第3話 届かぬ思いは誰のもの?

*司の思いつきで道明寺家一泊御泊り会開催!

今度はF4の幼馴染のアメリカ人女性登場です。

つくしどうする? 

-From 1 -

*夏休みをまじかに控えた土曜日の午後

久しぶりにF4のみんなと私は道明寺の屋敷に集まっていた。

事の起こりは3日前の大学での出来事。

英徳学院大学は高校と同様お坊っちゃん、お嬢ちゃんの集まりだ。

大学は高校より少しは外部からの編入組も多いみたいだけれども・・・。

私みたいに奨学金を受けて切実に勉強にいそしんでるのは片手で足りるほどの数しかいないだろう。

大学は高校以上に豪華な造りとなっている。

本当にここは校内か?と思うぐらいの洒落た造りのラウンジは昼ともなれば多くの学生が昼食にやってくる。

私からはとても一食に出せる金額じゃない昼食をとるために。

この金額なら我が家では一週間は食べれるといつも思ってしまう。

時々F4の誰かがご馳走してくれることもあるが、入学以来高校と同様弁当持参なのだ。

昼休みはラウンジで過ごすより中庭などで一人弁当を食べることも多い日々を送っていた。

しかし、最近はラウンジで道明寺と過ごす時間が半強制的に大学の日課として追加されつつある。

道明寺に言わせれば、学部の違う二人が会えるのは講義がない待ち時間か、食事の時間しかないのだから・・・ということらしい。

いったい道明寺は何しに学校に来てるかわからない。

ちゃんと講義を受けてるのかと疑いたくもなるが、私の誘拐事件以来、大学に来ている私を確認しないと気が休まらないらしいと西門さんがそっと教えてくれた。

私と道明寺がいつものようにラウンジで過ごしていると珍しくF4の残り3人が連れだって顔をそろえた。

F4が仲良く全員そろうのは同じ大学にみんな通っていると言っても滅多にないレアな出来事だ。

案の定、周りはざわめき立ち遠巻きにキャーキャー騒がれる格好となる。

道明寺と二人の時は、道明寺が交際宣言をしているためか、それとも道明寺がにらみを利かせているせいかわからないがそこまで騒がれなくなってきた。

が、F4に囲まれている私に対する風当たりの強さは高校の時とほとんど変わりない。

何を言われようが動ずる私ではないが注目されることはやっぱり避けて通りたい。

そんな私の気持ちなんてお構いなしなのがこのF4なんだけどね。

「相変わらず二人仲いいね」

「最近は、喧嘩はなし?」

いつもいつも、美作さんと西門さんは私たちをからかうようにちょっかいを出してくる。

それをウザそうに対応する道明寺の反応を楽しんでるのが私にもわかる。

「久しぶりだね」と花沢類が私に声をかける。

花沢類には昨日も会っている私はどうリアクションしてよいのかわからず一瞬で固まってしまってた。

「おう、類!牧野の隣に座るな!」

「座るなってここしか空いてないでしょう」

「じゃあ俺が座てやる」とまたまた西門さんは道明寺をからかい気味に反応する。

丸い大理石できたテーブルはちょうど5人がけだ。

誰かが私の隣に座る形になるはずなんだけど・・・

結局は花沢類が私の隣に座ることを「牧野に触るなよ」とくぎを刺すことを一言付け足しながら、渋々道明寺が許す感じで決着する。

みんなでじゃれあってるようにしか見えないのは相変わらずだ。

それは、みている私を楽しい気分にさせてくれる。

たわいない会話をしている最中、何を思ったか道明寺が突然思わぬ提案を言いだした。

「久しぶりにみんなで一晩楽しく過ごさねえ?もち牧野も一緒な」

一瞬顔を見合わせるF3。

私はというと持っていた箸を落としそうになるのを必死でこらえ固まってしまう。

「別にどうでもいいよ」と相変わらずの反応を示す花沢類。

ただ単なる道明寺の気まぐれならまだいいが、もし何か考えがあって発言したのら問題大だ。

なんせ私には思い当たる重大事件が一つある。

大学に入学する前、道明寺は一時NYに帰って行った。

その前日、道明寺の屋敷を訪ねていた私を押し倒す?行動に出た道明寺に私は思いっきり待ったをかけた。

道明寺は我慢してくれたけど旅立つ前に私に言い残した「続きは今度な」という約束はいまだに実行されてないままだ。

私の頭の中はパニック状態で考えがまとまらない。

でも、道明寺の性格考えたらそんな深い考えあるはずないと断言できる!

