野獣は素肌で戯れる 3

近づく台風の影響はいかがでしょうか?

今のところ私の居住区では雨もそれほど降らず、風も強くなく落ち着いています。

この話・・・

まだ3話・・・

終わらないよ~

5話程度で調整して終わらせようかなと試行錯誤しております。

車の流れはスムーズに会場まで俺たちの乗せた車を走らせる。

幾度となく招待されるパーティーの数は隣に落ち着いた面持ちで座るつくしを見れば一目瞭然。

新婚のころのこいつは落ち着かずしっかりと俺の手を握りしめていたっけ。

軽く寝息を立てだしたのは家を出て数分の頃。

俺の肩にちょこんと載せた頭を起きろと指先で突っつく俺は本気でつくしを起こそうとは思ってない。

高速を降りて都内に向かう車の中。

「寝てた?」

そんな表情を浮かべて肩から起こした頭。

「もう少し時間はあるぞ」

片腕を伸ばしてつくしの頭を俺の肩まで戻す。

「涎、垂れてたぞ」

俺の声に慌ててバックの中から取り出したコンパクトの鏡の中を覗き込む。

「嘘だよ」

俺のからかう声にムッとした瞳が俺を見つめる。

ニンマリとした笑みを浮かべた瞬間に車はゆっくりとスピードを落として止まった。

思ったより早い会への到着。

今夜は有名ブランドのジュエリーの新作発表の会場。

かなりの値段の宝石が展示販売をされる会場には次々と名の知れたセレブ達が招待される。

もちろんそのほとんどは顔なじみのはずだ。

「カタッ」

重厚な重みの音を残して開いた車の後部席。

脚を下ろしたところから伸びるレッドカーペット。

腰を伸ばして立ち上がった俺の前に現れたあいつら。

類に総二郎にあきらの見慣れた顔。

「来てたのか」

久しぶりの再会とは言えない間隔でこいつらとは顔を突き合わせる。

何の感動もねぇよ。

「牧野、久しぶり」

一瞬の間で、つくしのエスコート役を類に取られた。

車と俺の間にできたわずかな距離を見逃さずにつくしの前に腕を差し出した類。

車から半分出ていた身体は迷わずにその前に腕を差し出す。

お前の手を取るには俺の役目だろうがッ。

無数に光るフラッシュのまばゆい光。

まぶしさに目を腕でかばった数秒でつくしは類のエスコートで車から姿を現す。

この状況!

俺がSPになってしまってるぞ。

「返せ」

俺の声に乗っかるように「久しぶり」とつくしの声をかけた総二郎とあきら。

余裕で俺の邪魔をしてやがる。

類の腕から離れたつくしは俺の前でにっくりと極上の笑みを漏らす。

「怒るな」

俺をたしなめる声は甘ったるさを乗せた甘える声で俺の牙を抜く。

あきらの斜め後ろから見えたすらりとした女性。

「葵さん」

テンションの上がった声は俺からそっちに移動してハイタッチを返して会話を始めてる。

既婚者なら伴侶を連れ添ってこなきゃ意味ないのはジュエリーの展示会ならうなずける。

つくしにしてもあきらのとこの嫁さんにしてもあんまり興味をしめさない高級品。

「高ッ」

マルを数えた瞬間に夢から覚める似たような経済観を持つ二人。

ここで一番高いのを買えるのは俺だぞなんて行ってしまったら強襲をかけられるのは目に見えてる。

「今回は、なんか買わないとやばいよな」

「あぁ」

招待された招待客は見栄のために数点は買っていくのが当たり前の様相に展示会。

これまでほとんど買ってねぇのが俺とあきらんとこ。

見栄を張るつもりはないが、経営が危ないとかの噂だけは出したくねぇんだよ。

あきらと交わした視線のなかに思いは一緒なのだとわかる。

俺たちの前を歩きだしたつくしと葵。

二人は左右に並ぶガラスケースの中にちらりと視線を落としながら進む。

足は止めねぇのかよ。

ガラスケースの後ろでにこやかに笑みを浮かべる販売員は説明をしたくてうずうずしてるのがわかる。

「きれい」

ようやくつくしが足を止めてつぶやく。

「見て・・・」

葵と目配せして見せる視線の先には100万の印字が見えるイヤリング。

こいつら・・・

きっと高ッと思ってんだろうな。

億を下らない宝石だって買えるんだぞ。

結婚前におふくろに騙されて追いかけたティアラ。

500億払ったんだからな。

「買ってやる」

「いらない」

ガラスケースの中を覗き込ん出るつくしに身体を重ねながら耳元でつぶやいた俺に宝石から視線を外さないままに即答。

少しは悩め!迷え!物欲みせろ!

俺の不満な態度に気がついてる総二郎と類からクスッとして笑い声が漏れる。

「牧野、俺になにかプレゼントさせて」

つくしの横に近づいた類。

販売員にいくつかの宝石を支持してケースの上に並ばせた。

「これなんて、牧野に似合うって思うけど」

「似合わないよ」

類の前ではポッと頬を染める表情は昔と変わらない反応。

そして俺が面白くねぇのも昔と一緒の反応。

その横であきらは自分の奥さんをスマートに口説いて数点のジュエリーを一緒に眺めてる。

出来るならおれもつくしとその立ち位置にいてぇんだよ。

邪魔すんな類。

らせん階段を昇ればそこはパティー会場となっている。

一旦ここから抜けだして、食べ物とアルコールでつくしの気分を変えよう。

「行くぞ」

俺はつくしをガラスケースの前から引きはがし、類のそばから離す。

「相変わらずだな」

「変わらないね」

「司と牧野、結婚して5年は経ったよな?」

「何年経っても変わらないんじゃないの?」

るせっ。

悪いか!

俺は迷わずこいつを永遠に愛することが出来んだよ。

「だから、お前らは結婚できねぇんだよ」

つくしの腰に腕を回したまま振り返りざまにあいつらに言い放った。