愛を叫べ! 4

すがすがしくご機嫌に仕事をする司君。

つくしちゃんは仕事も手につかない状況だと思いますけどね。

さぁ、次はどんな感じで愛を叫んでくれるのかな~

『愛を避ける』になってもそれは私の責任じゃないよ~~~~~。

ドン!

バン!

ガツン!

執務室には似合わない効果音が響く。

ドアはいきなりノックもなしに開いて、壁にぶつかって、そして部屋に飛び込んできた主に跳ね返った。

顔・・・

大丈夫か?

つーか、そんなに慌てて俺のもとに息を切らせて飛び込んできたあいつに笑いがこみあげる。

そんなに俺に会いたかったか?

「笑わないで」

鼻先を手こすりながらつくしが俺のそばに歩み寄る。

「よかったな」

「よかったって何よ」

「打ったのがオデコじゃなくて鼻で」

一応、鼻が高いって証明。

俺のいたずらな声に気が付いたのか鼻先より頬のほうが真っ赤に色づいた。

「そこまで、低くないんだから」

ぶつぶつと口の中にこもる不満の声に俺はまた笑いが込みがえる。

「お前の顔は、俺が一番気にいってんだよ。

それ以上壊すな」

「壊してないから」

今日の仕事はおしまいだとつくしにわからせるようにデスクの上の書類をとじて席を立つ。

「本当に大丈夫か?」

腰を屈めて下からつくしの顔を覗き込む。

鼻の赤い身も取れてきて普段の肌色に戻る。

「おっ」

「お?」

わざとおおげさに驚いた俺に動揺気味につくしが俺をガン見。

「どうもなってねぇよ」

ツンと鼻先を弾く俺につくしがムッとした感情を見せた。

「遊ぶな!それより大変なんだから!」

お前の大変は大したことねぇだろう。

俺の目の前に貼り付けるように置いたスマフォの画面。

近すぎて見えねぇぞ。

顔から引きはがすように奪い取って再度眺める。

なんだこれ?

いくつもの画像とコメントのやり取り。

これって、昼間の俺たちの様子。

結構二人で撮られてる場面が多い。

「撮られてたんだ」

俺がお前を守ったとか。

かっこいいとか。

こんなセリフを言われたいとか。

好印象のコメントが埋め尽くしてる。

特に問題ないんじゃねぇの?

「しっかりあの時のやり取りが聞かれてて、も日本中、いや世界中の配信されてるんだから」

「それのどこが問題だ?」

「あのね。なんか恥ずかしいでしょ」

「なにが?」

「何がって・・・」

つくしの呆れた表情が何か言いたそうに唇をわなわなと震わせる。

「俺が、お前を守ってどこが悪い。

それをみんな好意的に受け止めてるだけだろう。

恥ずかしがることなんて何もないだろうが」

「あのね。相手は私の仕事の依頼人なの。

こんなに騒がれたら相手が迷惑でしょう」

自分のことより相手を気にしてるのか?

水をぶっかけられた相手だぞ?

つくしらしいって言えばつくしらさしけどな。

「こんなの数日で騒がれなくなるぞ」

「それは、そうなんだけど・・・」

伸ばした腕をつくしの腰に回して抱き寄せる。

「何?」

密着する身体につくしが身構えるように身体を固くした。

「それだけ言いに、来たわけじゃねぇよな?」

もう片方の腕もつくしの背中に回して増す密着度。

「え?」

驚く表情の下に動揺してるのが丸見え。

「俺が迎えに来るの待ちきれなくて、お前から迎えにきてくれたんだよな?」

「そんなわけじゃなくて・・・だから・・・

騒がれてるから・・・」

言い訳はもっと効率的に効果的にしなければ意味はない。

言葉を選んで探してあたふたしてるこいつは愛すべきキャラ。

「あの場所で、こうやってお前を抱きよせてればもっと騒がれてたろうな」

身体を引き寄せて抱き寄せてこれ以上になく密着する身体。

「ここまでされたら仕事できなくなっちゃうよ」

俺に身体を預けるように緊張が解けたつくしの身体の重みが心地いい。

「そうか?」

俺はこれくらいじゃ何んともねぇよ。

この先の柔らかい肌の弾力と温かく俺を包みこむ感触のその先を望んでるから。

「もっと、騒ぎが大きくなって、完璧に仕事を一つなくしたって思う」

こいつ・・・

甘い本能の誘惑のほうじゃなくて堅物的な仕事の方?

「俺が言ってるのはそんなことじゃねぇよ」

その勘違いを訂正させるのは言葉より行動のほうが早そうだ。

首筋に落としたキスにビクリとつくしの背中が反応を見せた。