第6話 Troublemaker 3

第6話 Troublemaker 2からの続きです。

*-From 1-

ダッダッダッダダーダー ダダダー ダダダ ダダダー♪

今にもこのドアの向こうからダースベーダー登場BGM付きで道明寺が現れそうだ。

どうする?どうする?

どうするっーーーーーーーー

私の頭の中で四文字ひらがな飛びまくりだ。

「殺されはせんだろう」って・・・

会長あんたのせいだろうがーーーーーーて、叫びたくなった。

私だって本当に殺されるとは思ってない。

が、この状況・・・

風下から突然ライオンが姿現して、それに全く気がつかないイタイケなウサギを狙ってる。

そのウサギをその猛獣の目の前にドーンと角でバッファローに投げ出された様なものだ!

会長それはあんまりにも理不尽だと思うんですけど。

絶対絶命大ピンチーーー

助けてくれそうな花沢類は無言の表情で私を見つめてる。

西門さんは諦めろ的視線を私に向けた。

私以外みんな冷静に見えるのはなぜだろう?

「ドン!」勢いよくドアが開けられる。

ガンガンと怒のオーラーまき散らした道明寺が迫ってきた。

目の前50センチで道明寺の足がピッタと止まった。

「訳を聞こうか」

私の頭の上から2オクターブぐらい下がった感じの重圧的な道明寺の声が響いてきた。

思わず耳をふさいで目をつぶる。

そのまま理由なんて言えるはずなく、道明寺の負の視線から逃れるのがやっとだ。

気がつけば・・・

「ほかにもいろいろあるんだけど・・・・」

「忘れた!」

なんて叫んで床に迫る勢いで私は膝を丸めて座ってた。

この短期間で花沢類との婚約の事まで調べ上げてる道明寺に打つ手なし。

私の口からはいて出たのは「すごいね」のほめ言葉。

道明寺のキッとなった鋭い視線にますます私は小さくなった。

「類!話してもらおうか」

道明寺の怒りの矛先が私から花沢類に変わろうとしていた。

視線をやっとの思いで上に向け道明寺を見つめる。

今にも花沢類に飛びかかろうとしていた道明寺の動きが止まった。

「やめんか!」

地の底から響くような声が会長から聞こえてきて、一瞬で道明寺の動きを止めてしまった。

威圧感だけで道明寺の怒りを抑制した会長に美作さんと西門さんの表情には「すげー」と感嘆符がついている。

「この二人は私の頼みを聞いてくれただけだ」

「こんな年寄りでよければ殴られるのは私の方だと思うがね」

「今度の土曜日まで目をつぶってくれれば事は収まるのだけど我慢できんかね」

道明寺が考える仕草を見せた。

「土曜日て・・・明後日じゃねえか」

「そう、あと3日、辛抱してもらいたい」

「土曜日になにするつもりだ」

「内輪のパーティーをこの屋敷で開くことになってる」

「それで牧野の役目は終わるんだな」

「無事に君のもとに返すよ」

道明寺がコクリと頷いた。

F3と私からホッっと安堵のため息が漏れる。

「君達もこのパーティー参加してくれ」

「内輪のパーティーて、なんのパーティーですか?」西門さんがにこやかに会長に尋ねる。

「ああ、私の快気祝いと類とつくしの婚約披露パーティーだ」

能天気に会長が答えた。

かっ・・・かいちょうーーーーー

何考えてるんですか!

やっと寝かしつけた子供を足でけり上げて起こしたようなもんじゃないですかーーーーー

心の声は声にならならず、開いた口を閉じることができなかった。

ようやく落ち着いた安堵の雰囲気が一瞬にして冷気に包まれる。

立ち上がったばかりの私は両手で顔を覆って再び座りこむ羽目になった。

指の隙間から見える道明寺の全身にはさっきの怒のオーラーが真っ赤になって炎をまき散らしているように見えた気がした。

-From 2-

こんな沸騰爆発の寸前の司は久しぶりに見た気がした。

「すげーーーーこの爺さん」

総二郎は司の怒りをものともしない会長にまじで感心しているようだ。

司の怒りは暖簾に腕押し状態で会長を通り抜けしていく様だと俺は思った。

牧野は相変わらず固まったまま座り込んでいる。

俺と目が合った瞬間「美作さん、どうにかして!?」みたいな切羽詰まった顔しやがった。

暴れ出したら手がつけられないのは一目瞭然。

俺に出来ることがあるはずない!

