涙まで抱きしめたい 5

いろんな伏せんを付け足してお話を進めています。

先輩だけかと思ったら~。

あきら大丈夫か!!!!!

「ごめん~」で終わらせとけばよかったなんて結果になったどうしよう。(^_^;)

*

ライトが光を落として淡くルームを照らす。

その窓から透明な海の底に差し込む様な月の光が葵をほんのりと浮き立たせた。

ソファーの上に膝を抱いて座る葵は儚げに見えて今すぐでも抱きしめたいと俺の心が高鳴り続ける。

月がきれい

浴室から出てきた俺に気が付くと夜空を見上げたまま葵がほほ笑む。

「本当は昨日見たかった」

「えっ?」

中秋の名月十五夜だったのに」

一緒に眺めたかったと拗ねたような瞳で見つめられた。

月見の風習なんて行事的には知ってるが経験したことはない。

十五夜十六夜、立待月、居待月って続くんだよな」

立ちながら待つうちに出てくる月 立待月。

座してその出を待つ月 居待月。

1日ごとに月が夜空に現す時間は遅くなる。

十五夜の月よりためらいがちにわずかに遅れて出る今宵の月。

今の俺の様な気がした。

「小さい頃・・・おばあ様が生きてた頃はススキとかお団子とかお供えしてにぎやかだったな」

葵の子供の頃の話は初めて聞かされる。

葵の家が没落したのって5歳の頃と書類に書かれていたことを思い出す。

「俺は月を好きな女と眺めるって初めて」

「・・・私もだけど」

驚いた様に俺を見つめて照れくさそうに葵が目を伏せた。

その仕草に安心してためらいがちだった心に灯がともる。

葵の横に腰を下ろしたソファーがギシッと音を立てた。

「ごめん」

小さく動く葵の唇。

「なにが?」

「・・・だから・・・プロポーズ・・・断ったから」

「昼間・・・」

「昼間?」

「・・・その嫌な事させたし」

嫌なこと?って・・・

わずかに触れる肩越しに葵の熱が伝わる。

昼間ってことは朝の出来事しかない。

葵をデスクに押し倒して指先で触れた葵の熱を持つ素肌。

謝るのは俺の方。

別に嫌なことをしてたわけじゃない。

半分本気だった。

本能より理性が勝っただけのこと。

それでも自分を責める葵。

こいつのこんなとこは無性に愛しくて心にジンと響いてしまう。

「謝るのは俺の方かと思ってた」

肩に回した腕で葵を抱き寄せた。

葵の頭の重さを心地よく感じる肩。

「結婚したくないわけじゃないから・・・」

「じゃあ、どうして断る?」

「今はさ・・・いろいろ言われるよね」

「それは全部俺が葵を守る」

「そうじゃなくてね。私が悪く言われるのはいいの。我慢できるから・・・」

「でも私を選んだことであきらが悪く言われるのが嫌だから」

俺は今のお前がいい。

俺のために変わるとかそんなことは望んじゃいない。

同じようなこと牧野も言ってなかったか?

今も道明寺の嫁としての講義日程というやつをやらされてるはずだ。

俺の母親は司の母親とは雲泥の差だ。

葵を母親に会わせたら教養より結婚式の準備にすぐに執りかかりそうなタイプだ。

妹達の方が強敵だと思う。

「葵と同じようなこと言ってたやつ知ってるよ」

「何となく似てるよな」

全然違うはずなのに根本的なところが牧野と葵は一緒なのかもしれない。

自分の感情より相手のことを優先する優しさ。

「・・・牧野さん?」

「そう。牧野も結婚の準備で忙しそうだしな」

「・・ヤダ」

「なにが」

「似てるって言われるとヤダ」

「えっ?」

「だって、好きだったんでしょ」

ソファーの上のクッションを胸の中にギュッと押し込んで握りしめたままきつく睨まれた。

牧野ならここでそのクッションが武器になるところだ。

「本気で好きなら自分からはあきらめないんだろう?」

里中と葵が話していた時の会話。

俺に本気で見せる嫉妬可愛いものだ。

牧野に感じる感情を葵が思い出させるのは否定はしない。

最初の入り口はそれでも、それで魅かれていったわけじゃない。

「プロポーズは断られても俺も諦めないから」

「・・・いつかは大丈夫だと思う」

「本当に断るつもりなら一緒に住んでなんかいられるないから」

初心に恥ずかしそうに俯いて隠れる表情。

照れくさいのを発した声が教えてくれる。

心の中は丸見えだ。

「このクッション邪魔なんだけど」

抱きしめた葵と俺の胸の間には凶器にはならなかったクッションが密着度を邪魔してる。

どちらからともなくクスと笑いがこぼれた。

「あっ」

胸元で葵が突然思い出したように声をあげた。

「新しい常務が来るんでしょ」

ぴくっと眉が痙攣しそうになった。

「情報早いな」

最後の押し倒すところで気分が萎えそうな情報。

「秘書課は誰の秘書につくか移動もあるみたいだから・・・」

「若くてハンサムって会社中で騒いでたから。親戚なんでしょう?」

「どうせならその噂に女に手が早い!貞操なし!て付け加える必要がある」

俺の毛嫌いもここまでくれば最高級だ。

「そのまま当てはまりそうな噂を聞いた覚えがあるんだけど・・・」

「今は違うだろうッ!」

「いいか、あいつには近づくな」

アイツは俺と一緒でお前と見合いする権利があったんだ!

そのことは胸の奥に閉まって葵の肩を揺するように叫んだ。

ゆらゆらと俺の揺さぶりにあわせて葵の首が揺れる。

あのバカはお前を狙ってる!

注意しろ!

「・・・気分悪い」

心の中で叫びながら葵の肩を揺らす俺の腕の中にカクンと葵の首が折れた。

今年の十五夜はみなさんいかがだったでしょうか?

我が家の地域には子供が「十五夜です」とお菓子を貰いに家庭を回る風習があります。

今年は「セ●ンイ●ブン」のお店からも貰えたと子供は喜んで帰って来ました。

今日の夜はちなみに寝待月。

寝ながら待つの意味だそうです。

寝ながら待ったら月なんて見られそうもないですけどね。(^_^;)

拍手コメント返礼

nonno様

おうちの中でのラブラブってつかつくの中じゃほとんどで出来ませんよね。

ふたりだと書きたくなって対して物語の進展はないのに追加してしまいます。

です!根本的にはつくしと葵は似てるのです。

葵の方が素直ですけどね。

はい~私もあきらの味方です♪