第1話 100万回のキスをしよう! 6

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-From 1-

つくしの腕をとり二人一緒に初めて煌びやかな光の話の中をくぐりぬける。

今までの俺達は俺が主催者でつくしが招待客て感じで一緒に登場することなんてなかったからだ。

気分が高揚する感じは隠しようがない。

磨けば光るタイプのつくしはF4のお墨付きで・・・

いつもよりヒートUpで準備をさせたつくしは誰よりも目立っている!と、俺は勝手に満足する。

目立つ感じに気後れしたのか俺の腕を握るつくしの握力は最高値を示している様だった。

ちょっと照れてはにかむ様にほほ笑むつくしを誰にも見せたくねって気分が俺を支配し始める。

つくしにやらしそうな視線を投げる前方の男をギッと睨んでやった。

「よっ!やっと公に連れてくる気になったのか?」

「結婚式以来だな」

どこから湧いて出たのか総二郎とあきらが連れだって目の前でにっこりほほ笑んでいる。

「もしかして類も来てるのか?」

俺の声に促される様に二人の後ろから類が顔を出す。

「牧野久しぶり」

三人の登場につくしは「キャー」なんて嬉しそうに明るい声を上げやがった。

牧野の態度にこいつらに会えてうれしい感情よりムッとする方が占める割合が大きくなる。

「もう牧野じゃねえぇ」

不服そうに類を睨みつけた。

「牧野じゃなかったら・・・・道明寺?あわないよな・・・つくし・・・」

類が真剣にブツブツ考えだした。

こいつらにつくしだなんて呼ばせたくねッーーーー

「牧野でいい」

俺の言葉に類がクスクス笑いだす。

「少しは大人っぽくなってるかと期待したけどぜんぜんかわってねえな」

「悪かったわね」とつくしが頬を膨らませる。

俺はつくしの全身を眺める総二郎の視線を遮断して、「見るな!」と、つくしを腕の中に覆い隠した。

「結婚してもかわんねぇ~」とあきらがケラケラ笑いだす。

「お前達忙しいんじゃなかったのか?」

「こんなところに来てる暇なんてねえだろう」

これ以上こいつらに遊ばれたらたまらないと話題を変える。

「ちょっと・・・気になることがあったんで・・・」

こいつらにしては歯切れの悪い返答に俺の表情には疑問符を貼りつけてしまっていた。

「牧野、俺に付き合って」

類が俺達からつくしを引き離す様な態度を見せる。

類に連れられて離れるつくしを確認して総二郎とあきらに視線を移した。

「どうした?」

「司・・・お前がそんなに器用な奴じゃない事は俺達は知っている」

「牧野一筋だと言うことも疑ってはいない」

「な・・・なにが言いたいんだ?」

二人で詰めよって尋問をされてる雰囲気に思わず焦る。

「しかし、これはヤバいだろう」

「やばいて・・・なにが?」

総二郎とあきらが視線を合わせてどちらからともなく舌打ちする。

「お前、昨日発売の週刊誌見てないのか?」

「見てない」

俺と牧野の別居生活すっぱ抜かれた?

夫婦間の不仲説が独り歩きする前に今回のパーティー出席も強引に決めたが遅かった?

それともこの前の女がばらしたか?

