LOVE AND PEACE 21
着ぐるみは司から西田さん移って無事にパートナーも交代したところでそろそろこの物語も終わりが見えてきました。
夏休みが終わるまでには終わりそうだ~。
*あいつはなにをやらしてもそつがない。
着ぐるみの中で澄ました顔の西田を想像して仕返しを考える。
やられたらやり返す。
最近すっかり忘れてた気がした。
「まだ、怒ってるんだからね」
俺と腕を組みながらも相変わらずふくれっ面を見せる牧野。
「今回の黒幕は西田だぞ」
「それに類にエスコートされて楽しそうじゃなかったか?」
「そうなったのは誰のせいよ」
牧野の不機嫌な声も余裕で受け止めてる俺は西田のおかげで冷静さを取り戻している。
「ほかの男が贈ったドレスで着飾ってるお前を見るだけでもこっちは相当我慢してるんだ」
「あとでしっかり脱がせるから覚悟しとけよ」
牧野の耳元に寄せる唇。
そのそばから色づき始めて牧野は声が出ないまま口をパクパクさせる。
そんな反応見せるからいじめたくなる。
横から俺たちに近づいてきたのはこのパーティーの主催者の大使。
求められるままに握手を交わした大使の右手は俺に寄り添う牧野にそのまま移動する。
婚約者と紹介して西田に見せるようにわざと不機嫌そうに顔をしかめた。
さっき西田にくぎを刺されてことを忘れるほど俺も馬鹿じゃない。
俺の婚約者としての役目を邪魔しないくらいの配慮は動く。
西田を引き付けるための演技。
「ぼっちゃん」
すぐに飛んできた着ぐるみの西田。
ククッと笑いたくなるのを我慢する。
「おーッ、ビックリした」
わざとらしく振り返って驚くふり。
「心配するな。しっかりこいつの役目はわかってるから」
「しかし、西田は何でも出来るんだな」
感心する表情を作って西田のとこだけ強調して周りをぐるっと見渡す俺。
牧野までぎょっした表情になった。
一斉に着ぐるみに注がれる視線。
的中過ぎる俺の仕返し。
笑いをこらえるために必死で頬に力を入れる。
俺の考えに気が付いたように牧野はギュッと上着の裾を握った。
「ばらしたら、かわいそうでしょう」
「西田なら何とでもするだろう」
西田の味方をすんじゃねーよ。
少しの嫉妬も今の俺には着火の炎を強くするってわかんねぇやつ。
「仕返しですか?」
着ぐるみの中から聞こえるのは相変わらず高揚のない声。
着ぐるみが声を出すのは禁句だぞ。
「やられっぱなしじゃ面白くねぇだろう」
言いながら着ぐるみの顔を両手で抱えて西田の頭から離した。
ミ●ィーの顔を両手で持つ俺も結構な違和感。
浮いている。
「西田さん?」
「道明寺さんの秘書?」
「お~っ」
ざわつく会場。
驚きの声は波紋のように広がりを見せる。
西田も有名じゃないか。
「失礼しました」
何事もないように30度に頭を下げて俺から 着ぐるみの顔を取るとすっぽりと西田は自分の首の上に乗せた。
そして俺たちから離れるように会場の隅へと着ぐるみは歩いて姿を隠す。
それを見送りながら我慢できずに俺は笑い声をあげていた。