりません」

一部週刊誌や報道でそれとなく結婚まじかの文字が躍ってる。

目にふれるたびに「ギャー」とか「ワー」とか疑似語を連発する牧野。

お前の名前も写真もまだ出てねーだろうが、出てるのは一面俺の顔ばかり。

二人並んで写る写真もそろそろ欲しいところじゃねぇか。

胸元で振動を伝える携帯。

昼間に牧野が俺に連絡するのは珍しい。

「どうした?」

昨日の夜の携帯の声よりはしゃいだ雰囲気が携帯の向こうから伝わる。

「合格!司法試験合格した」

「おっ!良かったな」

あとはお前の卒業を待つだけの秒読み態勢。

俺の気持ちも華やぐようだ。

「お祝いしないとな」

「いいよ、別に」

「あっ!花沢類達もお祝いしてくれるっていってた」

ここで類の名前を出す牧野って天然か?

俺の不機嫌の源って分かってるはずだよな?

「なぁあ・・・

もしかして俺よりあいつらの方が牧野の合格を早く知っていたのか?」

気にくわねぇ。

不満げに上ずる声。

「大学で花沢類にちょうど会ったんだもん」

「連絡を入れたのは道明寺が最初だからねッ」

それでも俺は2番目じゃねぇか。

合格祝いは俺が仕切る!

対抗的な気分が湧き上がる。

「おい!お祝は俺がしてやる」

二人っきりで仲よく!ムード良く!

「それじゃあ、そう皆にも言っておくね」

おい!

こら!

そうじゃねえーーーーーッ。

あいつらなんか邪魔なだけだぞ!

俺と牧野と二人でだ!

俺が言う前に明るい声のまま電話が切れた。

数日前俺と牧野が二人で暮らしていたマンション

窓から見下ろす夜景の明かり。

部屋のライトを軽めに落として牧野の肩を抱いて見つめてる。

・・・筈なのにッ。

邪魔な奴らも集まった。

「乾杯!」

「司法試験合格おめでとう!」

5つのシャンパングラスが重なってカチャンと快適な音を鳴らす。

「牧野頭良かったんだな」

「死ぬほど必死で勉強しましたから」

俺抜きで4人で軽快に交わされる会話。

なぜか入っていけねぇ。

そう思ってる間に話題は変な方向に進んでるような感じだ。

「あの頃の私は純粋だったなぁ~」

視線を天井に移して思いに浸る様な表情を作って牧野がつぶやく。

「なんだよ 今はそんな気持ちじゃねぇみたいな口振りじゃんか」

乱暴気味に牧野の肩に手をおいて振り向かせる。

「まぁ・・・ 司にはNYにいって3~4ヶ月で、ろくに連絡もよこさなくなったっていう前科があるからね」

シャンパングラスを揺らしながらのほ~んとした雰囲気のままの類。

必要以上にグサッとくる。

「だからそれは わき毛のいたりで」

「若気!」

え?

牧野に突込まれて言葉が止まる。

「牧野あんままともに相手すんな」

俺のことを最初から相手にしてねぇあきらの態度。

「あっ! もしかしてボケたフリして誤魔化してるでしょ。

NY行ってから1年も私をほったらかしてたこと」

俺を責める強気な口調で牧野がおれに詰め寄る。

「ごまかすも何も ケンの自殺騒動や何やで あの頃は…」

あのころのことを持ち出されると俺の方が部が悪い。

「確かに身近で親しかった人間が目の前で死を選んだら・・・

 それも自分のせいでそうなったんだとしたら・・・

 何もかも忘れて、仕事に没頭したくなるよな」

「だろ?」

思わぬ総二郎の助け船に急いで乗っかる俺。

「そういや、あの頃の類って結構本気だった?」

「何が?」

あきらの問いかけに類が顔を上げる。

「だから牧野にだよ」

「本気だったよ」

総二郎の声に迷いもなく即答で返事を返す類。

想い返すとか・・・

悩むとか・・・

貯めるとか少しは考えろ!