イヤ!断言できないかも・・・

そのまま普通に何の考えもなしに、みんなの前で「牧野は俺の部屋で寝ろ」なんて宣言されそうだ。

私の様子を敏感に感じ取ったのか「それ面白そうだな、のった!」と西門さんの言葉に相槌を打つ美作さん。

何やら二人の反応と含み笑いにいやな予感を感じてしまう。

参加したくないと思いつつも私に拒否権なんてあるはずない。

こうして道明寺家一泊御泊り会の開催が決まってしまった。

-From 2 -

午後4時を過ぎるころ、バイトを終えた私は道明寺の屋敷へと向かう。

私の足取りは重く少しでも遅くたどり着きたい気持ちが見え見えだ。

今日のお泊まり会・・・

なんとかキャンセルできないかと考えた。

バイトで忙しいと言ってみたが・・・

バイトで牧野の時間を縛るようなら俺がその店買い取ると道明寺が言いだした。

高校の頃、私と話を静かにするためだけにファミリーレストランを買い取った前歴を私は思い出し、慌てて「バイトなんとかする」と心ならず言いなおした。

パパが年頃の娘の泊まりは許さないかもと言ってみたが・・・

「喜んでOKしてくれた」と笑顔で答える道明寺にグーの根も出ない。

なんで簡単にうちの親OK出すと怨みたくもなる。

こうして私は外堀を着々と埋められ結局渋々参加を了承する運びとなった。

道明寺の部屋に案内されるとすでにF4勢ぞろい状態。

4人並んで微笑する姿は思わず見入ってしまう雰囲気で、さすがだと思わずにはいられない。

絵になるよな・・・と思わず見とれてしまった。

「なにボーっとしてる。こっち来い」

「べ べッにボーとなんか・・・」

慌てる私のそばに歩み寄った道明寺が私の手を取る。

自然に私もみんなと一緒の一こまに取り込まれていく感じだ。

「お前のために今日はたくさん料理も作らせたからな」

私がいつまでも食べ物でつられると思われているのは心外だ。

が・・・

和食、洋食、中華と一体誰がこんなに食べる?と思わせる量が、バカでかいテーブルも隠れるほど並べられている。

料理をみて驚いている私に道明寺は満足そうだ。

そんな時、部屋のドアが「コンコン」とノックされた。

「失礼します」と秘書の西田さんがドアを開けた。

「只今NYの会長から電話がありまして、ジュエル様のお嬢様がこちらにおいでになるとのことで、くれぐれも失礼のないように対応をお願いするとの伝言です」

「ジュエルて・・・ミッシェルのことか?」

「はい、NYで会長にお会いしたら、日本が恋しくなったということで急に来日を決められたようです」

「で・・・いつ来る?」

「今日の夕方にはお着きになる予定だそうです」

「ミッシェルて誰?」

「ああ、ジュエル家は道明寺と昔から付き合いのある家なんだけど、ミッシェルは小さい頃から夏は家族で道明寺の家に滞在して過ごしていたんだ。俺達も良く遊んだよ」と花沢類が説明してくれた。

F4と外国の女の子が遊んでる姿なんてあんまり想像できない。

特に道明寺となんてありえないと思うと笑ってしまいそうだ。

「なんか面白くなってきそうだな」と美作さんと西門さんがひそひそと話し始めた。

この二人・・・

最近私と道明寺で遊んでるのが態度にみえみえでちょっと嫌な感じが私の頭をかすめた。

-From 3 -

しばらくして、私達の前に姿を現したはストレートの金髪に碧眼長身でどこからが足?と思えるほどのボディーの持ち主で、ハリウッドスターにも負けない絶世の美女だった。

静さんにしても道明寺のお姉さんにしてもどうしてこうもF4の周りには容姿端麗の人が多いのだろう。

私は例外だけど・・・

その美女は笑顔で道明寺に抱きつくと頬に軽く唇をあてた。

そして残りのF3にも同じような抱擁を繰り返す。

私はまるで映画の一シーンをみてるようなそんな感覚に陥ってしまった。

「初めて見る顔ね。ミッシェルて呼んでね」

その美女が私を見つけてにっこりほほ笑む。

この笑顔に思わずドキッとときめく私は何?と思ってしまった。

「あ・・・ハロー ハウ・・・?」

今・・・日本語だったよね?

