ハロウィンの夜に 4
*圧迫感のある狭い暗闇から抜け出すとそこは眩いばかりの光の中で・・・
自分が注目を浴びてると確信するまで数十秒。
舞台の裏ではどうしてもやらないとダメなのかと滋に掛け合った。
どうしようもなくあきらめが悪いのは着ぐるみの下のレオタードのせいだ。
「つくしがやらなきゃ司が知らない女性とディナーデートだよ」
「そんなこと道明寺がOKするはずない」
「今は私の言いなりだもんあいつ」
「ほら、あの天狗の仮装は道明寺だよ」
視線の先には天狗のお面に白装束。
教えてもらわなければきっと道明寺だとは気付かない。
笑いたいけど笑えないよーーーーーッ。
あの天狗の格好を見たらオークションにも渋めの顔で出てきそうだ。
「きっとすごいことになるだろうねF4のデートの競争率」
「つくしの場合は全財産かけても司が競り落とすって決まってるだろうけど」
全財産って・・・
最悪は道明寺がこのパーティーめちゃくちゃにする可能性も否定できないぞ。
「本当は着ぐるみなんか着せないでバニーで登場させたかったんだけどね」
意味深に滋がほほ笑む。
「ほら、司って案外やきもち焼きでしょう」
「露出度の多いつくしの姿をほかの男性に見せて暴れ出したら困るから」
だったら最初からこんなこと考え出すな!
絶対楽しんでるよ。
「F4リーダー道明寺司君はエスコートなんて惚れた女以外には出来るタイプじゃないので今回は除外してます」
舞台の上から滋が私に意味ありげな視線を送る。
これで私も今日のオークションの出品に決定だ。
舞台の上にはF3とわかる仮装の男性陣。
色めき立つ会場の熱気が舞台裏の私まで伝わる。
会場のすべての女性が声を張り上げて競い合う。
F4の人気は色あせてない現実。
道明寺がいなくてよかったと本気で思った。
でも・・・
西門さんに美作さんならわかるがあの花沢類まで良く出品出来たものだ。
滋に聞いたら「類まで抜けたら司を出さないと形がならない」
「つくしが悲しむだろうなぁ~って言ったらすんなりOKした」と笑って答えた。
どこまで滋は私たちの人間関係を把握してるのだろう。
花沢類ごめん!
壇上に立つゾロの仮装の花沢類に心の中で頭を下げる。
「ほら早く箱に入って」
滋にせかされて箱の中に身をかがめる私。
従順になるしかなくなっていた。
「着ぐるみの中にはレオタード姿のバニーちゃんが入っています♪」
「司!あんたが落札しないと大変なことになるよ」
あ~ッ!
道明寺を完全に煽ってる。
まあ・・・道明寺以外に落札されたら困るんだけど。
滋の言葉を合図に箱が開いて天井からスポットライトで照らされる。
まぶしさをさえぎるように両手で防ぎながら立ちあがった。
着ぐるみって視野狭いんだよね。
人影は数人単位でしか見えなくて、全体の把握には時間がかかりそうだ。
でも・・・斜め45度あたりから射るような視線。
ギクッとなった。
見なくても視線の主はわかる。
やっぱり道明寺だぁぁぁぁぁぁ。
その周りには美男子集団。
あそこだけ輝いている。
変装してても違うわぁ。
感嘆のため息。
ついている場合じゃない!
「5万!」
「10万!」
「20万!」
なんでF4が参加してるのよ!
その前にその値段があり得ないッーの。
だんだんと白い衣装がメラメラと燃え上がりそうに見えるのは気のせいか。
立っているのがしんどくなって箱の中に座り込みたい気分だ。
私を見つめる視線がだんだんと鋭くなって近づいて・・・くる?
キターーーーーーーッ。
気がつけば颯爽と飛び乗るように壇上に天狗が立った。
「てめえらこいつに値段付けようなんていい度胸だな」
雷がドーンと落ちて静まり返る。
生活音がぴたりと止まった。
マイクも使ってないのに響き渡る声。
「本気で俺様を敵に回していいやつだけかかってこい」
誰もいるわけないでしょうがぁぁぁぁぁ。
そんな命知らず。
「で・・・司はいくら払うつもり」
滋が横で仁王立ちしてほほ笑んだ。
「好きな金額書け」
薄っぺらな紙が目の前を通り過ぎる。
小切手?
「自分じゃ金額つけないんだぁ」
受け取った小切手をひらひらさせる滋。
冗談にもならない。
泡を吹いて倒れそうな気分。
これってハロウィンのパーティーの単なる催しの度合いを越してないか?
「こいつは金には変えられないからな」
「遊びは終わりだ」
えっ?
身体を持ち上げられたと思ったら白い肩の上に乗せられて目の前は真っ白。
天狗の背中が目の前でそのままゆっくりと階段を降りるすね毛の見えた高下駄。
ちょっと――――
下ろして!
ばたつく手足は着ぐるみでは短くてバランスはとりづらい。
「こら!暴れるな」
ストンと下ろされた私の周りには皆が揃っていてニンマリとした表情で見下ろされる。
なんだかすごくはずかしい。
着ぐるみで良かったか。
そう思ったら急に視界が広がってかぶってたウサギの顔を道明寺が持っていた。
「何やってんだ」
「ったく」
「お前のおかげでとんでもない目に合ったぞ」
ウサギの顔を持つ天狗。
結構笑えるんだけど。
「やっぱ牧野は司に愛されてるね」
海賊が天狗の肩を抱く。
「値段付けらねないって発言できる司はすごい。俺には出来ねぇ~」
吸血鬼はワインをグッとのどに流し込んだ。
「しょうがないんじゃない、それが司だし」
ゾロはウサギの私の肩の上にぽんと手を置いた。
「類!触るな」
「だってもこもこで気持ちいいよ。このさわり心地好きなんだけど」
無理やりに花沢類を引き離した腕は両脇からぐるっと回されてウサギは天狗に生け捕り状態。
「牧野は今日は司のもんだからな」
二人でニンマリとした視線を交わす西門さんと美作さん。
あの・・・
その前に・・・
これはハロウィンパーティーですよね?
私まだ何も楽しんでないんですけど・・・
「ヤダ――――」
あ~
この調子じゃハロウィンが過ぎてしまう・・・
まずは謝ります
拍手コメント返礼
けいさ☆様
ピンクのウサギと天狗が並んだらどんな感じでしょう?
思わず笑いが~
イラスト書いてください~
kobuta様
司一人で堪能?
いえいえ皆で堪能の意見が多くて(笑)
そのあとゆっくりと堪能するのかな司君