牧野スマン!

すまないが・・・ここは大人しく司の言うとおりにしろ!くらいしか言えねえよ

「牧野は連れて帰る。こんなとこ置いとけねえ!」

「婚約パーティーなんて条件聞いてねえからな!」

さすがに年寄り、それも病人に飛びかかる様な真似はしないようだと俺も安心する。

が・・・

一応殴られる覚悟で司を抑えられるよう足を踏ん張る。

総二郎も類もどうやら俺と同じ気持ちのようだ。

「誰も条件は出しておらん。もう決まったことだ」

「さっきお前は了承しただろう。それを覆すつもりか!」

どっちもにらみ合ったまま飛び散る花火で火事が起きそうな気配だ。

「気が変わっても仕方ねえだろうが、力づくでも連れて帰る」

「自分の惚れた女がほかの男となんて・・・」

「言葉にもしたくねえーーーーーーっんだ!」

「ほう」

「それなら仕方ない」

どこに隠れていたのか会長の合図でプロレスラー並みの大男が数人パラパラと現れた。

司がどう暴れても勝ち目はない。

俺もこんな男達相手にするつもりはねえぞと正直思った。

「話には聞いていたがそれ以上に短気なようだな」

「お前のおふくろさんにも了解済みだ」

「暴れそうなら捕獲してしばらく閉じ込めておいても問題ないと言っておったぞ」

会長が不敵にフッと笑う。

司・・・

自分の母親からも猛獣扱いされている。

ここで司のおふくろさんまで手を打たれたなら、司は八方塞じゃねえか。

どこをどう頑張っても司の負けだ。

俺の口元からは諦めの笑いが「フッ」と短く漏れた。

「閉じ込められた部屋でじっとしてるのとパーティー会場に参加するのとどっちがいい?」

「好きな方を選べ」

それって・・・

究極の選択じゃねえか。

司の本音を代弁すればどちらも絶対選びたくねえ事柄だ。

さすがに司も抵抗は諦めたようだが怒り沸騰の状態は持続している。

こいつ血管がプチプチ切れ出すんじゃないかと本気で心配した。

「パーティー・・・」

絞り出すよう怒りをにじませながら司が言った。

この爺さん・・・

鞭をバチバチ振り回し猛獣を服従させやがった。

比較したら牧野は飴と鞭を上手に使って調教してると気がついた。

牧野の場合その存在自体が司を大人しくさせるマタタビみたいなもんだけどな。

マタタビ与えとけばそれで酔いしれるライオンみたいなもんだ。

飴しか持ってねえ俺らに猛獣を手なずけられるわけがない。

俺らは司に鞭振り回す勇気はないけれど・・・

「この爺さんやっぱりすげーーー」

総二郎と同様俺も感心しちまった。

-From 3-

俺・・・こんなとこで、なにしてる?

俺が人のいいなりになるなんて生まれて初めての経験だ。

じーさんにいいようにあしらわれたままの俺の怒りが収まるはずもなく、自分の部屋の壊せるもの全部に怒りをぶちまけちまっていた。

俺の様子に恐怖を感じた使用人から連絡を受けたババァは速攻で帰ってきたが、「好きなようにさせておきなさい」

と指示を出しそのまま無視を決め込んでいたようだ。

実の母親がグルになって俺をはめている状況をどう考えているのか・・・

まさか牧野の事チャラにする気じゃねえよな?

桜井のじーさんもババァの考えも全く読めねえ。

どっちにしても牧野の婚約発表阻止!