苦手な英語で無理に対応しようとして彼女が日本語で会話していることに気がつき慌てる私

「彼女日本語うまいから牧野は無理して英語しゃべることないよ」と花沢類がクスクス笑う。

「えっ? もしかして類の彼女?」

「違う!俺んだ!」

ミッシェルの言葉に慌てた道明寺が私のそばに飛んできた。

「ちょっと苦しい・・・」

焦って抱きしめたせいか道明寺の右腕は私の首に巻きつき羽交い絞め状態で息もできない。

「こいつ俺の彼女だからよろしくな」

私の様子に気がつき慌てて腕を放した道明寺が、自分の失敗を隠すかのように早口で私を紹介した。

彼女と言われてうれしいはずなのに、この状況では私はとんだピエロ状態だ。

今まで笑いをかみ殺していた美作さんと西門さんの笑い声が部屋中に響き渡った。

「もう、そんなに抱きつかなくていいでしょう?」

私は道明寺を睨みつけながら叫んだ。

「なんだ、お前?類の彼女に間違われたままでいいのかよ!」

「誰もそんなこと言ってない!」

「じゃあ!なんなんだ!」

道明寺のこめかみに青筋が浮かんできた。

「いつもの痴話げんかだから気にしないで」

驚きながら二人の様子を見つめるミッシェルに類はそっと告げた。

「私・・・本当に類の彼女だと思ったんだけど・・・」

「それって君の願望じゃないの?君が昔から司を気にっているのを僕らは知ってるからね」

「司以外は・・・」

「類ってそんなに意地悪だった?」

「だったら・・・私も言わせてもらうわ」

「そんなやさしい目で彼女を見つめていたら・・あなたの気持ち・・・あの二人にばれちゃうわよ」

ミッシェルの口元は笑っているが真剣な瞳を類に投げかける。

「忠告はありがたいけど、とうの昔に俺の気持ちはみんな知ってるよ。

牧野を取り合って司とケンカしたこともあったけどね」

「結局、俺は牧野にふられて、そして牧野は司を選んだ。ただそれだけの話」

「よくそんな状態で我慢できるわね」

ミッシェルは納得できないという表情で軽くため息をつく。

俺には牧野に会うことのできない日々の方が我慢できないかもしれないと思いながら、類は司とつくし二人の様子を見つめた。

「お二人さん、この辺でお終い、ミッシェルが驚いてるよ」

私と道明寺の言い合いに聞きあきたのか西門さんが割って入る。

ミッシェルという言葉が効いたのか、いつもより素直に道明寺が西門さんの言葉を受け入れた。

「しかし、昔からミッシェルは鼻がにおうよな、食事時を狙って来るんだから」

間の悪さを取り繕うためか急に道明寺がミッシェルに話しかける。

におう・・・?

「それ言うなら鼻が利くだ」と美作さん軽くつっ込みを入れる。

「失礼ね、二十のレディーつかまえてそれが最初に言う言葉」

「司に女性が喜ぶ言葉を求めるなんて無謀だね」

「それは僕の分野だからね」と西門さんがミッシェルの手を取り手のひらに軽くキスをする。

やっぱり西門さんの女たらしは健在だ。

「総二郎は相変わらずね」

慣れてる様子でミッシェルもそれをさらりと受け流す。

ミッシェルて私と1つ違い?

もっと上かと思っていた。

比べるつもりはないがその事実にショックな気持ちがちょっと湧きあがる。

私って・・・

胸・・・ないし、

色気・・・ゼロだし、

女性の魅力最低だよね。

「ま・き・の」

「何考えてるの?別に気にすることないよ。牧野は今のままが一番なんだから」

「えっ」

驚く私ににっこりと花沢類がほほ笑む。

私の考えてることって・・・

知り合ったころからだけど・・・

花沢類にはなんでわかっちゃうんだろう。

そして何気なく自然に私の気持ちをフォローしてくれる。

不思議だけどやっぱりこの人の私に対するやさしさは、道明寺とは違った安心感を私に与えてくれる。

花沢類はポンポンと私の頭に手を置くと、ミッシェルを囲む輪の中に私を連れて入ってくれた。

そこからはみんなの子供の頃の話で盛り上がる。

みんなでかくれんぼしていて、ミッシェルと道明寺が見つからず気がつけばそのまま二人暖炉の中で爆睡していた話なんて、普通そこまでほっとくか!と本気で思ってしまった。

見つかった時はほとんど墨で真っ黒状態だったらしい。

私の知らないみんなを知っているミッシェルが羨ましく思える。

話も落ち着きを取り戻したころ客間の用意ができたと召使の人が知らせてきた。

「つくし、私が案内してあげる。いいでしょ司」

ミッシェルは、私の手を取ると当たり前のように何も言い返せない道明寺を残して部屋を出た。

私としては危険回避?できたことに少なからず安堵感が広がる。

ミッシェルが案内してくれた部屋はやっぱり客間と言っても我が家がそのまますっぽり入る大きさだ。

お手伝いとして住み込んでいたときは、物置小屋と道明寺の部屋以外はほとんど入ったことなかった。

だから、初めてみる客間の豪華さにも威圧感を感じる。

「つくしは、司と高校で知り合ったのよね?」

「ええ、学年は一つ下でしたけど・・・」

赤札貼られて、いじめられて・・・なんて口が裂けても言えない。

「やっぱり・・・日本人は日本人が好きなのね」

ミッシェルがぽつりとつぶやく。

「えっ・・・?」

「私が日本語を覚えたのは、司の国の言葉だから・・・必死で勉強したわ」

「ずっと司のこと好きだった」

「本人に言ったことなかったのに・・・今回は告白するつもり」

「気持ではあなたに負けないから」

「つくしには言っておきたかったの・・・」

「陰でこそこそするのは私には無理だし、つくしに対してフェアじゃないから」

「おやすみなさい」

そういうと彼女は私の部屋のドアをパタンと閉めた。

これって宣戦布告だよね・・・?

道明寺のこと真剣に愛している人が私のほかにいる・・・

そう思ったら・・・

せつなくて・・・

苦しくて・・・

胸の奥でチクリと音がした。

言い表せない思いがあふれ出す。

でも・・・

ミッシェルの気持ち・・・

あの人の胸の痛みはこんなものじゃないよね。

久しぶりに会った思い人に恋人として知らない女性を突然紹介されたのだから・・・

私より・・・

きっと彼女の方が痛いはず・・・

道明寺て・・・

彼女の気持ちに気が付いてないよね・・・?

気が付いていたのはF3だけ?

