FIGHT!! 6

F4総出席の入園式まであと1日。

もうしばらくお待ちください。

*

「ふ~う」

さっきからため息が本人が気が付かないままに増えている。

「元気ねえぇな」

駿の真新しい制服を眺めながら数度目のため息がつくしの口元から漏れる。

「保護者席に私と司と花沢類でしょ」

「まあ、西門さんと美作さんがいないだけでもましかなって思ってるんだけどね」

あんまり目立たないでねとはムリな注文だ。

俺が自分から目立とうとしてるわけじゃない。

ただでさえ派手な顔立ちなんだからって膨れた顔で言われるとは思ってなかった。

人目を引くのは俺たちだけじゃなく、俺のそばにいるお前も一緒ってことをすっかり忘れてる。

英徳じゃ牧野つくしはかなりの知名度だって忘れてるんじゃねぇか?

F4に楯突いた初めての人物。

それも女子。

高校の時のこいつの武勇伝。

俺を殴ったつーだけだけど。

今でも受け継がれる英徳の星!!

英徳のジャンヌダルク

今では道明寺総帥の妻。

あんたを叩き直してやるとか言ったとかのセリフ。

「自分で稼いだこともないガキが」って言われたのは強烈に覚えてるんだけど。

そのまま女子から男子への告白に使われてるらしい。

英徳の品位も落ちてねぇか?

こんなの駿には聞かせられない。

小学校に上がるまでには何とか封印したい伝説だ。

「いつまでも駿の制服を眺めてて大丈夫なのか?」

「えっ?」

「自分の準備はできてるのかよ」

「あぁ、別にあるものでいいでしょう」

「クローゼットにはいっぱい贅沢な服が入ってるし」

たっく。

英徳だぞ。

自分の着飾ることに執着する連中がほとんど。

入園式ともなればブランドの品評会。

つくしは目立たない服とか選んでそうな調子だ。

こいつのクローゼットにはいまだに2点で3万円とかの大量生産の既成のスーツがぶら下がってるのを知っている。

会社では時々着てることに気が付いてもつくしらしいと黙認してる。

安い服の方が肩がこらなくていいとか、汚しても心配ないしって理屈にも慣れた。

特に子供たちといるときは楽な服って考え。

もしかして!

入園式も汚れてもいいやつなんて思ってねぇだろうな!

深読みした1週間前。

「自分じゃ準備してないよな」

つくしの前に4つ切りサイズより少し大きめの白い箱を差し出す。

「・・・これって服?」

少し驚いた顔がわずかに笑みを浮かべる。

「一度着たことのある服なんて着るなよな」

いらないのにとか、無駄使いと責められなかったことに俺の心境は優位になる。

淡いピンクのジャケットの下にはそれより濃い色のワンピース。

急いで作らせたブランドの一点物。

「かわいい」

箱を開けて中身を取り出しながら喜ぶ反応。

最近は素直に俺のからのプレゼントを受けとるようになった。

「似合う?」

身体にワンピースを当てながらつくしがクルッと体を回す。

どう見ても3人の子持ちとは思えない無邪気さ。

「俺が選んだんだから当たり前だろう」

少し俺の頬も緩む。

「忘れるな、お前は駿お母親の前に俺の妻だからな」

「俺より目立て」

「無理言わないでよね」

つくしが「プ-」と吹き出して笑った。

駿の入園式まであと1日。