それが一番重要なことじゃねえか。

絶対ぶっ潰す。

部屋の壁めがけて椅子を思いっきり投げつけた。

土曜日の今日までまったく部屋から出ずに一人で過ごした。

今ここで誰かに遭遇したら関係なく殴りかかっていく可能性が大だったからだ。

危険を察知してか総二郎もあきらも全く顔を見せることはなかった。

土曜日の午後やっと顔を見せた二人を連れだって桜井のじーさんの屋敷に向かった。

今頃俺の部屋は改装工事が始まってるに違いない。

「司・・・お前・・・まだ怒り継続中か?」当たり前のことをあきらが聞いていた。

今はこいつらと話す気分にもならねえ。

俺達の目の前で機嫌よく大口開けて笑っているじーさんがやけに癇に障る。

これのどこが内輪のパーティーなんだ。

野球場が2、3個作れそうな日本庭園に見たことのある顔もちらほら混ざってざわめいている。

全然ホームパーティーの雰囲気じゃねぇじゃねえかーーーー。

こんなとこで婚約披露?

冗談じゃねぇぞーーーーーーー

思わず力を入れた手のひらの中でシャンパングラスが砕け散った。

俺が暴れ出すのは重々承知だと言う様に屈強な檻がここには準備されていた。

俺の横には総二郎とあきらがいるのはいつもの事。

それを囲むように近距離を置いてこの前の大男達が囲んでいる。

俺が走り出せばいつでもタックルしてきそうな構えだ。

「俺達重要人物になってるみたいだな」

「危険人物の間違いじゃねえか」ぼそぼそと総二郎とあきらがしゃべっている。

聞こえてるんだよとキッと睨みつけてやった。

「お前ら俺に協力する気あんのか?」

「「ない」」

こいつら俺をわざと怒らせてるんじゃねえだろうな。

いつもなら俺を抑えるのがてめえらの役目じゃなかったのかよ。

思わず顔が引きつるのが分かる。

「まだ、何ンも内容言ってねえぞ」

「どうせ牧野奪回計画だよな」

「この状況じゃ無理だぞ」

その諦め的ムードどこから出してやがる。

牧野と類のことなんてお前らには何の関係もないてことなのか!

「どうせ嘘の婚約なんだし、今日が過ぎれば牧野はお前のとこに帰ってくる!」

こいつらの楽観的感覚理解できねえ。

もし牧野と類が本気になったらどうする!?

もともと牧野は類が好きだった訳で・・・

類も牧野のこと好きで・・・

俺が土下座して牧野の事諦めてくれて類に頭を下げたあの日からまだ1年も経ってねえ。

類が完璧牧野の思いのすべてを断ち切ったなんて誰が断言できる。

でも・・・

牧野がそう簡単に心変わりするとは思えない。

たとえそれが類だったとしても・・・

俺の願望とジレンマが入れ混じってこの不安定な感情どうにもなんねッーーーー

牧野が俺に惚れていることは絶対で、俺と離れられるはずはない!

だが・・・

あいつの人に流される性格・・・

全くゼロの予測立てられねじゃねえかーーーー

ヤバイ!握りしめていた拳がぶるぶる震えだしてきやがった。

-From 4-

部屋の一室

私は朝から手配されたドレスに靴にアクセサリーに着飾って、ヘアーメイクと他人任せのなすがままの状態だ。

私が着せられたドレスはシルクの肌触りの純白のドレスで、ウエディングドレスを連想してしまいそうだ。

こんなドレス着せられた私を見て道明寺はどう思う?

考えただけで泣きそうな気分になってきた。

私の横には会長の奥様美鈴さんが付きっきりでいろいろ指示を出している。

「つくしちゃん、なんてかわわいんでしょう!」

「なんだか本当の孫みたいだわ」

なんて言ってハンカチ出して目頭を押さえてる。

そんな風に感激されても私の口からはフッとため息しか出てこない。

こわばる顔で必死に片唇を上に引き上げようと努力はするが、にっこりと笑えずはずもない。

「トントン」

ドアがノックされ今日のもう一人の主役、花沢類が現れた。

「牧野、かわいいよ」とにっこりほほ笑む。

普段なら誉められてポッとなってにっこり笑えるところだけど・・・・

私は道明寺にばれてから生きた心地もせず針のムシロ状態で、この3日間ほとんど寝た気がしなかった。

なんでそんなに花沢類は冷静でいられるの?

