HappyBirthday (司 20years おまけの話 2)

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バカみたいにはしゃいでしまってる。

流れで二人きりで過ごす羽目になったホテルの部屋。

目の前のテーブルには誕生日ケーキに二人で食べきれないほどの料理と飲み物が用意されていた。

「しっかり準備はしてあるから」

小声で囁かれた西門さんの言葉。

いったい何の準備だと緊張が走った。

誕生日・・・

誕生日・・・

誕生日のお祝だけだ。

言い聞かせても部屋の奥に見えるキングサイズのダブルべット。

ここに朝まで二人でいることを強要されてるようにも思える。

気をそらす様に目の前のケーキだけを見つめてた。

ろうそくを20本立てて火をつけてライトのスイッチを消した。

いつ道明寺が私に手を伸ばしてくるかと気が気じゃない心。

道明寺にろうそくを消す様に促す声ははしゃぎすぎるぐらいにはしゃいでる。

ろうそくが吹き消された瞬間に速攻に壁のスイッチまで飛んでライトをつける。

道明寺の身体が私の座ってた方向に延びていた。

気がつかないふりで道明寺の隣の席に戻る。

二人の間の距離は20センチ。

動くたびにわずかに触れ合う身体。

その瞬間に身を道明寺からずらしてる。

これじゃまるで必要以上に気にしてるみたいじゃないか。

その・・・

興味がないと言ったらうそになる。

道明寺となら・・・

道明寺意外には考えられないし、受け入れることなんてできないと思う。

だからっていきなり今日ってのも覚悟がまだできてない。

まさかパーティーのあとでホテルの部屋に連れ込まれるなんて思ってもなかったもの。

「道明寺誕生日のプレセント私がいいんだって」

優紀に言ったら「プッー」と吹き出された。

「よく道明寺さん我慢してるよね」

国宝級よねとにっこりほほ笑む優紀。

「惜しむものでもないと思うけど」

惜しむつもりはないんだけど・・・

やっぱタイミングだよね。

それが今ってことか?

道明寺に抱きしめられたら逃げきれない気はするんだけどね。

このケーキーおいしい。

ケーキを一口パクついて一瞬で食べ物に気をとられる。

「相変わらずうまそうに食べるよな」

「牧野って嫌いなものあるのか?」

私が渡したケーキには口も付けずじっと私を道明寺が見つめてた。

「好き嫌いなんて言ってたら貧乏人は生きられません」

「あっ、嫌いなものあるかも」

「へぇ~、なんだ?」

「傲慢!

わがまま!

横暴!

自分勝手!

俺様!

ついでにスケベも足した方がいい?」

少し本来の自分を取り戻した様。

この調子なら乗り切れないかな?

それでも完全に100%否定している自分がいるわけじゃない。

「よくもそこまで並べるよなッ」

え?

ワーッ

ククと口元をほころばした道明寺が自分の身体を私にもたれかかる様に押し付けてきた。

「ち・ちよっと!まだ食べてるんだからね」

ここでいきなり!?