そう思ったら昼間の西門さん美作さんの反応に納得がいった。

-From 4 -

「司、牧野をミッシェルに持っていかれたままでいいのか?」

「はぁ・・・?」

「だって今日の計画・・・本当は俺達ダシだよな?」

司を間に挟んで総二郎とあきらが詰め寄る。

「ダシ・・・?てなんの?」

「お前!牧野と一晩一緒にいたくてこんな突拍子なこと言いだしたんじゃないのか?」

「もしかして・・・何も考えなしの・・・本当に下心なしか?」

「心に下も上もないだろうが!」

司の反応に思わず顔を見合わせ絶句する二人。

やっぱり・・・

こと女のことに関しては司はアホだわと思わずにはいられない。

「本当に今日、牧野と別々な部屋におねんねするつもりだったのかよ」

「あの様子じゃあ牧野の方は絶対考えていたぞ!」

牧野は1泊お泊まり会をどう回避するかを考えていた様だったけど・・・

そんなことは司に教える必要はない!と俺たちは思っている。

「よく考えてみろ!お前のベットはキングサイズ、それに牧野とのことは親も認める仲だろう」

「この状態で、なんで別々に寝る事考える?」

「普通ありえねえぞ!」

えっ・・・

牧野考えていた?

本当か!?

確かに・・・

こいつらの言うことも一理ある。

そうだよな・・・

牧野も俺とのこと考えてくれているはずだ!

この前はちょっと失敗したが今度は大丈夫かも・・・

こんなチャンス二度とない!

かも・・・しれない・・・

今日うまくいかなきゃ、この先二度と牧野が俺んちに来なくなることも・・・ある・・・

二人の言葉に顔面七面相気味の司だ。

「確かに、お前らの言うとおりだよな」

「俺と牧野が一晩一緒に過ごしても何の問題もない!」

突然張り切りだす司。

ようやく司の思考が総二朗とあきらの回答に行きついた。

「よし!俺、牧野連れ戻してくる!」

「別に連れ戻さなくても牧野の部屋でもいいんじゃない?」

「ああ、わかった」

司は転げ出るように自分の部屋を出ていった。

「どうなると思う?」

「牧野に蹴られて戻ってくる方に一票!」

「俺もそっちなんだけど・・・・それじゃあ賭けにならねえな」

「二人ともあんまり司をけしかけない方がいいんじゃない?」

「ミッシェルのことを牧野がどうとらえるかで反応変わってくると思うしねっ」

「相変わらず真面目な反応だな類は」

だからおもしくなるんだと思う総二郎とあきらだった。

部屋を飛び出してみたものの・・・

俺は問題に行きあたった。

うちの客間の数半端じゃない!

一体どの部屋に牧野をミッシェル連れて行った?