嘘のまねっこの形だけの婚約のはずだったはずなのに・・・

それを発表までするって言ってるんだよ。

あのバカ会長ーーーーー

なんでそんな流れになった?

今さらだけど、考えても解からない。

ついでに花沢類の考えも全くもってつかめないこの状況。

「何・・・考えてる?」

誉められて返した言葉がこれだった。

「えっ」

まじまじと穴があくほど花沢類に見つめられてしまう。

そしてまたにこっと笑った花沢類は「折角のパーティー楽しまなきゃね」と片眼をつぶって見せた。

オモリを付けたような足取りで、花沢類に促されるまま部屋を出てパーティー会場の中庭に向かう。

歩くたびに人々の笑い声や話し声のざわめきが近づいてくる。

雲ひとつない青空とは正反対に私の体をどんよりと雨雲が取り囲んでザァーザァー雨が降ってきた。

このまま進めば嵐が待っている。

難破確実だよって気分になってきた。

「牧野、大丈夫?」

私の顔を花沢類が腰をかがめて下から覗き込んできた。

「牧野は何の心配もしなくていいから、僕に任せておいて」

今までみたいに、いつもいつも私を助けてくれる、ピンチの時の花沢類がそこにいた。

不安が全部なくなったわけではないがちょっと晴れ間が見えたような気分になる。

「行こうか」

私の左手を流れるような仕草でやさしくつかむと花沢類が自分の腰にあてた右手につかまらせる。

えーーーっ

私、腕組まれたよ。

驚く私に「こうでもしないとパーティーに夜になっても到着しそうにないから、しばらくは俺のエスコートで我慢して」

そう言って満面の笑顔を私に向けた。

花沢類から元気をもらって、なんとかなるかもて気分になって、笑顔を取り戻した私は「うん」とようやく返事をすることができた。

-From 5-

震える拳をどうすることもできず、ギュッと唇をかみしめる。

ここで俺が行動起こしても牧野まで行きつくことなんて無理だ。

結論は解かっていても自分の感情を抑えることはできない。

この行き場のなくなった怒りをどうすればいいのか自分でも解からなくなってきている。

「バッシ!」

左の拳を開いて右の拳を勢いよく叩きつけ、そのままグッと拳を握りしめた。

そんな時パーティーの一角が一瞬静まりザワツキ出した。

「牧野・・・」

俺に見せつけるように類と腕組んで現れやがった。

拳を握り締めた左手に思わず力が入る。

自分で自分の指を折ってしまいそうだ。

純白のドレスに、純白のタキシードて・・・

それって・・・

婚約発表じゃなくて、今にも結婚式挙げますて感じじゃねーか。

もうーーーーーーっ キレタ!

このまま大人しくこんなサル芝居に付き合ってられるか!

こうなっりゃあ自棄だ!

俺を邪魔する奴は容赦なしにぶったたいて、ぶ飛ばして進んでやる。

牧野!

覚悟しとけよ!

いったいお前が誰のものかしっかり教えてやるからな!

「どけ!」

俺の目の前に立っていた総二郎とあきらが振り返る。

こいつら自分達の体を左右にずらし、拍子抜けするほど素直に道を開けやがった。

開いた隙間の間から牧野と類があのくそじじいと楽しげに会話をする様子が見えた。

さっきまで俺の周りにいたSPはなぜか姿を消している。

障害物なしで牧野までたどり着けそうな一直線が目の前に広がった。

牧野以外俺の目には入らないて勢いでズンズンと近づいて行く。

なんだ、結構簡単に近づくこと出来るじゃねえか。

目の前に現れた俺にまん丸目玉が飛び出すぐらい見開いた表情を牧野が向ける。

そんなに驚く必要あるのかよ。

助けに来てやった俺にうれしそうに飛びつくのが本当じゃねえのか。

大体俺の行動見当つくだろうが。

このままこいつ連れ去るだけじゃ面白くねぇ。

そんな気分になってきた。

牧野の腕をつかむと俺の胸に引き寄せる。

俺の腕の中どうしたのなんて戸惑いの表情で俺を牧野が見上げた。

牧野の両肩に手のひらを移動させた俺は牧野の体を上に引きあげ唇を近づける。

戸惑うあいつにお構いなく俺の唇を押し付けた。

珍しくあいつが何の抵抗も示さず大人しくしている。

俺のなすがままて感じだ。

いつもこうだといいんだがな。

なんか、すげー気分がいい!

