第1話 100万回のキスをしよう!22
*-From 1-
会場の華やかさ、緊張感。
どんな言葉をつかって表現すればいいのだろう。
あの人・・・
見覚えある。
総理じゃん!?
分かっているが緊張の為か名前も思い出せないなんてパニック気味だ。
思わず足が震えていた。
「心配するな、俺がしっかり支えてやる」
私の腰をしっかり抱いて一歩一歩、二人で足を進める。
こんな時の道明寺は世界一頼もしくて頼れる無二の存在だ。
数段上の舞台中央。
スクリーンに映し出される映像に固まった。
け・・結婚式!
忘れもしない3か月前の恵比寿ガーデンプレイス。
映し出されているのは道明寺と私の二人。
「・・・ビデオ・・・撮っていたんだ」
ビデオの存在を今まで知らなかったって、どこまで秘密が隠されているのか発起人に怨みの一つでも言いたい気分だ。
スクリーンの中の二人はこれ以上にない幸せのにじむ満面の笑みをたたえている。
神父の類に思わず表情がほころんだ。
指輪の交換のシーン。
指輪をはめた瞬間に結婚したんだって実感がしてすごくうれしかった。
この後って・・・
誓いのキスだよね?
初めて見る私と道明寺のキスシーン。
あんなに長かった?
照れくさくなって途中から見ることなんて出来なくなっていた。
他人なら感動してじっと見てられるのに、あれが自分だと思うと情けないくらいに恥ずかしい。
「ど・・道明寺?」
見上げる道明寺は満足そうにほほ笑んでご機嫌だ。
「恥ずかしくないの?」
「なんで?」
感動的だろう、俺達の思い出だって明るい声で言い放つ。
「ここで再現してもいい」って・・・
なにを再現する気は腰回された手の動きが教えてくれる。
無神経!
鈍感!
ねじが一本抜けてないか?
思わず身をねじっていた。
「ククッ」と笑って、
「おもしれっ」って言って、
「ほら歩け」って・・・・
いい様に道明寺に扱われてしまってる。
「思いださねぇか?結婚式」
思い出すのは当たり前。
思い出は映像じゃなくて頭の中の感動。
結婚式ってその場にいるから感動して・・・
泣けてきて・・・
幸せを感じられると思うのだけど・・・
初めだけを見ていたら思い出して感動したのも確かな事。
二人きりで見たならばこんなに恥ずかしくはなかったはずだ。
ここまで全部他人に見せる必要あるのかぁぁぁ。
もう少し披露宴用に編集するとかどうとかの心遣いはないのだろうか。
人に見られることに慣れている道明寺らしい反応だ。
どんな顔して舞台中央の一番目立つ所に二人並んで座れというのか。
スクリーンが見えないだけましかと考え直した。
一通りのプログラムが済んで和やかな雰囲気でパーティーは進む。
ようやく展示物から解放されて立食のテーブルへ紛れ込んだ。
そこまででほとんどの体力を使い果たした感じはゆがめない。
豪華客船は東京湾をクルーズ中。
港を離れた方が警備しやすいと言う理由もあるらしい。
パパにママに進、3か月ぶりの再会を喜びあう。
進なんて実の姉より食べ物の方に興味があるらしい。
「つくしのいない生活になんとか慣れた」って、相変わらずパパは涙もろい。
「身体壊していない?幸せ?」ママの言葉に何度も頷いて見せる。
「道明寺がよくしてくれるから」
そばでやさしく目を細めている道明寺に視線を投げかけた。
滋に桜子、優紀にバイト先のおかみさん懐かしい顔に表情も緩む。
話したいことはいっぱいあるのに今夜の主役の私たちには時間がない。
すすめられるままにほとんどが初対面の招待客と挨拶を交わす。
ようやく一息付けた頃、私たちの周りには花沢類、西門さん、美作さんのF4が集結していた。
-From 2-
優雅に流れるBGMは生演奏。
どこかで聞いた記憶のある懐かしい調べ。
どこだっけ?
・・・
・・・・・?
卒業式のプロム?
そうだ!間違いない!
プロポーズのあと道明寺と踊ったダンス。
美作さん、西門さん、そして最後に花沢類とステップを踏んだ思い出の曲。
あれから4年の歳月が流れて私たちは結婚式をした。
よくここまできたものだ。
「この曲覚えているか?」
腕を肩に回して道明寺が私を抱き寄せる。
「覚えていないって言ったらどうする?」
道明寺を見つめて悪戯っぽく笑っていた。
「それはかなしすぎるだろう」
西門さんが顔を手のひらで覆い、指先の合間から私を盗み見る。
子供じみた仕草を見せる西門さん。
キャラが違ってないか?
