木漏れ日の下で 8

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-From 1 -

私たちは居場所を変えた。

逃げるためでなくこれから先に進むために・・・。

なんてサスペンス調で言葉がよぎる。

大衆のにぎやかな居酒屋から落ち着いた雰囲気のしゃれたお店。

誰にも会わないように通されたVIPルーム。

「すげ~」

と横で公平が声を洩らす。

私もこれまででずいぶんと慣れた。

初めて連れてこられた時は公平みたいにやっぱりキョロキョロしてたっけ。

何も言わずに顔パスで通される様にいつの間にか私もなったんだよな。

「よっ!」

二人の貴公子がソファーに座りにこやかに手を上げる。

どちらもたぐいまれな美貌の持ち主で少し暗めの部屋も明るく見えてしまう。

テーブルにはワインにシャンパン、居酒屋にはない横文字の料理。

食欲ないはずなのにごくりと喉が鳴った。

初めましてと公平が二人の前に手を差し出す。

「やっぱ男か」

この二人・・・

さっきからそれしか言ってない。

「話は聞いているよ。松岡君だよな」と美作さんがソファーから腰を上げて公平と握手を交わした。

「俺、男の手は握りたくないから、まあよろしく」

西門さんらしい対応に公平は気を悪くした様子もなく素直に手のひらを元の位置に戻した。

それよりも話を聞いてるって誰に?

公平のこと知ってるのは道明寺と花沢類くらいだよな?

「どんな風に言われてるのかな俺?」

私の疑問符を受け取った様な公平の声。

「牧野の同期で、信頼してて、心許してる相手」

確かに公平は私のそんな相手だ。

「しょうもねぇ男」

「牧野に気がある」

「腹立つ、むしゃくしゃする、殴りたいだっけ?」

楽しそうに会話する内容か?それ?

道明寺だ・・・。

完全に情報源は間違いない。

「公平・・・ごめん」

思わず両手で顔を覆いたくなる。

「そんなもんでしょう」

殺したいまでいわれてなければましだって公平がククと喉を鳴らした。

「おっ!こいつ司のこと分かってるじゃん」

「そんくらいの気構えなきゃ牧野とは付き合えないだろう」

この二人の余裕にこのタイミングの良さ。

絶対偶然じゃない!

「道明寺に頼まれた?」

「牧野も感が良くなったなったなぁ」

ニンマリと美作さん西門さんが顔を見合わせる。

「今日は家に帰るつもりだったんだろう?」

「なんで二人が知ってんのよ」

「情報源は司に決まってるだろう?」

「でもって、一人でおとなしくしてるかどうかを見張れってさ」

俺達も忙しいんだぞって・・・

暇じゃないかぁぁぁぁぁ。

「あのね。今回は悪いのはあいつだからね」

「NY行ったっきり何も連絡しないで私を無視してるんだからッ」

「あんな写真まで送りつけてきてッ」

「「「あんな写真って?」」」

3人で声をそろえて聞いてきた。

普段の冷静さなら絶対見せるなんて事はないはずの写真。

完全に気が立ってしまってる私は怒りに任せるままに携帯を操作して画面に金髪美女と道明寺のツーショット写真を張り付けて三人の鼻の先にさらしてしまってた。

「これだけ?」

「そうよ!」

つまんねぇって顔をつくる3人。

キスしてるとか・・・

抱き付いてるとか・・・

女侍らせてるとかじゃねえのかって、勝手に自分たちの感覚で持論を展開してる3人。

何そこで仲よくなってるんだっ!

「これ以上のもん牧野も送れば?」

悪戯っぽい顔を西門さんと美作が浮かべて私の顔を覗き込んだ。

 

-From 2 -

「類も呼ぶぞ!」

どちらかともなく漏れるつぶやき。

「えっ?」

これでも十分。

そう思う私を尻目に「司が嫉妬心むき出しになるのは今でも類だからな」と西門さんは悪戯っぽくほほ笑んだ。

1時間もせずに突然の呼び出しに応じてやってくる花沢類。

「久しぶりだね」

ちらっと公平に視線を向けそのあとは全く見ようとしない雰囲気で私に話しかけてきた。

「牧野、携帯貸せ」

促されるままに携帯は私の手元を離れる。

道明寺?西田さんから送られてきた写真を花沢類に見せる美作さん。

「司も暇だね」

「牧野に嫉妬してくれって言ってるみたいだ」

分かりやすい奴なんて花沢類に笑われてしまってる道明寺。

それにのせられてる私もアホってことか?

道明寺で遊ぶ気満々の3人になぜか加わってしまった公平。

さあ~やるぞって瞳を輝かせてしまってる。

公平が私の携帯で写真を撮る。

私を真中に左右に肩を組んだ西門さんと美作さん。

調子に乗って左右のほっぺに近づく唇。

すんでのところで止まった写真の試写体。

思わず目をつぶってた。

類と二人で並んでグラスを傾ける。

グラス越しにキャンドルの炎が揺らめく。

楽しそうに笑えって指示を出す西門さん。

笑えないよ~。

ひくひくする頬。

最後は公平と私が真中で5人並んだ写真をお店の従業員に撮らせて納まった。

やりすぎじゃないかと不安がよぎる。

「それ・・・全部送るの?」

「ああ」

当たり前だと言う様に躊躇することなく携帯のボタンを美作さんが操作する。

「やっぱりやめようよ」

携帯を奪おうと伸ばした腕が届かないように美作さんが背伸びして天井に届きそうな感じに腕を伸ばした。

背伸びしなくても絶対届かないよ!

「送ったぞ」

携帯がようやく私の手の中に戻る。

遅いッ。

ワンクッションおいて西田さんに送るとか・・・

写真1枚で送るとか・・・

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~ いまさら考えてもどうにもならないよ。

「青筋何本立ってるかな?」

「携帯壊してんじゃねぇ?」

「ジェットにのりこんでるかもな?」

「明日には帰ってきてたりして~」

私の頭の上で交わされる会話。

私のことなんて抜きで楽しんじゃってる。

「司が帰ってきたころは俺らはいないもんな」

牧野頑張れって・・・

どうすんだーーーーーー。

さっきまでの私の怒りは完全にしぼんでしまってた。

続きは木漏れ日の下で9