下弦の月が浮かぶ夜 2

 *

ひと際は目立つ存在感。

格別なオ-ラが立ち込めてる空間。

その中で見え隠れする淡い色のパウダーアクアのドレスをまとった華奢な身体。

あいつらが大きすぎるせいで顔は見えない。

誰にも取られないように守られてる雰囲気に心なしか安心している。

一通りの挨拶を終えてそこから逃れる様に人をかき分けながらあいつらの場所へと急ぐ。

近づくたびに光が差し込む様な温かい風に包まれる様。

自然と道が広がり誰も俺に声をかけなくなった。

「子守り、悪かったな」

「子供みたいに言わないでよね」

俺のすぐ横でわずかに膨らんだ頬がすぐに割れて笑顔になった。

「ようやく主役の登場か」

あきらから思い切り肩をたたかれる乱暴気味の祝福。

俺・・・こいつの気に障ることなにかしたか?

「痛テーッ」

「そんなやわなキャラじゃねえだろう」

舌打ちした顔で眺めた顔はにっこりとほほ笑んだ。

「成功おめでとう」

にこやかに手を差し出す総二郎と握手を交わす。

「俺様が失敗するわけねぇだろう」

「相変わらず強気だね」

類は同意を求める様に牧野の顔を覗き込んだ。

「おい!それ以上近づくな」

「これも相変わらずかぁ」

3人が顔を見合わせてニンマリとなる。

うるせ―よ。

「しかしよくこんな大きなパーティーで牧野を一人にできたよな」

「今までは牧野が嫌がっても絶対そばから離さなかったのになッ」

「牧野は俺ンだ~みたいに婚約者だと強調してたもんな」

「司も少しは大人になったかぁ~」

三人三様勝手に俺抜きで話を進める。

今回だけは俺の側にいるのを牧野に拒否された。

カメラと記者の数に「すごッ!」一言声を発して固まった牧野。

すぐに俺から離れたがった。

控室では騒がれるのヤダ!

目立ちたくない!

まだ正式に婚約したわけじゃない!

最後は道明寺の立派なところ客観的に見たいだったか?

グダグダ呆れるぐらいの理屈を並べられた。

「一人でも変な男が寄ってきたら速攻で俺のそばに連れてくるからな」

「壁の色と同化するように息をひそめとく」

閉じた唇にそっとキスを落として牧野が部屋を出ていくのを見送った。

式典中も視線は牧野を追っていた。

宣言したとおり会場の隅っこで俺を見つめる熱いまなざし。

俺が動くたびにあいつの視線も俺を追う。

じっと見つめられるのも悪くない。

舞台の上から一人の男が牧野の近づくのが見えた。

迷いもない足の運び。

あきらだと気がつくのに時間はかからなかった。

あいつも牧野ならすぐに見つけることが出来るらしい。

そのうち目立つ華麗な容姿3人組に囲まれる牧野。

今が一番目立ってる。

今まで見せたことのない様な優しい頬笑みを3人に向けられる若い女性。

誰?と当たり前の疑問が周りから向けられてるのはありありだ。

一番の当事者の俺が牧野の側にいないのはむかつく。

あいつらじゃなければ速攻牧野を連れ戻すところだ。

思いながら、やっぱ落ち着かねぇ~。

うまく挨拶が切れたところで牧野のもとに向かう。

みんな揃ったところで「司も少しは大人になったかぁ~」って・・・

言い過ぎだろう。

「もうお前ら牧野のそばに寄るな」

「もう!何言ってるの」

少し膨れ気味の牧野が俺のスーツの裾をギュッとつかんだ。

「ほら、皆が集まったの久しぶりだから私はうれしいんだけど」

久しぶりって・・・

俺も久しぶりにお前と会ったばかりだ。

こいつら・・・いるか?

不満の色をにじませてじっと牧野を見つめる。

サッと視線を外された。

「せっかく祝いに来てくれたんでしょう」

「そうそう」

「もっと丁寧な挨拶をしてもらいたいもんだ」

「俺とお前らの間でそんな他人行儀なもんいらねぇだろうがッ!」

「だから牧野も四人で共有なッ!」

「させるか!」

あきらの言葉から牧野を守る様に抱きしめた。

続きは下弦の月が浮かぶ夜3

もう少ししたらお話が展開します。

しばしお待ちを~

拍手コメント返礼

けい様

一番乗り拍手ありがとうござます♪