霧の中に落ちる月の滴 4

何やらきな臭い事件の匂いが・・・

交通事故だけじゃなかった2重の展開。

類君の手術も無事に成功ということでまずはホッと胸をなでおろして先を楽しんでもらいたいと思ってます。

 *

薄明かりの下で照らされた姿は必要以上に青白く映る。

ベットからはわずかにはみ出した腕の白さ。

その上腕に残る皮下出血した紫色のに変色した痕が痛々しい。

他人の痛みなんて気にしなかった俺が唯一自分の身を切る痛みを感じる相手。

落ち着いた寝息をたてているところを見るとまだ薬が効いているのだろう。

「風邪ひくぞ」

シーツの中にほっそりとしたか細い腕を入れこんだ。

今更風邪がどうのこうのという状態じゃねぇけどな。

俺に気が付いたように牧野の指が動いて俺の手を握った。

身体を横に向けるように寝返りをうった牧野の頬が手のひらの上に重なる。

俺の手のひらを枕にしやがった。

「牧野・・・類も助かったぞ」

聞こえてるとは思わない牧野がかすかに微笑んだ気がした。

帰っても眠れそうもない。

牧野のそばをひと時も離れたくない想い。

あの時バカげた喧嘩をしなければ・・・

類の車に乗ることもなかったよな。

事故にあってもお前を守ったのは俺のはずで・・・

もしもあの時の俺がお前のそばにいたら俺は今より心を乱すことはなかったって思う。

類がお前を守りたいって気持ちはきっとお前を好きだといったあの時と変わんねぇと思う。

俺も負けねぇつもりだけど、どんな気持ちであいつが今までお前を見てきたのかって思ったら俺はどれだけ残酷なのだろう。

「んん・・・っ」

少し眉を寄せた顔がゆるゆると瞼を動かす。

「気が付いたか?」

「どうみょう・・・じ?」

上に上がるイントネーションでつぶやいた牧野が意外そうな表情を作って俺を見つめる。

「ついていてくれたんだ」

嬉しそうに口元を緩めるそんな表情が俺の感情を解きほぐすには十分すぎる。

「花沢類は!?」

牧野は瞳を一気に見開いて食い入るように俺を見つめる。

「手術は無事終わったよ」

「よかった」

俺の返事に大きく安堵のため息を牧野が漏らす。

「あっ・・・ごめん」

必要以上にギュッと力を入れて握りしめたのが俺の腕だと気が付いて牧野が謝った。

離そうとした腕はそのまま離せるわけがなく、牧野の手のひらにもう片方の手のひらを添えてギュッと握りしめた。

「もう、二度とお前と喧嘩なんてしねぇから」

「え?」

「そうか・・・喧嘩してたんだったね」

すっかり忘れてたって軽い調子の牧野。

俺はかなり後悔してたんだぞ。

「最後が喧嘩の言いあいじゃシャレになんねぇだろうが」

けんか別れだけは絶対やんねぇ。

「道明寺と言い合いしなくなるってことは、道明寺の性格が変わるってこと?」

「はぁ?」

「お前が素直になればいいだけだろうが」

やべっ!

喧嘩しないって言った先から言い合いになりそうな俺たち。

「イタッ・・・笑わせないでよ」

笑う振動が体中に響くと笑いながら牧野が顔をゆがませる。

やっぱ、牧野は笑顔が一番似合う。

牧野は大丈夫だ。

そんな安堵感が胸の奥に広がる。

「今日は俺が付いてるから安心して眠れ。俺様がつき添うなんて滅多にねぇぞ」

「明日仕事じゃないの?」

ここしばらく牧野とこんなに一緒にいた記憶はない。

いつも中途半端、尻切れトンボ、満足するほどデートもしてねぇ俺たち。

「俺がしばらく休んで傾くような会社じゃねぇよ。いいから眠れ」

死ぬほどの大きな事故で怪我してるお前を置いて行けるほど俺のお前に対する気持ちは軽くねぇぞ。

牧野、お前が早く元気にならなきゃ仕事も手につかない。

「気にすんな」

「うん・・・」

目の下までシーツを引きあげて顔を半分以上隠しながら牧野がコクリとうなずく。

うれしいならうれしいといえばいいのに、やっぱ素直じゃねぇよな。

目をつぶる牧野の寝顔。

じっと見てる俺が気になるように牧野がちらりと瞼を動かす。

「眠れ」

「眠れないよ」

そう言って牧野は深々とシーツを頭からかぶって顔を俺から隠した。

見えねぇッ。

拍手コメント返礼

スリーシスターズ 様

まだまだいろんな策が隠れてる話なんです。

小出ししながら話を進めていきますが、最後まで読んだ後になるほどと納得いただけるといいなぁと思ってます。

核心部分に触れるのはトラックの運転手が捕まる頃になるかな。

はぴまり読まれたんですね。

10巻で完結ですから花男の3分の一ですからね。

テンポがいいので読んでいて楽です。

ノベルズ本も二冊ほどでていますよ。

原作より大人な、いちゃこらですよ。(笑)

はぴまりに限らず影響はうけてますね。

あきらと葵のカップルははぴまりがもとですから。

俺様じゃないあきらだとどうなるのかなんて考えて楽しく想像してました。

あの時ははぴまりの二次に手を出すつもりは毛頭なかったんです。

だからかけたんでしょうけどね。

virgo 様

司君がつき添ってくれるならどんな病魔も追いだしてくれそうですよね。

ついてくれるならママのほうが気楽でしょうけどね。

司に「水」とか「あれ食べたい」とかわがまま言ったとして、司は素直に言うことを聞いてくれたりしてくれるのでしょうか?

見たいような・・・(;^ω^)