焦りながらこれ以上の体重の移動を制限するように胸元に手のひらを押さえつける。

私の身体の動きを止める様に背中から回ってきた道明寺の腕が私の片方の上腕を捉えた。

これでは力を入れようがない。

「ねッ、冷静になろう!」

潤んで折れそうになる心。

「至って俺は冷静だけど」

「プレゼントもらいたいんだけどな」

「プレゼン・・ト?」

「プレゼント考えつかなくて・・・なに・・・も・・・」

目元が優しく笑って私を見つめてる。

少しずつ近づく唇を避けようがなくって受け入れてしまった。

優しくついばむ様な唇が徐々に熱さを増して差し込まれてくる舌先。

それは愛していると告白されてるような甘いキス。

耐えられなくなる。

唇が離れた瞬間に思わず逃げるように顔をそむけてしまってた。

「顔をそむけるな。俺を見ろ」

道明寺の指先が私の顎をとらてわずかに動く。

熱く熱をもった黒色の瞳。

「甘い味がする」

捉えられて離れられなくなる。

「ケーキ・・・だよ」

「いや、違う・・・」

耳元で囁く声も熱を持ってるように身体に染みいる。

そしてまた唇を塞がれた。

息もできないほどに高鳴る鼓動。

このままどうなってもいいと身体の細胞が道明寺を欲してる。

道明寺の指先が胸元をゆっくりと彷徨い胸のふくらみを刺激する。

それだけで今まで感じたこともない刺激に体が震えた。

「・・・ゃッ」

自分の声じゃないみたいな甘い声。

「・・・ン・・ッ」

身体の力がすべて抜けた様に抵抗のすべをなくしてしまってる。

気がつけばべットに運ばれて心地よい重さに道明寺が私を抱きしめた。

「いいよな」

心なしか道明寺の声も震えてるように感じる。

小さくうなずいたその先で道明寺の手のひらが私の頬にそっと触れる。

「優しいのか、乱暴なのか分からない」

道明寺に見つめられてるのが耐えられそうもなくって両腕をしっかりと道明寺の背中に回した。

・・・・

・・・・・・

・・・・・・・?

道明寺の動きがとまってないか?

少し締めすぎた?

ズンと重くなる身体。

全体重を私に乗せている。

今度は私が押しつぶされそうだ。

「ねむっ・・・」

ねむ?

眠るの!?

やっとの思いで道明寺の身体を反転させる。

クー

ごろっと上向いた口元から洩れるのはさっきの甘い言葉じゃなくて寝息。

「どう・・・?」

「どうみょうじ?」

「道明寺!」

ここで寝られるって・・・

いったいなに?

道明寺ーーーーーーッ。

揺り動かしても全く反応せずに眠りこけてしまってる。

無人島に置き去りにされた様な孤独感。

この状態でなにをどうとらえればいいのか分かるわけがない。

その横にのんきに寝息を立ててる寝顔。

相変わらず顔だけはいいんだから!

それも今は憎らしい。

布団を思い切り引っ張った拍子にドンとベットから道明寺が転げ落ちた。

それでも目覚めない。

この状態で爆睡って失礼じゃないのか?

私の決心はどうなる?

もう知らないからッ!

布団を頭からかぶったまんまで朝を迎えてた。

気まずい感じの朝食。

「私・・・何かした?」

何かしなきゃいけなかったとか?

そんなの私に分かるわけがんない。

私だって初めての経験なんだぞ。

それでも原因は私かも知れないと気弱になる。

「何もしないのがいけなかったとか・・・」

聞きながら身体が熱くてしょうがない。

「・・・じゃねーよ」

「えっ?」

「お前のせいじゃねぇから」

目覚めてから一向に私と視線を合わせないままの道明寺。

気を使ってる自分がばかばかしくなってきた。

あの不機嫌丸出しの道明寺の態度。

寝てしまったのはあいつだ

つまんなそうに吐いた溜息にピキッと1本、線が切れてきた。

「嫌なの?」

「さっきから私の顔を見ないし、呆れた様に溜息までつかれて・・」

「私がどれだけ考えて、悩んだかなんて分かってないよね」

「道明寺だったら・・・

道明寺だから・・・

二十歳の誕生日だし・・・

って・・・死ぬ思いで覚悟決めたのに」

怒っているはずなのに悲しくて泣きそうになる。

自分の所為じゃないかと悩んだのが無性に悲しくなった。

「しばらく会わないからね」

涙を流さないように目に力を入れてドアに向かう。

「バカ野郎」

振り向いて思いっきり道明寺を睨みつける。

ドアを開けた先に、にこやかにほほ笑むF3。

「やぁ、おはよう」

「楽しかったか?」

「あの馬鹿に聞けば」

この人達を相手する余裕なんて完全に残っていなかった。

今回のおまけはつくしちゃんサイドで書かせてもらいました。

どっちがかわいそう?的なコメントを頂きましてそれなら平等につくしチャン目線のお話も書く必要ありかなと

思った次第であります。

F3とのやりとりは次回に持ち越させていただきました。

私の妄想をこれでもかと広げてくれる温かいコメントを楽しみにしています。

って!これだから横道のおまけの話が増える(^_^;)