思い出は夢の中で 19+α

未来のつかつくを見ても動揺を見せない西田さんとF3。

F3からの視点のお話も面白そうだと、一コマで~と思ったのですが書ききれずに断念。

19では書ききれなかったお話を追加してみました。

*

英徳の近くの飲食店。

そっくりのウエィターがいるという噂に興味をひかれたのは、時間を持て余し気味の俺たちにはちょうどいい暇つぶし。

確かめた後で司も連れて行こうと軽く思ってた。

「ここだろう?」

店の前の透明なガラスのドア。

そこから見えたのは司にしか見えない姿。

目に鼻、口元、少し細くなった精鍛な顔立ち。

似てるヤツはいるかもしれないが、あのクルクル天パまで同じって普通はありえないだろう。

「なぁ・・・」

「司にしか見えないよな?」

自分でも驚いてるのか落ち着いてるのかわからない声。

これをどう説明する?

あきらのつぶやきは類と俺の心の代弁でもある気がした。

「少し大人びた感じはするけどね」

そう言って店の奥を類が見つめる。

「司は、牧野を追って学校を飛び出したよな?」

「牧野のバイト先に行くって言ってた」

ここにいるのは司じゃないと思っても否定できない思考。

どう考えても司じゃないと打ち消せない気持ち。

俺一人で見たならきっと驚きを隠せない。

それは類もあきらも同じなはずだと俺は思った。

「ここ、牧野のバイト先じゃないよね」

店の中を見つめてた類の視線は急にあきらと俺に注がれる。

「だんご屋だろう?」

「総二郎・・・牧野もいる・・・」

あきらの声に促されるように視線の示す先を見る。

店に近づく二人の姿。

司だけじゃなくて牧野そっくりってどういうことだ?

何かしらもめてる様子で目の前に迫る二人に驚いて言葉を見失った。

「牧野も少し大人っぽい」

「・・・、俺には今とあんまし変わらないように見える」

「でもあれは牧野だよな?」

俺の知ってる牧野じゃないと類は言い切る。

俺たちの中じゃ牧野に一番近いのは類かもしれない。

「物語の様にタイムスリップってわけじゃないだろう?」

「それなら説明できそうだよね?」

「あいつらに聞く方が早くねぇ?」

半信半疑のままドアを開けて店の中に進んだ。

3人の目の前で立ち止まった司が目を見開いている。

ワンテンポずれて「えーーーっ」と上がる驚きの声。

目の前の二人は俺たちを知っている。

「牧野だよね?」

類はすかさず目の前の牧野を優しく見つめてる。

類は司より牧野の方が気になるらしい。

「司が牧野と一緒にいるのは当たり前としても、なんとなく雰囲気が違うよな?」

俺の知ってる二人の関係。

キスして喜んでる程度の軽いもの。

目の前の二人には男女の匂いみたいなハードルを越えてる関係が見える。

俺の知ってる牧野は絶対素直に司に腰を抱かせてるとは思えない。

「他人のソラマメだ」

声まで司だ。

その声を聞いた牧野は自分の掌で顔をダメだと言う様に覆った。

「他人の空似だろ?」

言い間違い方まで真似はできないよな?

二人の態度は自分たちの正体を自ら暴露している。

俺たちの知ってる司と牧野とは違うはずなのに、親しみは隠しようがなく不思議と可笑しさが込み上げる。

「Doppelgänger・・・」

あきらの落ち着いた流ちょうなドイツ語の発音。

ドッペルゲンガーを見たら死ぬって迷信なかった?」

司が見たら目の前のもう一人の司に信じねぇって飛びかかるぞ。

「生きている人間の霊的な生き写しって意味があったよな?」

もし本当にもう一つの次元から現れたら同じような意味かもしれない。

本人が見たら死ぬって話はなかったか?

この際は忘れよう。

「こうやって揃うと太郎くんも道明寺様に見える~」

「太郎?」

周りの客から聞えた声にあきらが素っ頓狂に声を出す。

「悪いか!」

「悪くはないけどなぁ」

「クッッ」

あきらからこらえきれなくなった笑いが漏れた。

「俺は太郎、こいつは花子だ」

ふてくされ気味に聞こえた声。

やっぱりこいつは俺たちの知ってる司と変わらない。

「行くぞ」

それは有無も言わせぬふてぶてしい声。

目の前を通り過ぎる二人の後をついて俺たちも店を出る。

案内されたのは住宅街の1等地の高級マンション。

「西田に準備させた」

俺たちの3人の中では二人は未来の司と牧野だと確信してる。

公園でデートしてたら転んで気がついたら過去に来てた。

そう俺たちに告げた未来の司は大学を卒業したてだと教えてくれた。

信じられないけど司なら何があっても納得できるから不思議だ。

「牧野が来年大学を卒業したら結婚する予定だ」

少し表情を崩してうれしいそうな表情を司が浮かべた。

お前のそんな表情はめったに見られないよな。

乱暴な言葉もどこか優しさが見え隠れしてる。

俺たちの知らないな時間が確実に二人の中で過ぎていると感じる。

それは・・・

俺たち4人が過ごしてきた時間に匹敵するほど司の中に牧野が入りこんでいる。

深く・・・

暖かく・・・

愛しく・・・

司のすべてを包む優しい風を感じた。

じゃれあいの二人を見ながら幸せなんだと思える。

「帰る方法ってわかってるのか?」

何気ない感じにあきら呟いた。

「いや、わんねぇーよ」

「分かってれば誰がバイトなんてしてるかッ」

不安そうに見えた一瞬の表情をすぐに司は隠す。

こいつの強がりは昔から俺たちの中じゃダントツで・・・

誰にも本当の奥深い感情はしっかりとしまいこんでしまってる。

数年たっても変わらないんだな。

「司にバイトさせるて、お前んとこの秘書なに考えてるんだ?」

「坊ちゃん再教育?普通の生活の体験とか?」

「今更だろう~」

「いや、俺たちの知ってる司には無理だろうけど、目の前の司ならできそうじゃねぇ?」

「牧野にはすげ~優しそうだしな」

少し暗くなりかけた二人に俺たちの気遣い。

不安がないはずないよな?

過去にきて4日目の二人。

「もし、帰れなかったら・・・」

ぽつりと牧野が小さく声を漏らす。

「俺たち司を二人相手しなきゃいけないことになるのか!」

「身体もたねぇぞ」

「司がいなくなった未来の俺たちはつまんないよな」

いつもよりかさなりあう様に矢継ぎ早に出る三様の声。

「来た時の状況を再現するっていうのが物語のパターンではあるよね」

「そんな安易なことじゃ司は帰れないだろう」

類のつぶやきに明るく否定形で返したのはあきら。

「簡単にすみそうでいいじゃねぇか」

司があきらを睨みつける。

「司は普通じゃないからな~」

からかう声を部屋に俺は響かせる。

「お前ら俺たちの事を真剣に考えろ!」

司の大声に牧野がようやく表情を崩して「ぷーーーっ」と吹き出した。

拍手コメント返礼

Gods&Death様

3人寄れば文殊の知恵♪

一人でも十分頼りになりそうですよね。

そろそろ未来にかえさなきゃ~。

コーヒーポットをクルクル♪

遠心力を利用して未来へお帰り~。

どこかで見た記憶が・・・

それはコーヒーポットじゃなくてジェットコースターだったような記憶があります。

ゆげ様

過去も未来も司で楽しんじゃってますよねF3も西田さんも(^_^;)

この出会いがどう未来に影響するのかはまた違う感じに楽しめそうですよね。