さっきまでの怒りなんて宇宙のチリになって飛んで行ってしまった。

思わず時間が止まったような錯覚を覚えてしまう。

息もできないほど強く深く唇を二人重ねあう。

牧野から身体の力が抜けるのを確認して、あいつの唇を解放する。

なにがおきたのか解からないって顔でボーッとしたあいつに満足する俺がいる。

しばらくして状況を理解したのか、牧野は「キャー」て叫んで座り込みやがった。

今頃小さくなって隠れても無駄なんだよ。

周りの注目一心に浴びてしまった俺の行動。

静まりかえった中庭はザワザワざわつき始めている。

「これでぶち壊しだな」

そばで黙って見ていたジジイを見ながらニヤリと笑ってやった。

-From 6-

「司、ごめん!」

司に聞こえるか聞こえないかのような小声をつぶやきながら類は右の拳を司の頬に打ち出した。

なんの構えも見せてなかった司の体は当然のようにつくしの前に転がる。

おっ、始まったぞ。そんな思いで総二郎とあきらが二人で顔を見合わせた。

「牧野、そこ危ないからこっちに来ときな」

「でも・・・」

「大丈夫だから、俺達に任せて」

あきらは硬直状態のつくしを殴り合いに発展した二人の傍から数メートルの間隔をとったあたりに避難させた。

会場の視線は司と類に一斉に集まり騒然としている。

二人の間に総二郎とあきらが割って入ったのがつくしからも見えた。

殴り合いは言い合いに変わっている様だ。

ホッと胸を撫で下ろしかけたつくしの前に黄色い液体の入ったグラスが差し出された。

「急にびっくりしましたね。これでも飲めば落ち着くでしょう」

黒髪に少し白髪の混じった男性がにこりと笑って立っていた。

「ありがとうございます」

その男性の手からつくしはグラスを素直に受け取った。

つくしがグラスを口元に運ぼうとした時「飲むな」と類の声が飛ぶ。

驚いたつくしの手からグラスがこぼれ落ちた。

グラスからこぼれた液体は池の水とまじりあって沈んでいく。

そしてすぐに池の鯉が腹を空に向けて静かに浮かんでくるのが見えた。

なんなのこれ?

もしかして・・・毒!

えっーーーーまるでサスペンス劇場の流れじゃない!?

