Birthday(tukusi 6)
*今年の私の誕生日。
記念すべき結婚後初めての誕生日。
旅行に行こうと言ってくれた時から・・・
特別な事ではなく・・・
特別な思い出にしたかったはずなのに・・・
誕生日の料理も、ケーキも、プレゼントもなし。
ただ、ただ、二人抱き合って過ごしていた。
全く誕生日の必要なし!
と・・・
結論付けて苦笑する。
ほとんど道明寺のされるがままに翻弄されて、振り回されて、朝を迎えた。
目覚めたベットの中に道明寺の姿が見当たらず・・・
不思議に思いながらベットを這いだす。
部屋のどこにも道明寺の姿を見つけられず・・・
玄関のドアを開けた。
真っ白に積もった銀世界の中にスコップ持って雪をかき集める道明寺を発見する。
その横に子供の背丈ぐらいの雪だるまが出来あがっていた。
吐く息の白さに冬の寒さが増長されブルッと震える。
「雪だるま作ってんの?」
「ああ」
子供じみた笑顔で道明寺がほほ笑んでいた。
「なに一人で遊んでんの?」
「遊んでなんかねぇ、こっち来てみろ」
「寒いからヤダ!」
クスッと笑って早々に玄関の中に逃げ込もうとする私の腕を道明寺が駆け寄って捕まえられる。
「逃げんな!いいからこい!」
強引に雪だるまの側に引き戻されて苦笑するしかない。
「ここ、見てみろ」
道明寺が雪だるまの顔を指さす。
雪だるまの目玉近くに青紫色に輝く小豆大のものを発見した。
そっと指でとり出してみる。
「ピアス?」
タンザナイトの周りにダイヤモンドをちりばめたピアスが手のひらの中で光り輝いていた。
「それお前の誕生石だろう?」
「そうだけど・・・ピアス一つしか見つかんないんだけど?」
「一つは俺の耳」
同じ形のピアスが道明寺の左の耳元で光っていた。
「結婚指輪が豪華過ぎて仕事中はつけられないてぼやいていたろう?その代わりになんねえかなて考えた」
照れくさそうに口元が笑う。
ベットにいないと思ったら・・・
この寒い中どのくらい独りで外にいたのだろう。
雪だるま作って、プレゼント隠して・・・
昨日の夜にいくらでも渡してくれるチャンスはあったのだろうに・・・
キュッと胸がつかまれるような熱い思いに包まれてあふれる思いを逃がさない様に大切にピアスを握りしめた。
ありがとうの言葉の代わりに目の中が潤んできてどうしようもなくなった。
泣いているのを気がつかれたくなくって・・・
握りしめていた手のひらを開いてのピアスをじっと見つめる。
ピアスの石の台座の裏に刻まれた tous les deux という文字に目がとまた。
「これって英語じゃないよね?なんて書いてあるの?」
「フランス語。自分で調べろ」
耳まで真っ赤になって私を残して道明寺がさっさと玄関の中に姿を隠した。
「私、耳に穴開けてないんだけど・・・」追いかけて叫んだ私に「さっさと開けろ」て不機嫌そうに背中を見せる。
その背中に勢いよく飛びついて「ありがとう」とつぶやいた。
tous les deux
いつも二人で
その意味が解かったのは自宅にもどってからの事だった。
誕生日プレゼントなににするか考えていたらなかなか最終話が書けませんでした。
数日考え込んでいたわりにはありきたりすぎですが(^_^;)
こんなもんでお許しを~
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これにてBirthday(tukusi 編)はひとまず区切りがついたでしょうか。