「おい! そういう発言は彼氏の前では慎め!」

あきら、類、総二郎と視線を移しながら落ち着けなくなった。

「何で?」

きょとんとした顔の類。

「何でって・・・

 だから、俺様が焼きもちやいたらどうするんだ!

 何で牧野はほのかにニヤついてんだ」

「いや ニヤついてないし」

緩んだ口元に力を入れなおしてまた緩む頬。

赤くなってんの酒のせいじゃねえだろう!

「あのさ 大河原財閥の娘の名前って何だっけ?」

俺ら二人のやりとりは無視するように類が思い出した様につぶやく。

「「滋」」

あきらと総二郎の声がかさなった。

別に教えなくてもいいだろう。

「その大河原滋は、司に結構入れ込んでたよね?」

なぜかわざと類のやつ俺に絡んでねぇか?

「だから・・・あれは、ウチのババァが勝手にしくんだ婚約で…」

追い込まれる様にしどろもどろになる俺。

「滋・・・ 本当に道明寺が大好きだったよね」

牧野!それお前がいうのか!

「そうそう、 司が牧野に惚れ込むのと同じぐらい滋も司に惚れ込んでたな」

「あれは純愛だったな」

総二郎に応える様に牧野が相槌を打つ。

「そういう過去に牧野は焼きもちやかねぇの?」

「何が?」

「だから俺と他の女に色々あったこと」

「ん? なんかあったの滋と?」

「あるわけないだろ!」

牧野を責めるつもりが自分が責められる。

「今の発言から何かあった」

牧野を煽る様につぶやく類。

「ねぇっつうの」

否定しながら焦る俺。

本当になんもねーぞ!

「だから私が決死の覚悟でNYに会いに行った時冷たかったんだ」

「冷たくなんかしてたか?」

「してたじゃん。男はこれだからなぁ、久々の再開をした時の衝撃は今でも忘れないよ」

牧野まで俺を責めてる・・・のか?

今日は牧野の司法試験の合格のお祝いだよな?

俺の吊るし上げみたいになってねぇか?

結婚前に浮気の疑惑を押しつけれてるような変な気分だ。

結婚を迷ってる様なこと牧野がさっき言ってたし・・・

過去のこと引き合いに出されたら勝ち目ねぇし・・・

落ち着かなく頭の中が必要以上にグジュグジュかき回されていく。

漠然とした根拠のない疑念を植え付けられてる気分。

「ブハハ」と上がる声。

「牧野、司のやつ結婚やめるってお前に言われそうで落ち着かないようだぞ」

「どうしようかな~」

その声に乗っかる様に悪戯っぽくほほ笑む牧野。

「冗談言うな」

「冗談だから」

牧野が照れくさそうにほほ笑んだ。

                                          END

花男ファイナル前夜祭の特別番組であったF4とのやりとりまできました。

rui様のコメントに感謝。

有る程度場面はうろ覚えなので少し二アンスが違うかもしれませんがその辺は大目に見てくださいませ。

このお話はもともとがこの場面につなげたくて書き始めたお話です。

この後がFのお話につながって行くと思えば少しはお楽しみいただけたのではと思っています。

拍手コメント返礼

annie様

面白かったのお言葉が明日への英気。

ありがとうございます。

b-moka

結末が予想出来るお話でもドキドキしてもらえたとのお言葉うれしいです。

特別便組に映画、私も見たくなりました。

hanairo様

前夜祭懐かしいですよね。

見れないと思うと見たくなる感じがします。

みず様

わ~い♪

初コメありがとうございます。

前夜祭のミニドラマはもっと観たかったですよね。

ほとんどうろ覚えだったんですけど台詞を教えてもらったり、DVDのコピーをいただいたりでこのお話を書くことが出来ました。

いろんな方に助けてもらってこのお話は書くことができたんです。

妄想はもちろん潤君メインですよね?(笑)

allure様

読破ありがとうございます。

このお話はファイナルの前夜祭のプチドラマにつなげたくて書き始めたお話です。

知らない方も知ってる方も楽しめるように考えて仕上げたつもりです。

プチドラマはうろ覚えだったので情報を常連さんからいただいたんですよね。

今日はたくさんの拍手ありがとうございました。