甲斐君のつぶやき 2 (抱きしめあえる夜だから)

甲斐君目線の第2段!

皆様の拍手に気を良くして早々に書いてしまいました。

今回はち**様リクエストの甲斐君と、公平くんの「同病相憐れむ」=「司に視線で殺されそうなひとたち」な新婚旅行中の会話とのリクエストにお答えしてのUPです。

そういやそんなこと書いていたなぁ~。

私はすっかり忘れてました。(^_^;)

新婚旅行中の会話までにはもう少しお話が必要ですが前編的なお話になっております。

抱きしめあえる夜だから 17の番外編となります。

 *

「・・・・5分」

「えっ?」

「5分でこの状況を説明しろ!」

「だから、なんであいつがここにいるんだ!」

代表が指をさして叫んだ相手は今日から増えた実務修習生の松岡公平。

背筋も凍る丑三ッ刻・・・。

って、まだ朝の10時すぎだ。

なぜ代表に睨まれてるか分からないままのつくしちゃん。

「実務研修うちの事務所で2週間受けるんだって」

「私が一応ここでは先輩だからオリエンテーションをやってたの」

「人を指さすなんて失礼だよ」と、にっこりとほほ笑む無邪気な笑顔。

相変わらず鈍臭い。

一度経験したものなら脳裏に焼き付けられる嫉妬の炎。

『手出ししません』

暗黙のうちに契約書を差し出させる効力を持ってると俺は思っている。

「仕事面は僕が松岡君をフォローしますからつくしちゃんは午前中だけです」

助け船を出したつもりが怒りの矛先は俺に向かって火を噴いた。

それならお前が最初から松岡のお守をしろ!というような怒りの念。

俺に以前向けられた嫉妬の域は優に越えてないか?

松岡ってやつは俺の知らないところで何やらかした?

大学の同期で修習所でも一緒。

確かに代表にとっては面白くない設定ではあることは間違いない。

俺にはこの状態を回避させる能力はないとすぐに悟った。

つーより結局この状態を打破出来るのはつくしちゃんしか居ないことは玲子さんも分かってる様で、面白そうだねって目配せしてる。

代表夫妻がしっかり仲が良いのは分かっているから気楽なものだ。

「何を怒ってんの?」

「今日・・・起こさなかったの怒ってるとか?」

それが本当ならアホらしい。

仮にも天下の道明寺財閥の総帥の不機嫌の原因が新妻に起こされなかったことだと誰が予想するかッ。

「・・・お前本当にわかんないのか」

周りのことなどすっかり忘れてる様につくしちゃんに迫る代表。

近づく代表の身体から距離をとる様につくしちゃんは後ろへと足を一歩動かす。

たいしてして離れてないぞ~。

頑張れ~と心の中で声援を送る。

俺はどっちを応援してるのだろうか。

代表の意識がつくしちゃんに移行したのを確認して気楽になっている。

このまま俺の存在を忘れてもらってもかまわない本音。

「他に・・・理由は」

つくしちゃんが焦る様に周りを見渡して松岡公平と視線が合ッた瞬間に「アッ!」と叫び声を小さく上げた。

「もしかして・・・公平?」

ようやく気が付いたらしい。

へぇ・・・つくしちゃん松岡のこと公平と呼び捨てにしてるのか。

それが気に障っているとでもいう様に代表のこめかみがピクピク動いてる。

代表の不機嫌が噴き出す要因はそこにある。

たぶん・・・

普通の男でも彼女が自分以外の男の名前を呼び捨てにしてるの聞こえたら気になると思う。

必要以上の身近な関係、気を許した仲の良さを示してると思われても仕方ない。

「キャハハハハ!考えすぎだよ」

代表の怒りの状況など無視するように笑い飛ばすされてしまってる。

大丈夫か!

よく女心わからなすぎなんて俺の彼女もよく不満を口にする。

けどここは男心も分かってないと思うぞつくしちゃん。

「一緒に来い!」

代表に腕をつかまれたつくしちゃん。

「しばらくこいつ借りるぞ」

「えっ!やだ!無理!」

「甲斐はいいって言ってるぞ」

言ったつもりはないが条件反射みたいに何度も首を上下に振る。

きっと代表に反抗できる人物は君しかいないよつくしちゃん。

「そう言うことだ」

振り返って俺を見たつくしちゃんの唇が「甲斐さんのバカ」って動いた。

代表よりもまだつくしちゃんに恨まれた方が気がらくだ。

俺は知っている。

君の性格がネチネチと後までひくタイプでないことを。

代表に解放されて帰ってくれば愚痴の一つでもいいながら笑顔を見せてくれることだろう。

きっと「道明寺がすいませんでした」と一言付け加えて。

「この後どうなるんだろうね?」

楽しみだとでもいう様に玲子さんはにっこりと意味ありげな笑顔を松岡に向けていた。