第2話 抱きしめあえる夜だから 31

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-From 1 -

車に乗らずに通りを歩く。

行きかうのは日本人ばっか。

立ち止まって俺に指を指して小声でなにか囁きあっている二人組。

見当つく反応。

道明寺?

きゃー、ウソ!

たぶんこの程度の会話。

「こんなのひきつれたら目立つ」ってSPを遠巻きに護衛させてるのはつくし。

「これでSPが役に立つのか?」

「何はあったら道明寺が守ってくれるんでしょう?」

ぬけぬけと返すつくしの顔には満面の笑み。

SPを遠ざけるしかなくなってた。

「わ~この店に入ろう」

つくしに引っ張られる様に店の中に二人で入る。

山積みに陳列されてる商品。

人込みをかき分けながらうれしそうに商品を手に取るつくし。

横に立つ男を遮断するように俺は身体を入りこませて睨んでやった。

10個で10ドル?

20個買えばチョコレートがおまけで付いてくる。

日本語で書かれた紙がぺたぺたと貼ってある。

いかにも大量生産の土産物って感じ。

こんなものもらって誰が喜ぶんだ?

俺には理解できねェ。

「わ~栓抜き」

パームの木が描かれて裏にはhawaiiのロゴ入りの金メッキ。

「栓抜きで何するんだ?」

「ビール瓶のふたとか開ける時に使うに決まってるでしょう」

呆れた様な顔を向けられた。

使い方くらいは知ってるよ。

実際に使ったことはねぇけどな。

栓抜き使って開ける飲み物なんてそうはないだろう。

ペットボトルにカンカン。

そのうち遺物になると俺は思う。

「これ買ってこう」

「本気か?誰にやるんだ!?」

「こんなのは日本に帰ってお土産が足らなかった時の用心よ」

籠の中に栓抜きの束を放り込む。

その籠を持って付いて歩く俺。

さっきより周りの視線を痛く感じるのは気のせいじゃねぇよな。

「チョコ10個でバックがついてくるんだって」

ビニール生地でできた安物のバック。

チョコが欲しいというより、たんにバックにつられただけのように感じる。

「おまけって弱いのよねぇ」

その感覚がわかんねぇ。

数ドル程度の土産が次々に籠の中を埋めていく。

払ったお金は100ドル札1枚で足りた。

「お前これを本当に土産にするのか?」

「もっとましな物買えよ。俺がけちだと思われるだろうが」

「誰もそう思わないと思うけど?」

簡単に言い切るなッ。

義兄、義息子のメンツってもんがあんだよ。

ブランド店で時計を買っときゃよかった。

A○×のロゴ入りの袋をさげて歩く道筋。

周りにも結構いる。

観光客に溶け込んでしまってる。

袋を振り回す勢いでスキップを踏んで歩くつくし。

一番楽しそうじゃねぇか。

並んだ肩に腕を回して抱き寄せる。

「邪魔なんだけど」

俺を見上げる様に顔を向けてつぶやく口元。

軽くキスを落とす。

「こんなとこで何すんの」

赤くなった顔できょろきょろと視線を泳がせた。

照れくさそうなお前を見るの好きなんだよな。

つくしの持っていた袋をつかむとポンと一番近いSPに投げ渡した。

「邪魔なのは俺じゃねぇだろう?」

「手ぶらになればいいだけだ」

呆れたように膨らんだ頬から「プッー」と声がもれた。

-From 2 -

「きゃー、これ可愛い」

路上でアクセサリーを並べて売ってる前で座り込むつくし。

「おい、何やってんだ」

「見てこれ可愛いよ」

針金を曲げてビーズを通して作った単純なストラップ。

宝石ちりばめたアクセサリーを見るよりもこんな安物に目を輝かせるのはつくしらしい。

「ったく、しょうがねえぇな」

こいつの笑顔が見れるなら全部買っちまおうか?

いや、きっと頬を膨らませるぞつくしの場合。

注文付けてなにやら作らせている。

片言の英語でもずいぶん意思疎通できる様になったじゃないか。

数分後出来上がったストラップを受け取ってお金を払った。

「ねぇ、携帯貸して」

ポケットから取り出した携帯をつくしに渡す。

さっきの作らせたストラップを取り付けて携帯を返された。

携帯にぶら下がった紐の先は金色の針金を器用に曲げて作った文字。

TUKASA・D?

「私のもあるよ」

つくしの携帯にぶら下がる TUKUSI・D。

最後にハートがついている。

「本当はDOUMYOUJって作ってもらいたかったんだけどね」

ばれたら困るからと小さく耳打ちされた。

「イニシャルだけだとどっちがどっちかわかんなくなるよね」

照れくさそうに染まる頬。

「俺、こっちの方がいい」

つくしから携帯を取り上げてストラップを外してTUKASAのストラップと付け替える。

「これで、お前は俺のものって感じだろう?」

「ただのストラップだよ」

うれしそうにほほ笑みが浮かぶ口元。

大事なものって値段じゃ決められねぇな。

手のひらでそっと携帯を握りしめた。

「ほかにいくとこあるか?」

「道明寺と一緒にいられればどこでもいいかな」

つないでた指先から伝わる体温。

上昇気味だ。

行ったこともない様な店に入って、買ったこともない様な安物買って、アイスを歩きながら頬張る。

俺にとっては貴重な体験。

こいつといるとやっぱ飽きねぇ。

「楽しいか?」

「新婚旅行だからねぇ」

すべての感情が喜び意外に見つからなくなる瞬間。

そんな思いに包まれる満面の笑みで見つめ返される。

愛しさがあふれ出て我慢できずにつくしを抱きしめた。

「人に見られるっ」

「見せつけろ」

「恥ずかしい」

「かまわねぇ」

「離してっ」

バタバタ手足を動かすつくしを無視して思い切り腕に力を込める。

「もうしょうがないんだから」

観念したようにつくしの顔が胸元にうずまった。

あくる朝俺たちは過ぎた時間の思い出とともにジェットに乗ってハワイを後にした。

 END                                                   

気がつけばこのお話8月から書いているんですね。

たしか最初の始まりは司の出張からのお話で、進君日記や西田さん日記に横道がそれて、新婚旅行まで行っちゃいました。

こんなまとまりのなさでいいのだろうか・・・。

4か月近くかかったこのお話もこれにて終了です。

予定ではつくしの里帰り程度で終わりの予定だったのですが(^_^;)

長くかかったものだ。

お付き合いありがとうございました。

書き足りなかったものは短編で書くかもしれませんけどね。

拍手コメント返礼

b-moka

無理やり終わらせてしまいましたが・・・

短編でいくつかUPしようと思っています。

新婚旅行のお土産編も♪

F3の反応気になりますよね(笑)