ミッシェルが泊まる部屋はいつも決まっている。

牧野の場合物置は小屋しか知らねえからな。

片っぱしからドアを叩いてみるっしかねえか・・・

そう思った時、廊下の片隅に人影が見えた。

「ミッシェル、何してるんだ?」

「司こそ何してるの?」

「ここは俺んちだ、俺がどこで何してようといいだろう」

ミッシェルに牧野の部屋聞き出せば問題は解決なのだが、やっぱりなんか聞けねえ。

「相変わらずね、司は全然やさしくないんだから・・・」

「あの子・・・可愛い子ね」

「真っ直ぐで素直な瞳しているわ」

そうなんだよな・・・

あいつにあの瞳で見つめられると正直俺は、体の底から体中に熱が急速に広がるのを抑えることができなくなる。

だから俺はあいつを見つけるとすぐに抱きついてしまう。

牧野は嫌がるけど、裏を返せばこれは牧野のせいだともいえるのに、あいつは俺の気持ちを全然わかってねえ。

牧野のこと考えるとどうしても顔がにやついてしまう。

俺は顔が見られないようにミッシェルの前を通り過ぎた。

「私・・・向こうで付き合ってる人にプロポーズされてるの」

「そうか」

俺の頭の中は牧野の思いに占領されミッシェルの言葉に上の空の返事しかできねえ。

「もちろん彼のこと好きだけど・・・どうしても私・・・比べてしまうの・・・」

「小さい頃から好きだった・・・その人の言葉だから日本語も覚えた。ずっと恋してる」

「司のことが忘れられなかった・・・好きなの」

司の背中越しに話を続けていたミッシェルが覚悟を決めて司を振りかえる。

「えっ・・・!居ない・・・」

いつの間にか司が消え、廊下にはただ一人ポツンとミッシェルが取り残されていた。

-From 5 -

「牧野!何こそこそ覗いてるんだ!」

俺は客間のドアを小さく開けこちらを覗いてる牧野の視線とぶつかった。

俺はすぐさま牧野の部屋に入り込むと、慌ててドアを閉め俺様を排除しようとする牧野の腕をつかんで部屋の奥に押し込んで、ドアをパタンと閉めた。

「別にこそこそしてた訳じゃない、話声が聞こえたから・・・

ドア開けたら・・・

道明寺とミッシェルがいたから・・・」

「もしかして俺たちのこと気になった?」

「別に気になってなんかない!?」

心はどうしようもなくざわめき立ってたまらないのにつくしの口からは強がりの言葉しかで出てこない。

「お前・・・妬いてるだろう?」

こいつのしどろもどろしている姿を初めて見た気がした。

「なんで、私が焼かなきゃいけ・・・えっ・・・」

つくしが言い終わらないうちにそっと後ろから司の手が伸びやさしくつくしの背中を包む。

「もっとお前にやきもちやかせてぇッ」

そう言いながら司は両腕にギュッと力を込めつくしを抱きしめた。

「さっき・・すごくしまりのない顔してた・・・」

つくしは自分の胸元に置かれた司の腕をギュッと責めるように両手で握る。

「えっ!?」

「ミッシェルと話してる時・・・」

「あれは・・・」

「その・・・なんだ・・・」

「ミッシェルがお前のこと可愛いって誉めるから・・・」

「自分の彼女を誉められて、うれしくないやついねえだろ」

司の唇がそっとつくしの頬に触れる。

さっきの心のざわめきが嘘のように静まって司の気持ちが暖かい風のようにつくしの体をふきぬける。

司の気持ちにうれしさを感じながらもミッシェルに宣戦布告されてるだけに、さっきの二人の会話がどうしても気になっしまう。

その気持ちをやっぱりつくしは隠すことができないでいた。

「でも・・・本当にそれだけ?」

「ああ、ミッシェルは俺にとってはただの幼馴染で、それ以下でもそれ以上でもねえ」

「それにミッシェルはアメリカの彼氏にプロポーズされてるみたいだしな」

「じゃあ、なんでミッシェルは日本に来たの?」

つくしは聞かなくてもいいことを聞いてしまったとわずかに後悔した。

司の鈍感さにミッシェルに同情した自分が言わせてしまってた。

「なんでって・・・」

俺が知るわけねえだろう!

ちょっと待て・・・

そういえば・・・

ミッシェルなんかほかにも言ってなかったか?

日本に忘れられない奴がいるとか何とか・・・

この辺は俺は牧野の思いでいっぱいいっぱいだったから正確には思い出せないんだけど・・・

そいつの為に日本語も覚えたとかいないとか・・・

あいつに日本語教えたのは類だよな・・・

今日もミッシェルが一番しゃべっていたのは類だったし・・・

の時俺は気がついた。

「ミッシェルは類が好きなんだ!?」

「えっ!?」

思いもよらぬ司の言葉に驚きの表情でつくしは思わず大声をあげてしまった。

「今・・・何て言った?」

つくしは自分の体を抱きしめていた司の腕を振り払い、ふたり向き合う格好になった。

「だから、ミッシェルは類に惚れていると言ったんだ」

思わずつくしは司の顔をまじまじと覗きこんでしまう。

いったいどこをどうとらえれば、そんな答えが出てくるのかつくしには全く理解できない。

ミッシェルは確かに司が好きだとつくしに宣言したのだから・・・

「なんで・・・花沢類なの?」

「なんでって・・・今までのこと考えてたらそう思うしかねえだろう」

今までの事ってどんなこと?

司がそう思い込む態度をミッシェルが取っていたとは思えない。

F3はミッシェルの気持ちに気が付いていたのだから・・・。

そう・・・司以外は・・・。

こいつの思考回路て私には予測不能だわ。

「あーーーおまえっ!ミッシェルが類に惚れていたらなんか困ることあるのか!」

「まさか まだ類のことを・・・」

いきなりまた何を言い出すかと思ったら・・・

「そっ!それはない!」

眉毛が吊り上りだした司に慌ててつくしは必死で否定する。

なんでそう花沢類と私を結びつけたがる?

またそっちに考えがいったか・・・

そう思ってきたら頭が痛くなってくらっとしてきた。

さっきまでの甘いムードも打ち消されている。

私にやきもち妬かせせるんじゃなかったの?
やきもち妬いてるのあんたじゃない!

御蔭でミッシェルに対する私のやきもち度は半減してしまった。

「じゃあ、証明しろ!」

「証明て・・・なんの?」

「類のことはなんとも思ってねえ、俺のことだけ思ってるていう証明だ」

そんな証明どうしろというのかつくしには司の考えが全く見えない。

司の威圧感で思わずつくしは後ずさってしまう。

目の前に司が数センチのところに迫る。

移動場所をなくしたつくしは、体の平行感覚が崩れ倒れこんでしまった。

柔らかなふっくらした感覚がつくしの全身を包む。

ベット!?

司と二人倒れ込んだ格好だ。

この状態・・・やばくない?

そう思った時、司の唇がつくしの唇の上に降ってきた。

なんだこの感触・・・

すげー柔らかくて・・・

息が出来ねえ!

司の目の前にピンク色の景色が広がる。

クッションじゃねーか!

つくしが咄嗟にそばにあったクッションを手に取ると二人の唇の間に挟んのだ。

間一髪入れず力いっぱいつくしが思いきり司の腹を蹴りあげる。

たまらず司はベットから転げ落ちる格好になった。

「てめぇー俺を殺す気か」

後頭部を抑えながら司が立ち上がる。

「最低」

「あッ?」

「最低!最低!最低の馬鹿男!」

俺をバカ呼ばわりするのはこいつぐらいのもんだ。

でも・・・

こいつの怒りの意味が俺には解かんねえ。

困惑気味の表情で司はつくしを見つめた。

「証明て何よ!」

「あんたと私の関係って証明しなきゃダメな様な関係なの!?」

「試すためだけにあんたの思い通りになるなんて真っ平御免だからね」

つくしの手にはいつの間にか枕が握られ司の頭上に思いっきり何度も振り下ろされる。

「おい、よせ、わかったから、止めろ!」

司は振り下ろされる枕を両手で防ぐのが精一杯だ。

こいつのこんな激怒の仕方・・・

高校で殴られて宣戦布告された時以上だ。

俺って・・・また・・・知らないうちに牧野の地雷を踏んだのか?

