第1話 100万回のキスをしよう!21

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-From 1-

見てて飽きねぇ。

充足感!

満足感!

幸福感!

どんな言葉を並べても足りないくらいのベットの中。

何事もなかったようにスヤスヤと寝息を立てている愛しい女。

珍しく俺の方が早く目覚めてた。

キュッと引き締まった唇は強い意志の表れ。

一旦開くと反抗的な言葉の方が割合的に多くを占めるのにはもう慣れた。

昨日みたいにやけに従順な甘える仕草で「ありがとう」なんてやられるとそれだけでたまらない。

分かってやってないからなおさらだ。

伏せた長い睫毛をそっと指でくすぐる。

邪魔だと言う様に右手で追い払われた。

寝返りをうった拍子につくしの顔が俺の胸元にスッポリとうまる。

両手でつくしの身体を隠す様に抱きしめる。

今日一日このままベットに中にいるのも悪くはない。

俺・・・

何か大事なこと忘れてないか?

記憶の糸をたどりよせる。

昨日速攻で仕事を終わらせたいのはつくしに話しをする必要があったからだ。

「ヤベッ!」

今何時だ?

慌てて時計の針を確かめる

「9時か・・・」

ホッと胸をなでおろした。

・・って・・・

時間に余裕がある訳ではない。

「つくし!起きろ」

さっきの余韻を突き飛ばす感じでつくしの体を揺り動かす。

「な・・・な・・に!地震!?」

寝ぼけんじゃねッ。

「今日は忙しいんだ」

「・・な・に?・・・なにがある? なにも・・・聞いてないけど?」

半分寝ぼけたままのせいかつくしは滅多にないスローペースに言葉を続ける。

じれってぇ。

説明するのも時間の無駄に思えてくる。

「行けば分かる」

「その前に顔洗って、エステして準備しろ。最高に着飾れ」

「しっかり準備はできているから」

「えっ?もしかしてパーティー?」

「そんなもんだ」

「俺が迎えに来るまで言われるままにやっとけ」

ガウンをつかんでべットから飛び起きて部屋を出る。

今日は船上パーティー。

それもとびっきりの豪華客船だ。

招待客は1000人規模。

すべておふくろが率先して計画を立てていた。

俺達二人のお披露目会。

いわゆる世間一般の披露宴。

俺達はまだ結婚式を挙げただけ。

つくしはそれだけで十分と思っているようだ。

道明寺の跡取り息子の結婚となればそれだけで終わることがないことを俺もすっかり忘れていた。

しばらく結婚は伏せておく予定だった・・・

俺の不倫騒動が発端でばらしちまったけど。

計画を俺に話すおふくろは楽しそうでご機嫌でどうみても人のいい姑だった。

いつからおふくろはこんなにつくしを受け入れたんだ?

今さら何の魂胆もないだろうが・・・。

昔いじめ過ぎた罪悪感を補うためだろうか?

そんなことはどうでもいい。

派手なことには不満はない。

つくしは「ヤダー」とか言いそうだから拒否できないところまで内緒で進めることにした。

さすがに前日はパーティー参加の事を伝えるつもりでいた。

つくしにばれないように弁護士の同僚に招待状を渡すの結構これでも昨日は大変だった。

大勢の祝福を受ける中をつくしと腕組んで歩く。

今日一日で俺達夫婦は完璧に世間を認められる訳だ。

これでつくしに手を出す輩はいないだろう。

想像しただけどうしようもなくうれしさがこみ上げる。

顔が崩れそうになるのを必死で耐えていた。

最高の思い出になりそうだ。

我慢できずに顔が崩れていた。

-From 2-

突拍子もないのはいつもの事。

分からないままに身体を自由にされ放題。

エステは気持ちがいいから文句はなかった。

後は豪華客船の中で準備しますって、今でも結構いつもより見栄え良く仕上がっていると思うのだけど。

会場で準備すると言うことは、招待客じゃなくて主催者側?