なんで私が・・・

戸惑いの色を隠せないつくしはじっと類を見つめる。

その横でなにが起こったのか全く場面を理解できてない司がつくしと類を何度も見比べる。

類に引っ張られる様に司はつくしのもとへ駆け寄った。

つくしにグラスを渡した男は近くにいた男数人に取り押さえられ地面に押し倒された状態になっていた。

「この男を連れて行け!」

つくしのそばには顔面を高揚させた会長が立っていた。

「まさかここまでしかけてくるとは私も思っていなかった。つくし、スマン。お前をオトリにしてしまった」

会長がつくしに頭を下げる。

会長が倒れた時不穏な動きが会社の中で起こった。

その中心人物がなかなか証拠を見せない。

それをあぶり出すために今回のような手間をかけたのだと会長がすまなそうに言った。

桜井物産の社内では会長の孫が見つかって、花沢物産の息子との縁談の話が進んでる。

合併話も進んでいて、重役の入れ替えもあるらしいと噂をまいていた。

切羽詰まった相手が仕掛けてくるのを待つ計画を立てたのだと言う。

このパーティーが最後のチャンスとふんだ相手が、つくしになにか仕掛けて来るだろうとわざと騒ぎを起こさせ、

つくしが一人になる瞬間を作ることで、相手がつくしに接触する機会をうかがっていたと類が白状した。

パーティーの世話をしている使用人のほとんどが警備の者で万全の態勢はとっていたが、類を始め俺達も協力を頼まれたと総二郎とあきらもすまなそうに告白した。

「司は予想以上の働きをしてくれたよ」と3人が口をそろえる。

「牧野を連れ去るところを俺達が押しとどめて・・・なんて段取りだったんだがな」

「司の行動!思った以上の注目度だったよな」

「やっぱ、お前の行動は俺達には予測不可能だわ」

さっきのすまなそうな態度とは一転、司をからかうような態度を総二郎とあきらが見せる。

「御蔭で俺は司を殴るしかなくなったけどね」

類が許せと司に謝った。

「もしかして、知らなかったのって俺と牧野だけか?」

「うん」

「お前ら3人そろいもそろって俺をだましてたって事だよな!許せねえ」

司が吐き捨てる様に言うと3人を睨みつけた。

「そう怒るな、司、お前に頑張ってもらわなきゃうまくいかなかったんだから」

「お前らに迷惑かけたお詫びに会長はもともとにこのパーティ、司と牧野の婚約披露にしてやるつもりだったんだから

それで許せ」

「「えっ」」

思わず司とつくしは声を上げる。

「このパーティーの参加者、司の知ってる顔が多いだろう?会長とおふくろさんで手を回していたらしいぞ」

「なかなか凝った趣向してくれたもんだな」

皮肉をこめた視線を3人に司は投げる。

まったく、今までの俺の行動は何のためだったんだ。

暴れまくって一人で会長をギャフンと言わせた気になって、とんだ笑いものじゃねえか。

このっーーーくそジジィーと心の中で叫んでみた。

結局・・・

俺の独り相撲じゃあねえか。

「チィッ」司は舌打ちする。

「素直には喜べねえが、まあ一応喜んでやるよ」

じいさんに負けちまったかて気にはなったが、素直に負けを司は認めたくない気分で強がってみせる。

つくしは赤くなったり青くなったりしながら司の顔色を心配そうに見つめている。

そんなつくしに気がついた司は、そんなに心配そうに見つめるんじゃねえって気分になって、心が軽くなった気がした。

ここで今さら暴れる様な事出来るはずねえじゃねえかと不安がるつくしがおかしく思える。

今一つ状況の流れがつかめてないつくしの腰に司が腕を回すと自分の体にぐっと引き寄せにっこりと司はつくしにほほ笑んだ。

夕日が沈むころ明りの灯されたパーティー会場はにぎやかさが増している。

昼間の騒ぎなどなかったような暖かい時間が流れていく。

「牧野 愛してる」

つくしを司がやさしく見つめる。

「私も・・・愛してる」この瞬間、素直につくしはそう思えた。

「お前、俺と張り合う気か」

「えっ?」

「お前が俺にかなうわけねえじゃん。お前の数十倍俺の方が愛してる」

ストレートな言葉だけど司の思いがつくしの心の奥まで染み込んでくる。

「今回は・・・負けを認める」

普段なら言わないような素直なつくしの反応に驚いたように目を見開いた司の表情がすぐに喜びと変わる。

二人の視線がぶつかって見つめ合い、つられるように二人でにっこりと微笑み返す。

どちらからともなく惹かれるようにそっと唇を重ね合った。

「ヒューッ」と二人を祝福するようにどこからか口笛が聞こえ出していた。

                                    FIN

第6話終了です♪

最後はちょっと強引に話作っちゃいましたがお許しを~

最初の設定では司がつくしとの写真を週刊誌に載せようと躍起になって・・・なんて話を考えていました。

終わってみれば別物になってしまいましたが・・・(^_^;)

抹消してしまった最初の予定のお話はいずれ「つかつく24h」の短編にでも書いてみようと思っています。

最後までお付き合いありがとうございました。

Are you ready? 完璧なんてない♪ 

sweet sweet♪ 単純なくらい はじけろ♪

口ずさみながら執筆しております。