最上階の恋人 5

拙宅では滅多に登場しない総ちゃん。

今回おいしいところで登場させてしまいました。

いつもなら類とかあきらくんの役割なんですけどね。

先日の花晴れ45話の影響大です。

司の嫉妬深さを目のあたりにしてしまうのでしょうか相葉さん。

最初が肝心ですよね。(笑)

 *

唇の動きから目が離せない。

相葉さんの事務的な表情から相手が誰なのか読み取ることはできない。

「あのマイクが司につながってるとは思えないから心配いらないんじゃないのか」

ツンと鼻先を軽くはじいた感触。

上げた視線の先には微笑みを浮かべる西門さん。

顔が・・・近いっ!

いきなり目の前に迫る綺麗な顔って破壊力がありすぎる。

見慣れてるとはいっても、この近距離は心臓に悪い。

周りの女性たちの視線もさっきから私たちに突き刺さってる。

「会社の中にこんなおしゃれなカフェテリアがあるなんていいよね」

クルクルとグラスの氷を回すストロー。

中の氷がグラスの外に飛び出しそうな勢いに回してしまってる。

私の慌てっぷりは西門さんにはバレバレなのか楽しそうな笑みを浮かべて私を見つめてる。

「2階のフロアーまではオフィスは入ってないらしいからな」

利便性を考えたオフィスビル

ビルから出なくても済むようにと整えられた社員にやさしい環境作り。

仕事の能率を上げるための改革ってこと道明寺が行ってたっけ。

「お前の能率を上げるのはおいしい食いもんだよな」

なんて聞いてきたことあったんだよな。

そして、今、目の前のパンケーキに心を奪われてしまってる。

道明寺のことを考えるのは目の前のケーキを平らげてからでも遅くはない。

窓際の席から下をのぞくと私が一回転して外に出てしまった回転扉が見える。

私のように一回転してる人はいない・・・よね。

「あっ、司」

聞こえて来たのは西門さんの落ち着いた声。

口の中にはフォークを入れ始めたばかりの私。

詰め込んだパンケーキを突き通してフォークで喉の奥を刺しそうになった。

司って!

片腕をテーブルについてもう片方の耳に当てるスマホ

後ろには新緑の風景とショパンの音楽が流れてる感じで絵になる西門さん。

スマホの相手は道明寺だとわかっ途端に私の心臓は別な意味で跳ね上がる。

「会社には今着いたところ。

ちょうど牧野と一緒になってさ、

司に会う時間を明日に変更してほしいって連絡を、俺が知ったのさっきだったから。

もう向かってる途中だったんだよな。

牧野に会えるのに俺に会わないってことはないよな」

聞こえてくるのは西門さんの声だけ。

道明寺がどんな返事をしてるのか聞けるはずがない。

西門さんのペースで話は進んでるように見えた・・・

「ツっ」

突然顔をしかめた西門さんが耳元からスマホを遠ざけるのが見えた。

「すげー怒鳴り声」

耳のつまりを治すように西門さんは人差し指を耳の中に差し入れてくるっと指を回す。

道明寺が、怒鳴ったッてことは・・・

「そこから動くな!」

鬼の形相の道明寺の怒鳴り声が私にまで聞こえた気がする。

ガタンと音をたてながら椅子から立ちあがった私と相葉さんの視線が重なる。

私に遅れること数秒で相葉さんが立ちあがって私の席に近づいてきた。

「どうかしましたか?」

その声は私を気遣いながらも冷静な声。

周囲に視線を移しながら異変がないかをしっかり確かめてる様子も見える。

「牧野、そんなに焦らなくて大丈夫だから心配すんな」

不機嫌な道明寺に私はまだ慣れてないのッ。

小さいころから付き合いのある西門さんとは年季が違う。

道明寺が不機嫌だと売り言葉に買い言葉で喧嘩になっちゃうんだから。

わざわざ喧嘩をしに来たわけじゃないもの。

久しぶりに道明寺に会えるって楽しみにしてきたんだから。

「しばらくは司、仕事で動けないみたいだから」

そう言いながらも別な期待をしてる表情を西門さんに見た。

おとなしくここで待てなんていられない。