重圧感で気が重くなってくる。

海沿いを走る車の中からいかにも豪華な船が見えてきた。

世界一周に出かけられそうな雰囲気。

そんな暇がないのが残念だ。

パーティーは7時からって言われながら奥まった個室に案内された。

今から4時間近くの待ち時間。

いったい何の準備をさせる気だ。

ソファーにはどっしりと腰を下ろした道明寺が座っている。

満面の笑みって・・・

これ以上にない機嫌のよさが解からず躊躇気味になった。

「今日はお前が主役だ」

「えっ?」

「披露宴まだしてなかっただろう?」

「披露宴?」

なにがなんだか分からず頭の回転がピタッと止まった。

「だから、俺達の結婚記念パーティーだろうが」

イラッとしたような感じに道明寺が声を上げる。

「えっ・・・だって・・・そんなのあるの?」

「嫌なのか?」

「嫌じゃなくて・・・」

「なんでそんなに急なのよッ!」

結婚式も急だったけど、あの時はうれしくて泣けてきた。

これでも一応、世間一般並みに結婚式のあこがれ、夢はもっていんだよな。

派手じゃなくて・・・

本当に来てもらいたい身内でこじんまりと・・・

そんなんで十分なんだけど・・・

道明寺と結婚すると決めた日から平凡な夢は諦めた。

結婚の記者会見も、結納も、結婚式も、披露宴まで何の前触れもない猪突猛進ぎみだ。

これってあまりにも私の存在無視してないかぁぁぁぁ~。

せめてドレスを自分で選ぶ権利とかないものだろうか。

全部準備してどうぞと言われても喜べるかぁぁぁぁぁッ。

「おふくろは楽しそうに準備してくれたんだぞ」

お母様?

ここでご本尊が出てきたらどうしようもない。

完全になにも反論できず受け入れるしかないと悟るしかなかった。

「会場はこっちで勝手に準備したからドレスぐらいはお前に選らばせろとおふくろが準備したらしい」

観音開きのドアの向こうズラーと並んだ色とりどりのドレスが所狭しと並んでいる。

「それ全部お前のサイズに合わせてあるから」

着られても2、3着だろうにこの数はどうだ。

驚きを通り越して呆けた気分になってきた。

「俺の方はお前にあわせて選ぶから、俺のは10着程度しか準備してないけど」

道明寺はやけにうれしそうだ。

すごすぎる。

早目に教えてくれればなにもここまで準備する必要はないと思うのだが・・・

驚かせたかったってどこの世界に新婦に内緒で披露宴をする新郎がいるのだろうか。

「早く選ばないと時間なくなるぞ」

急かされて、気をとり直してドレスの部屋に入り込む。

全部見るだけで時間がなくなりそうだ。

「一緒に選んで・・・」

自分で決める自信がなくて道明寺を見つめる。

片っぱしからドレスを身体にあてて鏡に全身をうつす。

「似合う?」「似合う」

「こっちは?」「前の奴の方がいい」

何気に聞いたら楽しい会話。

時間がないから切羽詰まっている。

本当なら時間をかけて道明寺とゆっくりドレスを選びたかったな。

そんな考えがプカっと浮かんでは消えていく。

真剣に相槌を打って考え込む道明寺がおかしくて、それなりに時間を二人で楽しんでしまっていた。

クスクス笑いながら道明寺の衣装の一つに目がとまる。

なんでこんなのあるんだ?

タキシードとはどうみてもちがう違和感のある服・・・

どう見ても・・・

中世の王子様ルック!