こんな牧野を介入するのは、なんの準備もせずにエベレストを登るより難しい。

気がつけば部屋の入口まで司は押しやられる格好になっていた。

「出てって!」

刃物を突きつけられたような最終勧告を受け、司はつくしに部屋を追い出される羽目となった。

-From 6 -

なんで俺が追い出されなきゃいけねえ!

ここは俺んちだぞーーーーと、叫んでみたところで目の前のドアが二度と開くことはなく、結局、俺は自分の部屋に戻るしかなかった。

俺は荒々しく部屋のドアを開け、目の前のソファーにドカッと座り込んだ。

こっちをにやけた顔で見ているに総二郎とあきらが目に入る。

「お前ら、まだ居たのか」

「そんな言い方はないだろう、類は寝るて言って出て行ったけどね」

「一人でここに帰ってきたという事は・・・牧野とうまくいかなかった訳だよな」

こいつらの意味深な顔が俺の傷を押し広げ、ずかずかと遠慮なくいりこんでくる。

「全部てめえらのせいだ!」

今日はこいつらにそそのかされて、牧野に蹴られた。

二人が何も言わなきゃ俺はこんなめに遭わずに済んだはずだ。

「おいおい、なんで牧野とうまくいかなかったことが、傍観してた俺たちのせいになるんだ?」

「うるせえ!お前らのせいと言ったらお前らのせいだ!」

こいつらを怨まなきゃやってられねえというのが、俺の本音だ。

「俺たちに八つ当たりすんな!」

「最初からうまくいかなかった訳じゃあなんだろう?なんで牧野に拒絶されたか考えろ」

確かに・・・

最初はいい雰囲気だった。

たぶん・・・

牧野もそう感じていたはずだ。

ミッシェルと俺がいるところを見て、牧野はやきもち妬いて・・・

牧野の戸惑ってる姿が愛しくて・・・

かわいくて・・・

絶対こいつを離したくない!そう思った。

牧野を抱きしめていたら、あいつが・・・

なんかミッシェルの事で変なこと言いだして・・・

「ミッシェルは類が好きなんだと言ったら、あいつの態度が変わったんだよな」

俺の言葉に反応した牧野は間の抜けた顔でまじまじと俺を見ていた。

「それ・・・本気で言ったのか?」

こいつらもなに同じように呆けた顔で俺を見ていやがる。

「ああ、さっきミッシェルと話していて確信した」

「確信した!?」

どう考えてもミッシェルは昔から司オンリーだったぞ!

牧野と二人でどうしてミッシェルの話題が出てくるのかもわからない。

俺たちの予想より事は微妙に違ってきている。

この複雑な関係どうなるのかと一抹の不安を感じる総二郎とあきらだった。

-From 7 -

眠れなかった・・・
夜が白み始め窓に朝の光が差し込みだす。
私はベットから起き上がると頭を軽く振り寝不気味の体を無理やり起こした。
道明寺を追い出した後、ベットに入ったものの考えがぐるぐる空回りしている様だった。
怒りが収まり冷静に考えてみると、どうしてあそこまで怒りが爆発したのかわからない。
あいつのやきもちはいつものことで・・・
証明しろと私に迫まったのも言いかえれば、そのやきもちが根本にあるわけで・・・
本当に花沢類への私の気持ちを疑っている訳じゃない。
それは分かっていたはずなのに・・・
道明寺と会えない日があるとさびしく感じる自分がいることも知っている。
すぐに私を抱きしめるあいつに、いつも「ヤダ」というけど・・・
それは、けして本心じゃない。
あの瞬間、私に対するあいつの愛情が私の全身に幸福感をもたらしてくれる。
「あれじゃあ・・・八つ当たりだよね」
誰に聞かせるともなく自然に唇から声が漏れる。
ミッシェルの思いに全く気がつかない道明寺の鈍感さにホッとしたのも事実だ。
道明寺の自分に対する愛情は本物だと思う。
その優越感が自分に宣戦布告したミッシェルへの同情心も起こしている。
私に同情されてミッシェルが喜ぶはずがない。
そう思ったら、あいつにも素直になれずに気がついたら部屋からあいつを追い出していた。
道明寺が悪い訳じゃない。
私はミッシェルに少しでも優越感を感じた自分が許せなかっただけだったんだと気がついた。
愛情と懺悔のはざまで気がつけば朝を迎えた。
なんでこんなに悩まなければいけないんだろう・・・。
恋は盲目て言うけれど・・・
そうなることができればどれだけ今は楽かと、ふと思ってしまった。

