ついでの様に抱きしめた

ふと思いついた一編の文章。

いつもこのフレーズ使えないか?

そんな思いつきから話を組み立てて行きます。

どんな話が出来上がるかは書いている私にもUPするまで分かりません。

こんな行き当たりばったりの話でいいのかと思いつつ今日も書いてしまいました。

この短編のどこがその一編のお思い付きからお話が広がったのか?

推理しても面白いかもなんて悪戯的なこと考えています。

正解者には!

すいません何も考えておりません。

正解は後日この場所でお知らせということにでもしておこうかな。

こんな司クンの感情も面白い。

ちと類に近い様な感覚。

たまにはどう?的な感じ。

暇つぶしにコーヒーを片手にお楽しみいただけたらうれしいです。

 

*

「道明寺」

遠くから大きく手を振って俺を呼ぶ声。

お前以外なら誰かもわかんねぇ距離。

不思議とお前だけは輝いてすぐに見つけることができる。

屈託なくあどけなく俺を呼ぶ声。

ガキみたいにはしゃいでるお前に向ける表情は限りなく優しくなる。

人目を引き過ぎてるぞ。

叫んだらあいつはどうするのだろう?

めーいっぱいに背伸びして伸ばて振ってる腕を引っ込めて小さく背中でもまるめっかな。

そしてプーッと膨らむ頬。

「バカ」でも・・・

「アホ」でも・・・

なに言われても怒る気にもなれねぇよな。

「何してるの?」

息を切らせて走ってきた牧野の肩は上下に揺れている。

「そんなに慌てなくても逃げはしねぇよ」

「早く会いたかったから」

珍しく照れもしないで素直な唇。

ドキッと高鳴る鼓動。

牧野に聞こえてるんじゃないかとまた高鳴る。

俺・・・

お前に出会えたこと感謝する。

鬱々としていた心。

そこに突然に沁み込んで固めていた孤独の扉を少しずつとかしてくれた。

初めて会ったときから目が離せなくなっていた。

内からも外からも漏れだす闇にもがいてた昔の自分。

怒り、傲慢、怒涛、恫喝、それはすべて俺を孤独の中に押し込めた。

どれだけ闇の中でもがいていたんだろう。

今は微塵も感じねぇ。

開け放たれた扉から解放された魔物が飛び出して行く感覚って本当にあるんだな。

今・・・

俺は、お前を抱きしめるだけでいい。

最高に簡単だ。

それはお前が嫌がらなければの話。

条件付きって言うのが情けねぇ。

「俺も早く会いたいかった」

「えッ・・・もう・・・」

小さくつぶやく口元。

真っ赤に頬を染めてきょろきょろと周りに視線を走らせる。

「道明寺は目立つんだから」

俺だけ非難するような口ぶり。

お前も結構目立ってんだよ。

俺の彼女だってばれてんだし。

隠してもねぇからな。

大学では一番有名な女子じゃねえのか?

気づいてないのが無性におかしくてこみ上げる笑い。

「これなら恥ずかしくねぇだろう?」

顔を隠してやると伸ばした腕で頭を丸ごと胸の中に閉じ込める。

「め・・・だつ」

胸元で愚図る声が漏れないように・・・

ついでの様に抱きしめた。