内緒にしてくれ

*この短編は初めての朝からの続編第6弾です。

気楽に行こうぜ! を読まれた後お楽しみ頂けたらと思います。

「なに叫んでるの?」

「責任て・・・なに?」

興味深深いつもより好奇心旺盛な顔で牧野が俺ににっこりほほ笑んだ。

こんな時に限っていつもよりテンション高めで機嫌がいい牧野。

俺の鼓動はドキッと高鳴る。

これはいつもの胸の高鳴りではなく・・・居心地悪さからの心臓の鼓動の音。

今一番会いたくない奴が現れた。

いつもなら一番会いたくて、一緒に居たいはずなのに・・・。

ドキッからドキドキに胸の高鳴り変りやがった。

こいつらに話したこと牧野が知ったらどうなるのだろう・・・

冷や汗がタラリと額から伝う。

どつかれるぐらいなら問題ないがあきらの言ったこと現実おびそうじゃねえかぁ。

牧野のことだ、初体験がどうのこうのの問題じゃなく・・・

俺がばらしてしまったことで「そんなにばらすんならもうしない!」なんてマジで言いそうな奴だぞ!

俺は率先して喋った訳ではない!

ただ不思議に思ったことを総二郎に聞いたらなぜかみんなにばれちまった。

こんな言いわけ通じねえだろうな・・・。

こんなことになるなら・・・

そのまま知らない方が幸せだったじゃねか。

俺・・・

なんで気がつかなくていいこと、気がついてしまったんだろう。

後悔しても始まらない。

今となれば完璧なかん口令発動するしかねえ。

てめえらなにもしゃべるなよ!そんな気持ちであいつらを睨みつける。

牧野がそばにいる今このぐらいの対抗策しかできねえじゃねえか。

完璧には程遠いだろう・・・

打開策なんてあるとは思えねぇ

このまま自滅・・・

なんて死んでもしたくねえぇーーー

気持ちだけが先走って焦る気持ちが俺を支配し始める。

「ねえ何の話していたの?」

追い打ちをかけるように牧野が類に話しかける。

焦りが頭のてっぺん飛び出して心臓バクバク言い出した。

「俺からは言えないね。司に聞いて」

クスッと小さく類が笑う。

その笑いは気にくわないがさすが類だ。

俺の気持ち通じたじゃねえか。

でも・・・

俺から聞けって、類は言わなかったか?

言えるはずねぇーーーーーーーっ。

俺どうする?

弁解の余地はあるのだろうか・・・

「ねえ、なんなの?」

無邪気にほほ笑みを向ける牧野に俺は思わず固まった。

「ここじゃ言えねえ、あとで教える!」

真っ直ぐに牧野の顔を見ることなんか出来なくて、目をシカっとつぶって叫ぶように言った。

「牧野・・二人っきりになった時、よ~く教えてもらいな」

あきらがニヤリと俺を見る。

「やさしく、そっと教えてくれるかもよぉ」

総二郎が牧野の頭を一つポンとたたいた。

こいつらまた余計なこと言いやがった。

牧野・・・

絶対へんに思ったぞ!

おそるおそる牧野の表情をのぞき見る。

「・・・・」

牧野の表情に Question mark が張り付いてる。

「・・・・」

牧野にこいつらの言葉の意味を深く読むような芸当あるわけない事に気がついた。

そうだった・・・

牧野は俺以上に鈍感だ。

まともに言葉にしなきゃぁ全く通じねえところがある。

俺・・・

助かった!

ホッと胸をなでおろす。

それもつかの間。

牧野が考え込む仕草を見せた。

考えこまなくていい!

さっきの奴らの言葉は忘れてくれーーー

こうなりゃぁ少しでも早く!

遠くにこいつらから牧野を引き離すのが最善策だ!

「こいつらに付き合うな」

牧野の手をしっかり握って引きずる様に俺は大股で歩き出した。