ジェラシーを情熱に変えて 12

司君桃井さんを追い払った後の事後処理を間違ったような・・・

ここでつくしちゃんに牙をむいてますよ~

教えてあげたい!

ここはしっかりあの優秀な剛腕秘書がいるとかいないとか・・・

つくしちゃんの運命はいかに!って・・・

雪山遭難になっちゃうのは1話でばらしております。(;^ω^)

 *

「あっ、そうか、あのネックレスより随分と高そうな豪華なネックレスもらっちゃってますもんね」

今思いついたような調子で桃井さんが呟く。

「いいですよね。何でもポンとプレゼントしてくれる彼氏。

そうじゃなきゃ、こんな素敵なパーティーに一生縁がないって感じですもんね。」

私の周りをくるりと一周。

そして目の前で両足をそろえてポンと飛び跳ねて足を付く桃井さん。

着飾ってる私の時間を半日以上戻して、ここについたときの私の姿を描いてるって思える。

無理やり連れてこられた私は、一流ホテルよりはヒッチハイクが似合いそうな貧乏学生丸出しの普段着。

「朝からエステで磨かれて担当も24時間体制ですからね。

極上のVIP待遇。こんな方滅多にいらっしゃいませんから」

にこにこと笑顔を振りまく割にはチクチクと棘を感じる。

この後何を言われても、何を褒められても嫌みにしか聞こえてこない気がする。

私みたいな平凡な女の子がどうして道明寺と?

今に始まった事じゃないからその疑問符には慣れちゃってる。

スキになったのが道明寺で・・・

バカで、俺様で、我儘で、どうしようもない奴。

彼氏にするなら絶対無理って思ってたのに気が付けばすべての想いは道明寺のことで埋まっていた。

道明寺が金持ちだとかそんなことは関係なくて・・・

どちらかといえばお金なんてないほうが私にはあっている。

貧乏で育っちゃってるからお金のない暮らしのほうが性にあってる。

道明寺の家より私の貧乏アパートのほうが今でも落ち着くの。

派手なパーティーより家族で鍋をつつく方が好きなんだから。

「どうすれば、あんな素敵な人・・・落とせるんですか?」

「私、今で一生懸命自分を磨いて、お金も、時間もいっぱいつかってるんですよ。

就職を決めたのもこのホテルならセレブとも知りあえると思っていたんですよね。

F4を見ちゃったら今までの彼、全部ダサく見えちゃった」

甘ったるく目を伏せる仕草。

口からこぼれる甘やかな色を付けた媚びいるような音色。

私に向けられたものじゃないのに、さっきまで道明寺にまとわりついていた雰囲気がよみがえる。

「私・・・そんな理由で道明寺を選んだわけじゃありませんから」

そういう女子がいるのは否定しない。

媚びられることにはあの人たちは慣れてるから。

あしらい方も十分承知。

褒められて当たり前。媚びられた当たり前。

自分の言ったこと全部聞きいれられるのも当たり前。

道明寺が一番、裸の王様的部分はある。

あしらい方は最悪。

どけ!

近づくな!

人を寄せ付けない怒鳴り声一発。

いつも隣でハラハラする私。

あれ?

そういえば・・・今日は一度もハラハラしてないや。

まさか・・・

道明寺・・・

桃井さんの手管にのったんじゃないよね・・・。

「イッ」

ドンと肩を押される衝撃。

よろけた身体を何とかなれないヒールで踏ん張った。

無言のまま謝ることもなく立ち去ったのは上等なスーツを着こんだ男性。

私から当たったわけじゃないのにチッと舌打ちする音が聞こえた。

「道明寺さんがそばにいなきゃだめなんですね」

首を取ったような優越感の広がる表情。

道明寺がいなきゃ今の私はこの場所で何の価値もないのはわかる。

それを道明寺じゃない人に言われるのはキツイ。

道明寺がそばにいれば私は道明寺の為にどんなことでも頑張れると思う。

それでも、今道明寺の姿を見失ったままの私はどうしたらいいのか迷ってしまったままだ。

道明寺がそばにいない心細さ。

どうしていないのよ。

ここにいる意味を見失ってる。

ネックレス探さなきゃ・・・

ここを離れたい理由をそう思いこんだ。

「道明寺のスーツはどこに?」

「それなら、ゴミ箱に捨てちゃったかな?

「ネックレスも?」

「どうだったかな・・・」

誤魔化すように口をつぐむ桃井さんは無視。

この人ならそのままネックレスごと捨てちゃいそうだもの。

「アッ・・・

ゴミ箱探すなら、着替えたほうがいいですよ。

一点もののドレス汚しちゃったら大変ですからね。

それとも・・・彼氏が金持ちだとそんなこと気にならないかしら?」

「着替えるに決まってるでしょ!」

なんなのもっ!

自分の怒りが桃井さんなのか道明寺になのかわからないまま地響きを立てるように私は着替えに走った。