顔を洗って身支度を整えたころ朝食の準備ができたと知らせが来た。
朝食場所に案内されると花沢類が一人あくびをこらえながらつくしを迎え入れた。
「まだ、みんな来てないんだ」
道明寺とミッシェルに最初に会わずにすんだことになぜかホッとした。
「みんなゆっくりだと思うよ。昨日は遅くまで司にあきらと総二朗付き合わされていたみたいだしね」
「俺は早めに退散してて正解だった」と類はにっこりつくしにほほ笑む。
「なんかあった?」
「えっ?」
「顔に眠れなかったて書いてあるから」
「もしかして原因はミッシェル?司との喧嘩だけなら牧野そんなに悩まないでしょう」
花沢類の言葉はなんでこうすんなり私を楽にしてくれるんだろう。
何をどう取り繕ってもこの人には全部見透かされてしまうような気がする。
「ミッシェルが司を好きなことみんな知ってるよね?」
つくしは思いきって問いかける。
「司以外はね。牧野が知っているのは予想外だったけど・・・」
「ミッシェルが・・・・私に黙って告白するのはフェアーじゃないて教えてくれたの」
「ミッシェルらしいね」
「まあ、司がミッシェルの気持ち受け入れずはずはないし、牧野が悩むことないんじゃない?」
「それはそうなんだけど・・・その何て言うか・・・」
「うまく言えないけど、安心している自分が許せないみたいな・・・
ミッシェルの気持ちに気がつかない道明寺にも怒っている自分がイヤという感じがして・・・」
やっぱりうまく話すことなんて無理かも・・・
なんだか類も呆れているような気がして類の顔をちゃんと見ることがつくしにはできない。
「ミッシェルに同情してる自分がイヤてこと?」
自分の気持ちがよく類に伝わったなと感激しながら、その驚きとうれしさの中で私は慌ててこくりとうなづいた。
道明寺だったら絶対無理だ。
「そんなことどうでもいい」と一言で片づけられそうな気がする。
「相変わらずだね牧野は・・・」
「そんなところがらしいと言えばらしいんだけどね」
「それはそれでしょうがないんじゃない」
「人の気持ちなんて理屈で替えられるものじゃない。頭では分かっていてもどうしようもない想いってあるわけだし・・・」
「それって、一番牧野が経験してきたことじゃないの?」
そう言って類はつくしの顔を覗き込んだ。
ビー玉のような瞳で見つめられると、高校の頃の想いが戻ってきそうだ。
花沢類に恋をしていたころのトキメキ感・・・
それはやっぱり素敵な理想の王子様にあこがれる初恋だった。
道明寺と知り合って・・・
いつの間にか好きになって・・・
道明寺を諦めようとして、諦めきれなくて・・・
泣いて眠れなかった夜を幾度すごしただろう。
理屈じゃ割り切れない想いをいっぱいしてきたんだってことを私は忘れていた。
それは・・・
今が幸せすぎるからかもしれないね。
「ありがとう・・・花沢類・・・」
ありがとうの五文字の言葉だけでは感謝しきれないはずなのに、それ以上の言葉が今は浮かんでこない。
花沢類に話しただけでなんだか沈んだ気分が半減してくるから不思議だ。
その時、私は重大なことを一つ思い出した。
道明寺はミッシェルが花沢類を好きだと思いこんでるということを。

-From 8 -

「よっ!おはよう」
「めずらしく類が早いな」
「枕が変わると熟睡できなくて」
どこでも眠れる類にそんなはずはないだろう。
あくびなんかしているけどわざとらしさが見え見えだ。
やっぱり牧野のこと気になっていたのかとあきらは思った。
総二郎も同じ考えなのかあきらの顔をチラッと見る。
「牧野、昨日はあれから俺達大変だったんだからな。司のお・も・り・」
「えっ」
「まあ、機嫌は直っているから心配するな。これ貸しな!いつか返してもらうぞ」
総二郎が牧野の耳元で囁く。
「あ・・・ありがとう。一応お礼は言っとく」
つくしは総二郎の言葉に思わず顔が熱くなる。
「てめえら!牧野に近づくな!」
いつの間に部屋に入ってきたのか司は牧野の腕を取ると自分の方に思いっきり引き寄せる。
つくしは体制を崩しながらもすっぽり司の胸の中へ収まる形となった。
「おーーーもう牧野を一人占めか、昨日の不機嫌さはどこへ行ったのかな?」
「うるせえ、俺は別に昨日のことなんて覚えてねえ」
「「あーっ」」
「司それはないんじゃない?昨日・・・俺達はあんな事にこんな事やって慰めてやったよね」
あんな事・・・こんな事・・・て・・・
二人にどんな風に道明寺が慰められたのか・・・
道明寺は二人に詰め寄られて逃げ腰になっている。
えーーーーどんな慰め方されたの!?
そう思ったらつくしの顔が急に熱くなってきた。
「お前ら俺の話聞いていただけだろうが!」
「牧野に変な想像させるな!」
司はまじで額に青筋を浮き上がらせ怒りだしている。
「「プッ!ハハハハハ」」
その様子に総二郎とあきらは我慢できず笑い声をあげた。