あの写真は全部取り戻したはずだ。

問題が起こるはずはないと確信してる。

こいつらが慌てて俺に詰め寄られるような内容・・・

見当つかねぇ。

思わずゴクンと喉が鳴った。

「柏木零て女優知ってるだろう?」

「柏木・・・?」

思わず考え込む。

「30歳手前の色っぽい妖艶ぽい奴。あきらの好みみたいな女」

この前、俺につくしの隠し撮りの写真見せた奴だとようやく気がついた。

「司、その女のホテルの部屋に行っただろう?」

「バッチリ部屋に入る写真撮られてるぞ」

浮気の相手は!?なんて文字が踊ってると、二人に詰め寄られて攻め立てられてようやく外観が見えてきた。

「俺はなんもやってねぇ!写真を取り戻しに行っただけだ!」

「世間はそう見ねえよ」

はめられた・・・

写真もあの女がわざと週刊誌にリークしたのだろう。

つくしを餌にして狙いは俺か・・・と、ここでようやく気がついた。

こうまでコケにされたのは初めてだ。

「許さねぇ」

絞る様に声を出す。

「女より・・・司!お前が許してもらう方が先じゃねえ?」

「牧野に週刊誌の事ばれたら大変だぞ」

「ばれる前に教えておいた方が賢明だと思うけどな」

総二郎とあきらが矢継ぎ早に言いたてる。

類と一緒に機嫌よく笑顔で手を振るつくしに俺はひきつるような笑いしか向けることが出来なかった。

-From 2-

「なにかあった?」

「えっ・・・」

一瞬驚いたような表情をすぐに笑顔に変えて花沢類がほほ笑んだ。

「先に牧野に聞かれるとは思わなかった」

花沢類から差し出されたシャンパングラスを「ありがとう」と小さく言って受け取る。

「道明寺が花沢類と二人っきりにさせるなんてありえないから」

さっきまで西門さんにも噛みつきそうな勢いで私を自分へ引き寄せていた道明寺。

それが・・・

私の初恋の相手だと知っている花沢類に関してあまりにも寛大しすぎる対応は不自然にしか思えない。

花沢類が私を誘ってなんの抵抗も示さないなんて・・・

いくら鈍感な私でも気がつかないなんてあるはずない。

その辺が単純なんだよな・・・道明寺。

「確かに、それはそうだ」

クスと花沢類の口元がほころぶ。

「まあ・・・これまでもいろいろあったからな。俺達」

これまでいっぱい助けてもらって、感謝しきれない思いは海よりも深くあふれ出している。

この気持ちは一生変わることないと思っている。

「そっ」

ありすぎるぐらいたくさんの思いをしてきた。

よくここまで来たよな、なんて思いがないと言ったらウソになる。

これからも順風満帆でいくとは思ってはいない。

王子様と結婚して幸せに暮しましたなんてことは童話の世界だけだろうから。

それを夢見るような人生送っていたら道明寺となんて結婚できなかった。

て・・・

言ったら、道明寺がへそ曲げそうだ。

「最初から別居生活だしね」

「司から聞いてる。弁護士になるために頑張ってるんだろう」

「騒がれないためにしばらくは結婚したこと公にしないはずだったのに、こんな事になって、最初から道明寺には迷惑かけらっぱなしだよ」

「全然迷惑そうな顔していないけど」

やさしいさを含んだ花沢類の瞳に見つめられホンノリと頬に熱がおびてくるのが自分でも分かる。

「幸せなんだ」

その言葉にますます熱が高くなってきた。

「多少の問題はあるけどね。し・あ・わ・せ・かな?」

そう言って少し照れた様に笑っていた。

「なにがあっても大丈夫!て、一応・・・思っているし」

「苦しいことや、つらいこと、努力してもどうにもならないことは丸めて踏んずけて肥やしにするつもり」

「私は雑草のつくしだからね」

西門さんと美作さんとなにやら言い合っている道明寺の視線とぶつかって、軽く右手を上げて振っていた。

道明寺のぎこちない笑顔に思わず振っていた手の動きが止まる。

「安心した」

「やっぱり牧野は牧野のまんまだ。変わらない」

ビー玉の瞳がやさしくほほ笑む。

私・・・

花沢類相手になにを宣言してるんだろう。

これからいろんな問題にぶち当たること予想しているようなものだ。

そんなことが起こるとは限らないのに・・・

でも最初から実際・・・

問題は起こっている訳で・・・

それを大きくしてくれているのは道明寺で・・・

今も・・・

なにかありそうな嫌な匂いが充満していて・・・

この3人が顔をそろえる緊急事態に私たちが関係ない訳がない!

問題の根源は道明寺?

