秘書西田の坊ちゃん観察日記 5(ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 番外編)

このお話は『ないしょ?ないしょ!ないしょ!? 18』のつくし作お弁当争奪戦の一こまをリクエストを受け書いてみました。

もしかして私の書く西田さんは人間味が強くなってるような(^_^;)

そんな西田さんが見たいという方はどうぞ続きをクリックを~

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「お弁当作ったんだ、お昼一緒に食べようかなと思ってね」

照れくさそうに笑って坊ちゃんのディスクにつくし様が3段の重箱が置かれる。

見られぬ風景・・・

いや、場違いだが心が温まる様。

朝から緩む表情を必死に取り繕っていた坊ちゃんの口元が我慢できないようににんまりとなった。

そしてまた頬を引きしめなおす。

私が側にいなければ完全に崩れているであろう坊ちゃんの表情。

そこに私の穏やかな感情も生まれる。

こんなに人間くさい坊ちゃんも大切だと。

仕事で張り詰めているだけでは身体は保てても、心はもたないことを私は以前の坊ちゃんで痛いほど気がついている。

だからこそつくし様の存在は必要なのだ。

「ハイ、西田さんにも」

私の目の前に差し出された弁当箱。

「私にもですか?」

思わず驚きが声に出てしまってた。

手作りのお弁当などここ何年もないことだ。

つくし様の愛情が・・・いや坊ちゃんに下手に勘違いされると困るので優しさがと言いなおそう。

心にしみる。

「いつも世話かけてるから」

頬を染めて笑う仕草は初々しい。

すーっと心の中に溶け込んでいり込んでくるのはつくし様の美徳、仁徳だろう。

なにせあの気難しく冷淡な坊ちゃんの心を溶かしたのだから。

私が魅せられるのも仕方がないことかもしれない。

坊ちゃんは良い方を見つけられたものだ。

心からそう思える。

「西田になんかやる必要ねえぞ、俺が食う!」

やれやれ・・・

弁当一つで目くじらを立てられるとは・・・。

普段ならどうぞとお返しするところだが、なぜか折角作っていただいたお弁当を離したくないという気持ちが起こる。

つくし様の手料理などもう食べれれないかもしれない、食べてみたいという思い。

坊ちゃんを落ち着けることを優先するより大きく動いてた。

「折角のご厚意ですから」

「坊ちゃんにはさし上げれません」

お弁当箱をとられぬ様に腕の中へ隠す。

秘書としてはあるまじき行為。

半分坊ちゃんをからかいたい衝動。

抑えられなかった。

「渡せ」

「駄目です」

仕事のスケジュール調整でよく見かけるやりとり。

「何とかしろ」

「出来ません」

「出席を」

「ヤダ」

言いあいは似たようなもの。内容が弁当の取り合いというだけ。

坊ちゃんには3段重があるでしょうと言うつもりはない。

強欲なお方だ。

強欲なのは食欲でなくつくし様にある貪欲さ。

わかっているから少しの遊び心が起こってしまう。

秘書失格かと苦笑する自分にまた苦笑する。

「ブーッ」

吹き出すようなつくし様の笑い声に坊ちゃんが私をじっと見て動きが止まった。

「こんなとこで弁当の取り合いしてる道明寺と西田さん嘘みたい」

ケラケラ膝を叩いて笑われている。

私も笑われてしまっているのか・・・。

「天下の道明寺の総帥と沈着冷静で有名な西田さんが・・・あり得ないよ」

つくし様の笑いの大半が私に向けられたものだと気がついた。

「他の秘書さんにも見せたい」

それは困りますと言えずに「コホン」と一つ咳払い。

失態をしでかしたことはとり返しようもなく居場所を失うような気分。

何事もなかったような顔を作るのは私には簡単なこと。

感情を抑えるのには慣れている。

言葉を発するといつもの冷静さがないことが坊ちゃんにはばれてしまいそうで即座に背を向け退散させてもらった。

つくし様の弁当が胸に抱いたまま。

つくし様のお弁当と私の失態。

どちらの利益が大きかったのだろうか。

yanbo様 ち**様 rui様 muge様 kobuta様 RICO様

リクエストとコメントに力をいただき早速書いてしまいました。

いかがでしょうか?