木漏れ日の下で 6
*-From 1 -
「代表、私の方につくし様からメールが送られてきたのですが・・・」
西田は迷惑だとでも言いたげだ。
「なんて言ってきた?」
「私に送られてきたメールの内容はたとえ代表にでも教えられません」
相変わらず頭の硬いやつ。
どうせ仕事が忙しいのか?とか・・・
俺が何してるのかとかそういうたぐいだろうけど。
「聞かねぇよ」
舌打ちして書類に目を走らせる。
ピピとなる携帯音。
つくしからのメールを知らせてる。
少しずつ送られてくる頻度は減ってきた。
そろそろあいつも切れてきたか?
俺もそろそろ返事くらい返してやるか。
なんて考えながら開いたメールに視線を走らせる。
元気!
返事もないのは元気な証拠だね。
仕事頑張って。
もうメールしないから。
なんだこりゃーーーーー。
今朝まで付いていたハートマークもキスマークもなくなった。
味も素っ気もねぇメール。
事務的じゃねーか。
俺が少し無視したからってこんなもんで諦めるのかよッ!
「新婚旅行から帰ってらっしゃった時は無事に2カ月の別居生活も乗り切れると思ったのですが・・・」
つくしのメールに不機嫌になった俺にため息交じりに西田がつぶやく。
そんなもんとっくに切れてるよ。
俺が簡単につくしのそばに行けねぇ様にNYの出張をねじ込んだのはお前じゃねぇか。
それもみっちり週数間。
うまい具合にNY支店がトラぶったもんだよなッ!
皮肉交じりに怒鳴っても顔色変えない有能秘書。
大体こいつの行動にはいつもプラスαが混じってる。
思うようにはさせないと少しの反抗。
思春期のガキみたいな反抗心を西田に向けてどうすんだ俺。
相手にされねぇよな西田には。
出張に立つ前に過ごしたあいつとの時間。
離れられそうもないくらいにつながる思いを確かめ合って別れた朝。
肌のぬくもり・・・
潤んだ瞳・・・
俺の愛撫に答えて漏れる声。
すべての感触を覚えてる。
車に乗り込んだ俺をあっけらかんと手を振って見送ったあいつ。
「もう忍び込まないで」って・・・
しばらく会えない俺に言う言葉じゃないだろう!
また会いに来てとか・・・
うれしかったとか・・・
愛してるとか・・・
一切なしかよ。
このボケ女!
・・・・と拗ねた俺。
『俺のことだけ考えろ』と連絡を絶ったあの日。
あれから10日。
お前の限界はそんくらいか?
メールにムカッと来る感情。
このボケ!
携帯相手に怒鳴っても収まらねぇよ。
ドアのノックに「どうぞ」と西田が返事をした。
今日の仕事のアポが取れたとの連絡を伝えに来た女子社員。
金髪のなかなかな美貌。
「西田」
俺のそばに西田を呼び寄せて耳打ち。
西田にしては珍しくヒクヒクする頬。
「いいんですか?」
「やれ」
何考えてるんですか?みたいな視線を俺に向けてすぐに俺に背を向けた。
女子社員と少しの会話後また念を押す様な表情を俺に向ける。
女子社員の肩を抱いた俺。
俺の隣で金髪美女はほほ笑んでピースサイン。
カッシャっと西田の携帯に収まった。
「それ、添付してつくしに返信しろ」
「あっ!余計な文章はつけるなよ。
写真だけで送れ、命令だからな」
そのまま西田がメールを送ったのを確認してフッと俺の口元から笑いが漏れる。
西田・・・
お前の両肩が落ち込んでるの初めて見た。
西田をやり返した気分・・・。
まんざらでもねぇなッ
-From 2 -
・・・・・・・・なに?
・・・・・・・・これ?
西田さんからの返信メールだ・・よ・・・ね?
自分に思い切り確かめている。
思わず両目を手でゴシゴシと擦ってみた。
浮かび上がる二人の人物。
金髪の女性とクルックル天パ。
道明寺の横でにこやかにほほ笑んでピースサインの女性。
この女性、道明寺になれなれしすぎないか?
道明寺も肩に手をまわして心なしか喜んでないッ!?
るっせ!ブス!と私以外には目もくれない道明寺はどこだ?
いきなり予告もなくこれはなんなのだろう?
何が言いたい西田さん。
う~ん・・・
顔の中心、完全に眉間にしわが寄ってしまった。
・坊ちゃんはよろしくやってます。
・この女性が今日のお相手です。
・結婚したからって坊ちゃんをほっといたら大変ですよ。
どれだ?
追伸 御心配はいりませんって書いてないか?
写真を表示するだけの携帯画面はスクロールも出来やしなかった。
心配いりませんって書いてあっても安心なんかできるかーーーーーッ。
でも・・・。
ホントに何かあったらあの西田さんがこんな写真を送って来るはずないよなと冷静な分析。
・・・となると送らせたのは道明寺?
メールの返信もよこさないと思ったら西田さんまで利用してこんなメールよこしてッ!
憤慨気味だ。
もし・・・
本当に・・・
浮気宣言のつもりだったら・・・。
それはない!
否定しても浮かぶ少しの不安。
道明寺なら何もしなくても女性の方から寄ってくる。
私といるときは集るハエを追い払うように道明寺が冷たくあしらっていたから不安はなかった。
「もう少し優しくしたら」なんて余裕で道明寺に言っちゃってた。
この写真の様子じゃ集られる。
もててるぞ~とか見せつけてるのか?
そんなことは昔から知ってるよ。
ほったらかした罰だとか思っちゃってる?
どう考えてもほったらかされてるの私だよね?
せっせとメール送っても返事もくれないのは道明寺の方だ。
離れ離れなのも最初からわかっていた2ヶ月間。
それまでは周りが呆れるくらいべたべたしていたはずだ。
何を拗ねてるのかわかんないけど責めていいのは私の方じゃない。
ムカムカした想いをぶつける様に写真の中の道明寺を睨みつけていた。
誰がメールなんて送るかッ。
一昼夜過ぎてもウンともスンとも言わない携帯。
完全に切れた。
携帯を持って壊す勢いで道明寺の携帯を鳴らす。
「もしもし、私だけど」
ウニの様に棘を出す声。
「んだよ」
「今何時だと思ってやがる」
不機嫌な声。
寝ぼけてる?寝てた?
「・・・」
すっかり時差のこと忘れてた。
「別に、どうしてるかなって?」
そんなことが言いたかったわけじゃないのに、自分の気持ちをうまく言い表せる言葉が見つからない。
「寝てるに決まってるだろうがぁ」
「用事もないのに夜中にかけてくんなっ、バカ」
最後のバカだけ大文字で聞こえてきた。
・・・・・なんか、また腹が立ってきた。
人のことをここまで放っといて平気な態度。
後悔しても遅いからね!
道明寺ッ!
続きは 7 で
あ~裏目に出たかな道明寺♪
題名の「木漏れ日~ 」のホンワカな感じから遠ざかる(^_^;)
拍手コメント返礼
b-moka様
西田さんまで巻き込んで、うまく行かなかったら「責任は西田だ!」なんてやつあたりされそうな感じが・・・
いい迷惑ですよね。
RICO様
いえいえ、こちらこそリクエストいただくと発想が膨らむので助かるんですよ。
お気軽にお申し付けください。
いまリクエストがたまってきてるのでなかなかなんですが(^_^;)
いつか必ず書きますので気を長くお持ちいたらけたら助かります。
こう様
ですよね♪
逆効果
哀れなのは西田さんだったりしてね。
この裏の話は観察日記で♪