霧の中に落ちる月の滴 19
あとは類君の記憶がいつ戻るのかなんですよね。
意外性のある結果を模索中です。(;^ω^)
*ノックをしようと動かした手はドアを叩く前に自然と動きを止めた。
漏れ聞こえてきた声は類のものじゃなく総二郎とあきらの二人のもの。
防音じゃねぇのかよ。
わずかに閉まり切っていなかったドアがかすかに動いた。
あいつらにしたら珍しいミス。
人の目を気にして警戒するのは基本中の基本だろうが。
「類、この女知ってるか?」
たぶん類に今回の事件の女の写真でもあきらが見せてるのだろう。
「知らない」
興味なさそうな不愛想に類の声が聞こえた。
「そうだよな・・・」
総二郎と顔を見合わせて小さく息を漏らす息使いまでわかる気がした。
「類の場合、牧野じゃなきゃ網膜が認識しないって感じだからな」
総二郎もうまいことを言う。
興味がないものはその場にいないほど無視することも類には珍しくない。
牧野に微笑みを浮かべる類はその場にいた女をすべて虜にできるほど魅力的だということを類派は自覚してないッて思う。
俺がそばにいることも忘れてポッと顔を染めるあいつも同じく自覚なし。
「まぁ、今回の件の仕業はこいつ。
しっかり罰は与えたからもう心配はいらないはずだ」
「そうか・・・
牧野を俺が巻き込んだってことか」
「逆恨みじゃどうしようもねぇよ」
少し和ららいだ雰囲気が流れる病室。
「類・・・
記憶は?
どうだ?」
ことの真相を類に告げたところで聞こえてきたあきらの声。
類!
思いだしたか!
期待感からか手のひらが汗ににじむ。
「牧野とさ・・・
司・・・
俺の知ってる二人じゃないよね。
記憶が戻らなくても、うすうす気が付くいた。
一人で勝手に牧野を守ってる気になっていたんだよな・・・俺」
ひとつひとつ言葉をかみしめる類の感情のこもった声は切なく・・・
俺の肌が震えた。
ドアを開けようとした俺はタイミングを逃したように踏み出しかけた足を踏み出せないままに靴底を床に下した。
「記憶が戻っても、戻らなくても、結果は決まっていたったことなんだろうな」
背伸びをするように腕を伸ばして息をつく類。
ドアの隙間からその姿が見える。
そして俺に気が付いた類の視線。
「司、来てたんだ」
類につられるように総二郎とあきらの視線が俺を捉えた。
「今、来たところ。
お前らも来てるなら来てるって言えよ」
落ち着きない自分が自分でわかる。
「今、会ったのに来てるって言えるわけねだろう」。
盗み聞きするなんて行儀が悪いって教えてもらわなかったか?」
行儀、作法には人一倍うるさい総二郎。
「盗み聞きなんてしてねぇぞ。
ドアが開いてるのが悪いんだろうが!」
「悪いのは俺らかよ」
くすっとした笑みにはしょうがねぇの感情がみえる。
そんな総二郎とあきらが視線を交わす。
「類、事件は片付いたから心配するな」
「まだ、片付いてないよ」
類との距離は身体二つ分。
「牧野のとのこと・・・」
「え?」
まじめに鋭く俺に詰め寄るような類の視線は俺の意表をつくのには十分。
間抜けな声が唇から漏れた。
でも・・・
お前・・・
さっき・・・
俺と牧野の関係を気が付いたようなこと言ったよな?
言葉にならない声は頭の中で何度も反復を繰り返してる。
「言っておくけど、牧野のこと、何かあった時は遠慮しないからね」
類・・・
その言葉・・・
前もお前に言われたぞ。
「おうっ」
久しぶりに明るい気持ちで類と向きあえたような気がした。
拍手コメント返礼
スリーシスターズ 様
類だからわかるってところあると思うんです。
>司と類の見えない繋がりはいいな~と思わせてくれます。
そうこですよね。
この二人の絆は総二郎とあきらとはまた違うものなのよ~
びっくりするような記憶の戻り方!
プレッシャーですよ~
りり様
類ここからどうするんでしょね。
kachi 様
今回話すぞ!と意気込んだ司の出鼻をくじかれちゃいましたが結果はオーライ♪
そうかな?とちょっと疑いの目をもって横から覗くのもいいですよ♪
類の記憶が戻るとこの話も終わりです。