疑問が確信に変わる。

「花沢類、私に聞かせたくないような話ってなんなの?」

飾り気なしの疑問符をそのまま率直、直球で目の前でほほ笑んでいる花沢類に投げつけていた。

-From 3-

「なにも言い訳する必要なんてない」

「別に腹黒いところはねぇし」

強気で言ってみた。

あきらと総二郎が呆れたように顔をゆがめる。

「それ言うなら後ろ暗いだろうが」

「・・・」

あきらの突っ込みは無視する。

「本気で言ってるなら、お前はアホだぞ」

「週刊誌の内容が牧野にばれて、たとえそれが嘘だとしても心穏やかでいられるはずねえだろうが」

「ばれないかもしれねえじゃねぇか」

「時間の問題だ」

総二郎がしゃべり終わった時、会場の入口がザワツキだす。

見たくもねぇ女が登場していた。

すげーやばい状況じゃないのか?

牧野は未だに類と二人で俺達から離れた場所で話している様子だ。

ホッと胸をなでおろす。

「結構目立つな」

「実物の方がいい女じゃねぇ?」

「司、お前本当になんとも思わなかったのかよ?」

「無駄なこと聞くな。司は牧野にしか発情しねェよな」

「司じゃなくて俺にすれば問題ないのにな」

「同感」

二人の愚問にまともに応える気にもならなかった。

「おい、こっちに来るぞ」

あきらの言葉にザワツキの方向を睨みつける。

柏木零が歩くたびに周りで俺と見比べながらヒソヒソと小声でささやく奴らの姿が少なからず目に留まる。

「週刊誌の件を知ってる招待客もいるようだな」

総二郎が俺に耳打ちする。

俺の前で壁を作る総二郎とあきらをすり抜けるように俺に近づいてきた。

「なにしに来た」

俺の数歩手前で立ち止った女を冷ややかに射る様な視線を向ける。

「そんな、つれないそぶりしなくてもいいんじゃないの、一緒にホテルの部屋にいた仲でしょう」

妖艶な仕草を見せる目の前にいる女に吐き気がしてきそうだ。

「他人が勘違いするようなことを言うな」

「明日にでもお前の事務所ごとぶっ潰してやろうか」

俺はこれ以上冷酷になれないぐらいの感情をむき出しにする。

「まあ、恐い」

そう言って柏木零はにっこりほほ笑みを投げかける。

周りから見たら俺に機嫌よく愛想を振り向いているようにしか見えない態度だ。

全くいけすかない女だと舌打ちをした。

「なぜこんなことしたかしたか知りたくないの?」

俺の両肩に手を置いて自分の身体を預けるように柏木零が近づく。

この女の挑発的な言葉にこいつの腕を俺に触れてる部分から排除しようとする動きが止まる。

「どういうことだ?」

「あなたのクリーンなイメージが邪魔なんだって」

俺の耳元を唇でなぞるような感じに囁きかけられた。

「止めろ」

顔をそむけると同時に肩に置かれた手を乱暴に振り払う。

「クス」と満足そうな笑いを作り女は人込みの中に歩いて行く。

女の態度は周囲の噂を増長させるには充分な効果を発揮したようで自分の失態を怨むしかなくなっていた。

「さすが女優」

「自分の見せ方知ってるよな」

「お前ら、感心している場合じゃねえだろう」

「どうにかしろ」

どうにもなんねぇて表情を二人同時に返された。

「なあ、俺のクーリンなイメージてなんだ?」

「ああ、司が牧野との結婚を発表した時にずいぶん騒がれたろう?」

「純愛を貫いた御曹司とか何とか騒がれてお前の好感度ウナギ登り、ついでに企業のイメージーも大幅アップて、事らしいけど」

「それが邪魔な奴がいると言うことか・・・」

「ここで結婚後すぐに浮気の噂が広まれば・・・痛手だよなぁ」

こいつらの言葉で数件の敵対企業が浮かんできた。

セコイ事考えつきやがってぇーーーーーーー

絶対つきとめてぶっ潰してやる!

手のひらに爪が食い込む感じに両手を握りしめていた。

「司・・・」

「なんだ!文句あるのか!」

「そうじゃない」

焦る様に二人が後ろを見るように無言で俺に合図を送っていた。

「なんだ?」

振り向くと類を後ろにひきつれたつくしが射るような強い視線を俺に向けて無言で立っていた。

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お初の4F勢ぞろい!

やっぱり類に総二郎にあきらも登場させたい!という気持ちで今回書いてみました。

司ちゃんと自分が置かれた状況を把握できるのでしょうか?