自然と笑みがこぼれた。
「俺達にも思い出の曲だ」
しみじみと懐かしげに美作さんが瞳を閉じる。
「あの瞬間の為に俺達全員頑張ってきた様なものだよな」
何気につぶやく花沢類にキュンと胸が高鳴った。
私たちはどれだけこの人たちに助けられたのだろう。
感謝しても感謝しきれない想いがあふれ出す。
「お前達には感謝してる」
道明寺が照れくさそうに私の横で笑っていた。
「おっ!司が感謝だってさ」
「似あわねぇ~」
こんな時まで道明寺をからかい気味の反応を見せる西門さんと美作さん。
ケラケラ大口開けて笑う私は今夜の主役としてはあるまじき表情だ。
それでも、おかしくてしょうがないのだから仕方がない。
この人達の前で上品に自分を作る必要なんて今さらないんだけど。
「いつもの牧野に戻ったね」
クスッと口元をほころばせる花沢類にポッと身体が熱くなる。
「なに、真っ赤になってるんだッ」
「そ・・っ・・そんな訳ないじゃない!」
顔をこわばらせる道明寺に思わず焦る。
そしてまた体温が上昇する。
「あの時の再現なんてどう?」
「あっ、司は最後ね」
美作さんが手なれた感じに私の右手をとった。
「必ず返せよ」
道明寺の声に送られステップを踏む。
美作さんのステップは優雅だ。
そんなに踊れない私が綺麗に踊れてると錯覚する。
すべてを任せられる安心感。
癒される想い。
「牧野、綺麗だ」
言った美作さんが照れくさそうに笑っていた。
「タッチ」
軽い調子で美作さんから西門さんに相手が変わる。
普段は作法に束縛されがちな世界にいる反動か、西門さんのダンスは自由だ。
楽しい気分にさせてくれる。
ステップを気にしないラフなスタイル。
笑顔が自然にこぼれだす。
花沢類のダンスは華麗だ。
伝わる手のひらの温もり。
心地よい緊張感。
宙を浮いているような気持ちよさ。
時間を忘れてしまいそうだった。
そんな私の気持ちを知ったらきっと道明寺はふてくされるに違いない。
「早く代われ」
待ちくたびれたのか・・・
私の気持ちを感じとったのか・・・
じれたい感じに道明寺が私の腕をとった。
「後は誰とも踊らせねェ」
耳元で囁く道明寺が誰よりも愛しい。
すべてを包み込むように抱きしめられる。
「これじゃ、踊れない」
すねたように言いながら道明寺の背中に腕をしっかりまわしてしまってた。
-From 3-
みんな自由気ままに楽しんでいる。
いつの間にか俺達の周りは懐かしい顔ぶれが集まっていた。
どうせ仕事つながりの連中はそっちの情報収集が大事だろうから自然とそうなったのも当たり前の話だと思える。
そういった連中の相手はおふくろに任せておけばいい。
俺とつくしのダンスを目を細めて見守る総二郎にあきらに類。
生演奏はそのまま穏やかに続いている。
「テッ!」
「お前、俺の足を何度踏めば気が済むんだ」
「あいつらの時は全然踏まなかったろうがッ」
足の痛みを押さえながらステップを止めた。
「そうだっけ?」
「道明寺だと緊張感なくなるからかな」
こぼれる様な笑顔を向けられたらなにも言えなくなってしまう。
ずるいよなぁ。
誰かが笑う顔を見てうれしいと思える感情。
俺にもあるんだって知った動物園でのデート。
最後は喧嘩して帰ってしまったっけ。
こんな気持ちになれるなんて教えてくれたただ一人の極上の女
そして・・・
また、つくしが幸せそうに頬を染め笑っている。
こいつといると俺の調子は狂わされっぱなしだ。
つくしが側にいると威厳も重圧もなくなってしまう。
余裕なんてなくなって、ただの男になり下がる。
そして・・・
確実に、また・・・
つくしに惹かれてく。
「つくし~」
「おめでとう~」
突然横から飛び出してきた大河原滋がつくしに飛びついた。
目の前の抱擁の相手が男なら完全にブッ倒しているところだ。
俺はまんまとつくしと引き裂かれて、横取りされた格好だ。
「おい!サル!邪魔すんなッ」
俺の愚痴など聞こえてないように久々の再会を喜び合っている。
ついでに女二人でダンスってキャッキャ言ってステップを踏み始めた。
おれはどうなるんだーーーッ。
格好がつかねぇ。
チラッと俺に視線を投げるつくしが困ったような表情でごめんと微かに唇が動く。
それも一瞬で、すぐに楽しそうに抱き合って喜んで・・・・
両手でつないでグルグル回って・・・
それ!ホォークダンスじゃねぇか。
気分を害してる俺のことなんてすっかり忘れてないか?
「次は私」って桜子に優紀に団子屋のおかみさん?
次々に湧いて出る。
そのノリはいったいなんだんだぁぁぁぁぁーーー。
「司、相手されないんだったら仕方ないから俺と踊るか?」
誰が躍るかぁーッ。
俺に睨まれた総二郎が肩を震わせて笑っている。
「花嫁を女友達に獲られて青筋立ててるってどんだけ牧野に惚れてんだ」
あきらが呆れたような表情になっていた。
「るっせ、普通気を利かせてお前らが相手するもんだろうがぁ」
愚痴る様に言っていた。
「そんな責任ねーぞ」
お互いに顔を見合わせて総二郎とあきらは馬鹿笑い。
「牧野は楽しそうだからいいんじゃない」
類までクスッと笑ってる。
「また俺も牧野と踊りたいなぁ」
わざと俺を挑発するように総二郎がつぶやく。
もう誰とも踊らせねェ!
クルッと向きを変えたつくしの腕をとり胸元に引き寄せる。
「俺のもんだ!」
叫んで聞こえた自分の声にドキッとなった。
生演奏がピタッと止まり会場はシーンと静まり返ってしまっていた。
「「ブハハハハハ」」
総二郎とあきらの笑い声を合図にするように周りから暖かな笑い声があたりを包みだす。
そして何事もなかったようにバイオリンの音が静かに響いてきた。
From3のお話は拍手コメントでいただきましたnasi様のリクエストを元にUPさせていただきました。
是非ともつくしが優希やおかみさん、桜子や滋など、女性陣とキャッキャッと踊って、男相手じゃないから司も嫉妬しながらも耐えるというリクエストを元にUPさせていただきました。
ご希望に添えたでしょうか?
nasi様リクエストありがとうございました。
花男リターンズ最後のダンス曲
Love So Sweetの生オケ
思い出しながら書いてみました。
『思い出でずっと ずっと忘れない空 二人が離れていても
こんな好きな人に 出会う季節ニ度とない♪ 』
歌詞がすきだったなぁ