「これも候補なの?」

「シャレだろう」

「お前・・・まさか・・・これを着ろなんて言わないだろうなッ」

「似合うかも~」

「着てみて」

「お願い」

手をすり合わせて頼み込む。

「見てみたいの」

私の哀願じみた表情に渋々ながらそでを通す道明寺。

「これで白馬に乗って登場したらばっちりだね」

ケラケラ大口開けて笑ってしまってた。

-From 3-

披露宴の開始まで1時間をきる。

船の窓から外を眺めれば次々と高級外車が港に乗り付けてくるのが見える。

道明寺家の披露宴。

出席者もそれなりの知名度はありそうなセレブ系。

港までの直線道路は厳戒態勢で警察が警戒しているらしい。

招待客以外侵入禁止だと道明寺は当り前の様な表情を見せる。

「ここでテロでも起ったら、日本、いや世界の経済の危機になる」

「そんな大層な人いるの?」

「その第一人者が道明寺だろうがぁ」

ああそうかと言われて納得するなんてまだまだこの世界には慣れてないことを暴露している。

選んだドレスを着て準備はOK。

結婚式で着た純白のドレスと似てる感じのものを選んでいた。

さすがに道明寺は王子様ルックにはならなかったけど。

「ねぇ・・・」

「なんだ」

「披露宴だったら上座にバンと私たちが並んで座ってみんなの祝辞を受けるの?」

事前の打ち合わせもなにもないのが気にかかる。

「そんなのやりたいのか?」

「やりたい訳じゃないけど・・・披露宴のイメージーそうだから・・・」

「今さら俺達の経歴や馴れ初めなんて聞く必要ないだろう」

学生時代から世間で「お相手は学校の下級生」なんて噂は囁かれ、婚約発表に至っては大々的にテレビや週刊誌で

騒がれたのだから確かに今さらと言う感じはする。

「剥げかかったおっさんの世辞の祝辞も聞きたくはねぇ」

「どうせなら本当に喜んでくれる奴らだけで良かったんだけどな」

「結局は世間の白髪とかしがらみというやつだ」

「じっとひな壇みたいに座っているのはヤダとおふくろにも言っといた」

「せっかくの船上パーティーだ、俺達も楽しみたいだろう」

「だから立食形式」

「かたぐるしいのは最初だけだ」

だから心配するなと道明寺がやさしくほほ笑んで私を抱き寄せる。

胸元に顔をうずめる様に道明寺の腕が導いた。

耳元で聞こえる同調律の鼓動に安心する。

預ける身体に心地よく響く。

「こうしていると一番安心する」

「かわいいこと言うなッ」

そう思うのだから仕方がない。

胸元から見上げや道明寺は耳たぶまで真っ赤になっていた。

静かに穏やかに抱きあったのって久しぶりだ。

いつもなら抱き合った途端に心臓が飛び出しそうに打ち出して・・・

キスされて・・・

訳が解からなくさせられてしまうから。

互いの体温を確かめ合って、触れ合って・・・

抱きしめあった指先から愛しさがあふれ出て・・・

そしてやさしさに包まれる。

それだけで幸せだと思える極上の時間。

「コンコン」

披露宴の始まりの時間を告げるノックの音。

見つめ合った瞬間に互いの口元からクスッと小さく笑いが漏れていた。

続きは 100万回のキスをしよう22 で

結婚式はやったけどまだ披露宴はやってなかったと気がついてしまいました。

えっ?今頃ですか?と言われると痛いのですが(^_^;)

まあつくしの存在も認識され始めていいころ合いかとお話を書いてみました。

以前「ひみつの嵐ちゃん」で見た5人の王子様スタイルを思い出して追加してみました。

披露宴会場・・・特にF3は馬鹿笑いだと思うんですけどね♪

拍手コメントありがとうございます。

nanako様

まずいですよね披露宴ないと。(爆

いままでですっかり忘れていましたが(^_^;)

夏休み続きますね。

只今うるさいのは学校のプールで遊んでいます。

10:00からの2時間がブログタイムです。

お昼も行ってくれないかな~

暑い夏おたがいがんばりましょね♪

りぃ様

全部読んでもらっているとはうれしいですね。

ありがたいです。

応援ありがとうございます。

ともとも様

司の王子様スタイル♪

目の保養にはなるかと~

いよいよ次は結婚披露パーティー

つくしちゃん楽しめるんでしょうか?

まだどんな感じになるか頭の中で妄想中です。

nanako様

身軽な温泉いかがでしたか?

リフレッシュできたでしょうか?

私ものんびりと行きたいですね。

夏休み中は無理だろうな・・・

結婚式の2次会のお話、いい思い出になるでしょうね。

私の結婚式・・・

ドレスで胴上げされました。

よく何事もなかったわ。