ごめん それでも愛してる 2

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香港支社ビル1Fエントランス。

居並んで出迎えたのは支社長に重役たち。

後ろで操り人形みたいに歩く葵からはカタコトと音まで聞こえてきそうだ。

挨拶もそこそこに今までの状況の説明を受けながらエレベータに乗り込む。

俺の横には緊張な面持ちの葵。

冷静さを装うとしてるのかしきりにまぶたが動いてる。

その動きがピタッと止まった。

1点を見つめて凝視。

アッの形で開いたまんまの唇。

ニコッと作った顔でちょこんと下がる頭。

その先に若い男。

このエレベーターに乗ってるのだから社員と言うのは分かる。

名札には「KAZUMA SATONAKA」のローマ字表記。

社員の名前が気になって確認したのは初めてだ。

「知り合いか?」

首をわずかに傾けて葵の頭の上から声をかけた。

「・・えッ・・・まあ」

そう言ったまま葵は黙り込んだ。

同じ会社の社員なのだからこっちに知り合いがいてもおかしくない。

そう自分に言い聞かせてる。

司の事をバカにできないと苦笑した。

あいつみたいに感情ムキ出しに出来ないだけだ。

結構ムッとするというか気になるものだ。

最上階の秘書室。

本社と違って俺付きの秘書は葵以外はいない。

二人っきりのはずが、これからすぐに会議の予定。

ゆっくり葵と話す暇もなさそうだ。

デスクの上に置かれた書類を手に取り確認する葵。

「今日の予定は夕方には終わりそうですね」

「会議の後は空白にしておくべきだったな」

「それじゃ、3日じゃ帰れなくなりますよ」

俺の想いは無視された。

完璧に仕事モードに入っている。

口説けそうもないオーラーを出している。

夕方まで持ち越しの感じだ。

さっさと仕事を片付けて口説くしかなさそうだ。

「担当者が来たら、部屋に通してくれ」

そう指示して総務室のドアを開けた。

鼻先を香水の匂い。

ボディーの線を強調する様な装い。

背中まで伸びた黒髪は肩を覆う。

今回の依頼主赤西財閥のお嬢さん『赤西 遥』元俺の恋人。

五歳の歳の差は俺の付き合った相手としては若い方に分類される。

既婚者じゃないのも珍しい。

俺が振った訳じゃなく彼女から離れて行って終わった恋。

今となっては本当の恋じゃなかったと分かる。

振られて落ち込むこともなかった。

「来てたんですか」

「あなたが来るって聞いたから待たせてもらってたの」

優雅に俺の首に左右からまわされる腕。

普段なら躊躇なく腰を抱き寄せる体勢。

後ろからの視線が背中に突き刺さる。

ドアを閉めたら出来あがる密室。

葵に余計な事考えられそうだ。

飛行機の中でCAからの名刺を受取っただけで無視された。

開けたドアを閉められなくなった。

それとも締めた方がいいのか?

ドアノブを放すべきかどうするか迷うことなんて滅多にない。

結局締められずに手をドアノブから外す。

「仕事の話なら聞きますよ。もうすぐ担当者も来る筈ですから」

まわされた腕を外しながらソファーに座る様に視線で促す。

「つれないのね」

ほほ笑みを浮かべながら彼女は気分が害された様子もなくソファーに腰を下ろす。

スカートの裾からほっそりとした長い脚が見える。

自分がいかにすれば男性の目を引くことができるか計算された仕草。

今は何とも思わない。

「バン!」

部屋中に振動が伝わる様な響きで閉められたドア。

ギクッとなったのは音のせいじゃなくドアを閉めたのが葵だという事実。

さすがに拗ねるよな。

これからあいつをどう扱う?

プランが浮かばなかった。

ここらの難局二重奏と言ったところでしょうか。

KAZUMA SATONAKA 里中一真がどう絡む?

オリキャラあんまり増やしたくんないんですけどね。(^_^;)

拍手コメント返礼

むさぴょん様

穏やかに進んだらお話が終わっちゃうもので・・・(^_^;)。

せめてひと波乱?と思っています。

西田さん見たいな一之瀬さんの呟ですか?

西田さんみたいにおもしろくなるでしょうか?

書いてみないと分からないですよね。(>_<)

yum***様

あきらと葵の最初の出会いは実はいろいろ考えてたんです。

昔からの許嫁で小さいころから一筋にあきらのことを思っていた設定。

そこからいろいろ考えて・・・

ベタな設定ですけどね。

自分の婚約者が同じ会社の部下にしたのは拙宅のつかつくでは書けないオフィスラブを書きたかった願望から始まり、誰でも知ってるF4を知らない設定も面白いかなとこんな設定になりました。

『はぴまり』を読んだときはもう♪って感じでしたよ。

それからあきら葵を書いてるとはぴまりとシンクロするんですよね。

北斗とあきらの違いは歴然ですけどね。

天河の旧ブログってHPのことでしょうか?

あの隠し部屋は遊びで作ってまして、大したお話じゃ・・・

10年以上前の連載当時の駄作です。

パスワードなんだけっと思いながら焦りましたよ(笑)

PWは『happy』でした。

思い出してよかった(^_^;)