ミッシェルが最後に現れ全員が揃う。
道明寺は機嫌よく自分でみんなの座る場所を勝手に指定しだした。
もちろん私を自分の隣に座らせる。
向かい合って花沢類とミッシェルが並んで席についた。
私の目の前にミッシェルがいる格好だ。
西門さんと美作さんには勝手に座れと指示を出している。
道明寺の考えている事って・・・やっぱり単純だ。
私はなんか落ち着かず出される食事の味も全く楽しめない。
「なあ・・・ふたり結構いい雰囲気でしゃべってるだろう」
突然道明寺が私に話しかけてきた。
私はほとんど顔も上げることなく皿を見つめてる格好だ。
道明寺から見たら食事に集中してるようにしか見えないだろう。
顔を上げるように道明寺が私を促す。
「まあね・・・」
二人の話す内容は聞きとれないが、確かに楽しそうに会話を楽しんでるようには見える。
ただそれだけの感じなんですけど・・・
「普通じゃないの?」
「バカだな、だからお前は鈍感なんだ!俺の考えは間違いない!」
鈍感なんて間違っても道明寺にだけは言われたくない言葉だ。
もしかして・・・
この感じだけでミッシェルの思い人は道明寺の頭の中では花沢類に決定してしまったのだろうか。
道明寺は私がちょっと他の男性としゃべっただけで、嫉妬丸出しの態度を取る。
それはF3も例外ではない。
道明寺のやきもちって・・・
この単純な思考回路で決定されていることに気が付いてしまった。
思わず私は昨日に引き続き頭痛を感じ始めた。


「ねえ・・類?」
「なに?」
「私の存在ってつくしを傷つけたかしら・・・」
「いろんな意味で悩んでいたことは否定しない。
でも・・・
牧野は君の痛み感じとって牧野の心の大半を占めていたみたいだよ」
「まあ、君がそんなに気にすることはないと思う。牧野は君が思ってるより強いから」
「類、あなた変わったわね。
昔は他人のことなんてほとんど興味なかったのに・・・」
「あんなにやさしい目で誰かを見つめている司も初めて見る気がするけど」
「二人を変えたの・・・つくしなんだよね」
「俺たちだけでなく、総二郎もあきらも少なからず感化されてる」
「私じゃ無理てことか・・・」
ミッシェルの口から諦めの言葉とため息が漏れる。
「もう日本には用事ないから今日にでも帰るわ」
「届かぬ想いの閉じ込め方なら教えてあげようか?」
「やっぱり類って意地悪ね」
そう言ってミッシェルはやさしく類にほほ笑んだ。


ミッシェルを空港で見送ると言って、私と道明寺を残し3人は出て行った。
玄関で見送る私に「司はあなたにあげる」とミッシェルは言い残して、笑顔で帰って行った。


道明寺のバカでかい部屋に戻るとポツンと二人残された感じだ。
いつもよりこの部屋が広く感じるのは私の気のせいだろうか。
私はソファーに座ってはいるが、なぜか落ち着かない。
「あいつ何しに来たんだ?類に振られたか?」
結局ミッシェルの気持ちに道明寺は全く気がつかず、いまだに勘違いのままだ。
私の口から教えてみたら道明寺は一体どんな顔をするのだろう。
そう考えたら自然と私の口元に笑顔が戻った。
「牧野・・・」
道明寺は私に近づくと二人の肩が触れ合う距離に腰を下ろした。
「昨日は・・・ごめん」
「お前が謝るなんて珍しいな、雪でも降るんじゃないか?」
「まだ7月だよ」私は小さく笑う。
私の笑顔に答えるように目の前には道明寺のやさしい笑顔が広がる。
「俺も・・・悪かった」
道明寺の上半身がかすかに動ごく。
そして、両手で私を引き寄せ抱きしめた。
私の顎に道明寺の右手がやさしく触れる。
次の瞬間、道明寺の指先が私の唇の形を確かめるようになぞっていく。
目を閉じて待つ私の唇を、柔らかな感触がそっとふさいだ。
私の身体中を甘い香りが覆う様だ。
何度も何度も確かめるように長く、深く求められるままに口づけを繰り返す。
感じたことのない感覚は体中を駆け巡り、道明寺のなすがままに支配されていくようだ。
「牧野・・・俺もう我慢しねえ、お預けはなしだからな」
いつの間にか道明寺は私を抱きかかえるとゆっくりと歩き出していた。
私の瞳の中にキングサイズのベットが映し出される。
道明寺がベットの上にそっと私を横たえた。
あいつの真剣な瞳が私をやさしく見つめている。
私は不安を打ち消すように覚悟を決めて静かにまぶたを閉じた。 

                                   END

完結です♪
最後までお付き合いありがとうございました。
さてこの後の結論は・・・
①祝!無事に司とつくし一線を越えることができた。
②原作にあるようにつくしが熱出して結局司は我慢させられることに。
③2度あることは3度ということで司が熱だして、つくしに薬飲まされ、看病され・・・
 腕枕の添い寝状態で朝を迎える。
④その他・・・F3乱入、タマ&椿乱入なんてのもあり?かな

結果発表は4話以降で!なんてね 
本当に書いてたりして・・・(*^_^*)

 



拍手コメント返礼

まあも 様

初期の頃に書いた作品、拍手コメいただいて読み返しました。

案外初期の頃のお話のほうが面白いかもしれません。

拍手ありがとうございます。